企業が成長し、組織に変化が生じる中で、しばしば「座席が足りなくなった」「作業効率が以前に比べて落ちてしまった」といったオフィス環境の問題が発生します。
オフィス移転は課題を解決する一つの手段ですが、費用と労力が必要になります。もし、コストを抑えて環境を改善したいと考えているなら、既存オフィスのレイアウト見直しをおすすめします。
本記事では、オフィスレイアウトを変更する際の流れ、定番のレイアウトパターン、費用相場、そして注意点をご紹介します。オフィスレイアウト見直しの全体像を把握することが出来ますので、ぜひ最後までお読みください。
オフィスレイアウトの変更がもたらす3つのビジネス効果
オフィスレイアウトの見直しは、単なる空間の再配置にとどまらず、働き方や組織の在り方に大きな影響を与えます。ここでは、レイアウト変更によって得られる3つのビジネス効果を紹介します。
1.ストレス軽減と集中力アップによる生産性向上
ストレスの少ない職場環境は、従業員のモチベーションを維持しやすく、離職リスクの抑制にもつながります。また、集中しやすい空間が整えば、作業スピードと正確性が向上し、結果として生産性の向上やミスの削減が期待できるでしょう。
快適なオフィスがあると「出社したい」と感じる従業員が増え、リモートワークとのバランスも取れるようになります。
以下の記事では、出社したくなるオフィスのアイデアをまとめています。
出社したくなるオフィスとは?最新トレンドから読み解くアイデア4選
2.コミュニケーションの活性化によるチーム力向上
オフィスレイアウトを工夫すると、会話が自然に生まれ、業務の進捗や課題の共有がスムーズになります。トラブルの早期発見や迅速な対応にも寄与するでしょう。
また、周囲との接点を持ちやすい設計にすることで、OJTやちょっとした相談がしやすくなり、個人の成長スピードにも良い影響を与えます。
以下の記事では、オフィスでコミュニケーションを活性させるアイデアを解説しています。
ストーリーの力で共感を。 インナーブランディングで叶えるエンゲージメントアップとは?
3.訪問者・顧客への印象向上によるブランド強化
洗練されたレイアウトや清潔感のあるオフィス空間は、来社した顧客や取引先に「信頼できる企業」という好印象を与えます。快適な環境は、打ち合わせ時の安心感や好感度も高めるでしょう。
また、求職者にとっても魅力的な職場に映るため、「ここで働きたい」と感じさせる採用力の強化にもつながります。
優秀な人材を獲得するためにもオフィスデザインは重要なポイントです。以下の記事では、従業員のエンゲージメントを向上させる海外発のオフィスデザインの事例をまとめています。
オフィスレイアウト変更の流れ
オフィスレイアウトは、単なる「配置換え」ではありません。従業員の動線や視点を意識したレイアウトは、生産性の向上やチーム間のスムーズなコミュニケーションにつながります。
また、働きやすい空間づくりは従業員のモチベーションや働きがいにも直結する重要な要素です。ここでは、オフィスレイアウトを見直す際に押さえておきたい基本的な流れを解説します。
目的を決める
最初にオフィスレイアウトを見直す目的を明確にします。例えば「増員したため、座席の配置を考え直したい」「会社のコンセプトを来訪者にアピールしたい」などが挙げられます。
従業員からの意見を集め、どのような環境であれば達成できるのかを検討しましょう。
以下の記事では、オフィスに「コンセプト」を設定することの重要性を解説しています。コンセプトをデザインに落とし込むまでの手順も分かりやすく説明していますので、ぜひ参考にしてください。
業者を選ぶ
デスクや棚などを移動するだけなら従業員でも対応可能ですが、大規模な変更には場合は専門業者の力を借りましょう。
業者を選定するおすすめの方法は「内装デザインコンペ」です。内装デザインコンペでは、さまざまな内装設計業者・デザイン会社からデザイン案を提示してもらい、その中から最も優れた案を選びます。
業者側も比較検討されることを前提にしているため、その分、質の高いデザイン提案が期待できるでしょう。複数のプランをじっくり検討でき、目的に合ったデザインの実現が可能になります。
内装デザインコンペをより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
レイアウト案を作成する
業者と協力して、デスクレイアウトや休憩エリアなど図面(平面図)を作成します。
デスクレイアウトにはさまざまなパターンがあるため、業務内容や職種などに合わせて決めましょう。詳しくは後述しますが、代表的なレイアウトは「対向型」「同行式」「背面型」です。
詳細な図面は業者側で作成します。しかし、まず自社で簡易的なレイアウトを作成するとイメージを伝えやすく、オフィスづくりがスムーズに進みます。
以下の記事では専門知識がない方でも使いやすいフリーソフトを紹介していますので、ご参考ください。
スケジュールを調整する
オフィスレイアウトの変更には、スケジュール管理が欠かせません。予期せぬ遅延が発生すると、業務の中断を余儀なくされる可能性が高まります。
