企業が抱える課題と従業員の課題認識は違う? 働き方とオフィスの最適化を探る。

「優秀な人材が確保できない」「教育しても定着しない」「働き方の多様化についていけない」「生産性や従業員の満足度が向上しない」など、企業の経営者やオフィス構築担当者は従業員に対してさまざまな課題を抱えています。

一方、従業員側は異なる課題認識を持っている場合があり、両者の認識のズレから、一向に解決に向かわないというケースも少なくありません。

この記事では、オフィス環境の最適化という観点と、実際に行われたアンケート調査の結果をもとに、両者の認識のズレを把握し、企業が改善できるオフィス環境の課題を明らかにします。その上で、課題解決のための具体的な方法や、課題解決をした事例について解説します。

オフィス環境の課題は経営層と従業員間で異なる?

まずは、企業の課題をなるべく正確に把握するために、企業の経営者や従業員がオフィス環境をどのように捉えているのかを調べた調査結果をご紹介します。

経営層と従業員のオフィス勤務に関する調査結果

Slackが2021年10月5日に行った、世界各地の10,000人以上のナレッジワーカーを対象にした Future Forum Pulse 調査でオフィス勤務に対する経営層と従業員の間で大きなズレがあることが判明しました。

出典 : 2021 年 7 月 28 日~8 月 10 日に実施した Future Forum Pulse。回答者数 10,569 人。国別サンプル規模 : アメリカ(5,339)、オーストラリア(1,060)、フランス(1,049)、ドイツ(1,050)、日本(1,047)、イギリス(1,024)。

参考:経営層と従業員の間でオフィス回帰について大きなズレがあることが判明|Slack

調査によると経営層の3分の2以上(68%)は、オフィス中心または完全なオフィス勤務に戻したいと考えていることがわかり、そのうちの59%は、勤務日のほとんど、または毎日オフィスで働くように求めることを計画していると答えています。

一方、従業員は76%が働く場所の柔軟性を、93%が働く時間の柔軟性を求めており、経営層とはまったく対照的で、こうした意向の違いは、現在完全リモートで働いている人たちの間でより顕著に表れています。

このグループでは、毎日オフィスで働くことを希望する割合が経営層では半数近く(44%)に上るのに対して、従業員ではわずか17%に留まっています。

優秀な人材を確保し、離職を防ぎたいと考える経営層と、働く従業員の間に「オフィスで働く」ことへの認識の相違が感じ取れます。

こうしたズレにはいくつかの要因が考えられます。

経営層と従業員の仕事への満足度に関する調査結果

実は、経営層と従業員によるオフィスで働くことへの認識の違い以上に大きな差があるのは、仕事に対する満足度です。

出典 : 2021 年 7 月 28 日~8 月 10 日に実施した Future Forum Pulse。回答者数 10,569 人。国別サンプル規模 : アメリカ(5,339)、オーストラリア(1,060)、フランス(1,049)、ドイツ(1,050)、日本(1,047)、イギリス(1,024)。

仕事に対する経営層の満足度は、従業員よりもずっと高く(+62%)、その差はさらに広がりつつあります。

また、一部の企業では前四半期にオフィス勤務に戻るよう従業員に求めた結果、職場環境に対する経営層の満足度は3%上がりましたが、従業員の満足度は5%低下したという報告もあります。

この調査結果から、従業員の仕事に対する満足度を改善することが重要であると言えるでしょう。

働き方とオフィスの在り方からオフィス課題を分析する

働き方が変化する中で今後オフィスはどのような立ち位置でどう変化していくべきなのでしょうか。オフィスの使い方に関する企業や従業員の実態およびニーズなどについての調査結果からオフィスの課題を考察していきます。

働く場所に関する価値観の調査結果

ザイマックス不動産総合研究所が行った、オフィス空間や使い方に関する企業の取り組みや最新動向の調査結果のうち「<年代別>働く場所に関する価値観(2018~2022)」をみてみましょう。

出典:ザイマックス不動産総合研究所「<年代別>働く場所に関する価値観(2018~2022)」より(https://soken.xymax.co.jp/hatarakikataoffice/data/column208.html)

オフィスワーカーを対象とした年1回の定期調査で、働く場所に関する価値観「【A】決まったオフィスに通勤して働くのがよい」「【B】仕事をする場所をそのときどきに選べるのがよい」のどちらに近いか聞いた結果を、年代別に比較した調査によると、2018年と2019年には全世代で【A】の割合が高い結果となっていました。

コロナ禍が発生した2020年に【B】の割合が伸び、30代・40代では【A】を上回りました。

その後、2022年には20代・30代で【B】の割合が【A】の割合を上回り、特に30代では年々【B】の割合が増加しています。一方、40代以上では再び【A】が逆転しています。

この結果から、場所を選べる働き方への志向は20代・30代の若年層で特に強くなっているといえ、若年層に出社を強制したり、在宅勤務しか選択肢を与えなかったりすることは、組織へのエンゲージメント低下や生産性低下などを招く一因となるかもしれません。

働き方に関して企業が取り組