そのため、以下の作業項目を事前に計画し、入念にスケジュールを調整しましょう。
電気工事、LAN通信工事、内装工事などのインフラ整備
什器の新規購入、不要品の廃棄、リース契約の更新や新規契約
レイアウト変更作業の具体的な実施
スケジュールが決まったら関係者全員に共有し、それぞれが「何をいつまでに行う必要があるのか」を確認できるようにします。
レイアウト変更後のオフィスを評価する
レイアウト変更作業が完了しても、まだ終わりではありません。
新しいレイアウトでの働きやすさをチェックしましょう。例えば、デスク間の距離が狭すぎて通路が確保できていないことや、デスクからコピー機までの動線が悪いことがしばしばあります。これらは仕事の効率にも関わるため、このような問題点があれば、早めに修正することが大切です。
オフィスの通路については、以下の記事でも解説しています。
オフィスの通路幅はどのくらい?スペース確保で快適な空間を目指そう
オフィスレイアウトの定番パターン
オフィスレイアウトには、業種や働き方に応じた定番のパターンがあります。それぞれに特徴やメリットがあるため、自社に合ったスタイルを選ぶことが、快適で効率的な職場づくりの第一歩です。
以下の記事では、今回取り上げていないレイアウトも紹介していますので、あわせてご覧ください。
オフィスレイアウト【代表例8パターン】オフィスの運用方法も解説 | はたらくひとにとってのIBASHO
対向型レイアウト
対向型レイアウトでは、デスクを向かい合わせに配置します。部署ごとに「島」を作るため「島型」とも呼ばれます。 事務室や職員室をイメージするとわかりやすいでしょう。
向かい合って座るため、部署やチームでのコミュニケーションが円滑になります。一方で、前に座っている人の視線を感じやすく、集中しにくいことがデメリットです。
同行式レイアウト
同行式(同向型)レイアウトは、学校の教室のようにデスクを同じ方向に並べ、前方に上司やリーダーが位置するレイアウトです。「スクール式」「並列式」とも呼ばれます。
部下への指示や管理が容易になるため、業務全体の動きを把握する必要があるコールセンターや金融機関などに向いています。
しかし、このレイアウトでは従業員間のコミュニケーションが取りにくいため、情報交換や協力が頻繁に必要な業務には適していません。
背面型レイアウト
背面型レイアウトは、同じ部署・チームが背中合わせで座ります。椅子を回転させればコミュニケーションが取りやすいので、伝達事項の多いチームや連携が必要な場面では有効なレイアウトです。
ただし、他の部署とは隔たりができてしまうため、チームメンバー以外とコミュニケーションが希薄になってしまうのが難点といえます。
ブース型レイアウト
ブース型レイアウトは、個々のデスクをパーティションやパネルで囲んだレイアウトです。視線や雑音を遮断するため業務に集中しやすく、プログラマーやデザイナーなど個人業務に適しています。
独立性が高い分、連携が取りにくいことがデメリットです。そのため、コミュニケーションが重要な部署にはあまり適していません。
フリーアドレス式レイアウト
フリーアドレス式レイアウトでは、固定の席を持たずに好きな場所に座るスタイルです。特に外資系やベンチャー系企業に多く見られます。
席が決まっていないため、営業等で外出する従業員が多い企業でも座席スペースを有効活用できるでしょう。
一方で、誰がどの席にいるか分かりにくいため、円滑なコミュニケーションが損なわれる恐れがあります。
フリーアドレスを検討する場合は、あらかじめ運用方法を決めておいた方が良いでしょう。以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
オフィスレイアウトのトレンドと成功事例
リモートワークの普及やワークライフバランスの重視など、働き方の多様化が急速に進むなかで、オフィスの在り方も大きく変化しています。ここでは、実際にレイアウトの見直しによって良い効果のあった企業の事例をご紹介します。
ハイブリッドワークに対応したレイアウト
近年は、リモートワークとオフィスワークを併用するハイブリッドワークが広がりを見せています。その際、オフィスワークで大切なことは「自宅よりも働きやすい」と従業員が感じられる環境です。
株式会社Grand Centralでは、ワーキングスペースに簡単なミーティングができるソファ席やスタンディングデスクスペース、リラックススペースを設け、従業員の効率が上がる環境を整えています。デスクやチェアにもこだわり、リクライニング機能付きの高性能チェアを導入したことで、自席での仮眠も可能となりました。
オフィスレイアウトの工夫は、出社の意義を高め、チームの生産性向上にも寄与します。働き方の最適化を目指す重要な戦略といえるでしょう。
株式会社Grand Central|黒を基調としたシックな空間に、働きやすい環境整備
席数不足を解消するレイアウトの工夫
オフィスでは、限られたスペースを柔軟かつ効率的に活用するレイアウト設計が重要です。BASE株式会社では、席数をあえて従業員数の3分の2程度に削減し、余ったスペースはコミュニケーションスペースとして活用しています。
固定席にこだわらず、チームの学び合いやランチ会に使えるコミュニケーションスペースを設けたことで、チームのつながりが強まったという好例になりました。
レイアウト変更に際しては、社員の意見を取り入れ、対話を重ねながら調整していくことが成功の鍵といえるでしょう。
BASE株式会社|固定席を減らし、フレキシブルに使えるフリースペースを整備
アイデアが生まれやすいスペースづくり
アイデアを生み出すには、心身ともにリラックスできるオフィス環境が不可欠です。
オフィスを「従業員の成長の場」と捉える株式会社ナハトでは、8部屋ある会議室の照明をすべてデザインが異なる個性的なものにしました。オフィスのデザインで気分にメリハリをつけ、クリエイティブな発想を促すことを目的としています。
こうした設備投資は、成果を数値化しづらいものの、従業員のモチベーションに与える影響は大きいでしょう。オフィスそのものが思考を後押しし、イノベーションの土壌を育てるともいえます。
株式会社ナハト|「こんな元気な会社もありなんだ」と知ってほしい。メンバーが誇りを持って働けるオフィス
オフィスレイアウト変更の費用相場
オフィスレイアウト変更にあたりさまざまな費用が発生しますが、相場は坪あたり10万から30万円です(ただし、原材料費の高騰に伴い、費用も増加傾向にあります)。ここからは、オフィスレイアウト変更の費用目安について内訳をご説明します。
レイアウト設計費
レイアウト設計費用はオフィスの広さや内容によって変わりますが、20万円から50万円が相場です。
大規模なオフィスでは、会議室やパーテーション・デスクレイアウトの全体的な見直しが必要になり、設計費用も高額になります。
内装・設備工事費用
工事費用は規模や種類によって大きく変わるため、事前に見積もりを取って比較検討することが重要です。壁紙・床の張替えであれば10万円前後で済みますが、大規模な内装工事には100万円単位の費用がかかります。
什器購入費用
デスクや椅子、収納棚・ロッカーなどの什器を新調する場合、1人あたり5万円から20万円が目安です。コストを削減したい場合は中古品を購入するほか、レンタルやリース、サブスクリプションサービスを利用するという選択肢もあります。
クリーニング費用
レイアウト変更のタイミングで空調・カーペット・床などのクリーニングをすると、気持ちのいいスタートが切れます。クリーニング費用は場所や広さにより変わりますが、一般的なフロアクリーニングの場合、10帖で約2万円を目安に考えると良いでしょう。
オフィスレイアウト変更の注意点
変更後に「以前の方が働きやすかった」と感じることのないよう、レイアウトは慎重に検討する必要があります。ここからは、オフィスレイアウト変更の注意点・対策についてご説明します。
コンセントの位置を考慮する
デスクワークを中心とするオフィスでは、コンセント(電源)の位置が非常に重要です。従業員それぞれがPC・モニター・携帯電話の充電器を使用すると、一人あたり3〜4口が必要になります。
コンセントは、使用機器までの動線を考慮しながら位置や数を決めましょう。
また、ケーブルの配線にも注意が必要です。ケーブルが通路に露出している場合、足をひっかけて転倒してしまうだけでなく、断線や機器の故障につながります。ケーブルは、床下に配線すると見た目がすっきりするためおすすめです。事前に内装業者やデザイン会社に相談しておきましょう。
オフィスの配線については、以下の記事でも解説しています。
オフィスの配線をすっきり整理しよう!今からできる方法をご紹介!
セキュリティ対策を行う(ゾーニング)
オフィス内でのセキュリティ強化には「ゾーニング」が重要です。ゾーニングとは、オフィス空間を使用目的に合わせて区分けし、関係者以外が機密情報の保管場所へアクセスすることを制限する仕組みです。情報の流出リスクを減らす手法として有効といえるでしょう。
例えば、エントランス付近に待合スペースを設け、オフィスの奥や別フロアに重要書類を保管するキャビネットを配置します。来訪者のスペースと機密情報の保管場所を空間を分けることで、情報漏えいのリスクを最小限に抑えることが出来ます。
ゾーニングに関しては以下の記事でも解説していますので、あわせてお読みください。
働きやすいオフィスに不可欠!ゾーニングの基本を徹底解説 | IBASHO. オフィスに込められた想いを載せる情報メディア
まとめ
本記事ではオフィスレイアウト変更の流れ、定番のレイアウトパターン、費用相場、注意点を解説しました。レイアウトの見直しは、大きなコストをかけずに職場環境を改善し、従業員の満足度と生産性を向上させる効果的な方法です。
HATARABAではオフィスレイアウトに関するご相談やお問い合わせを無料で実施しています。「レイアウト変更をどのように進めればよいか迷っている」「レイアウト変更にかかるコストを少しでも抑えたい」という方は、まずは、お気軽にご連絡ください。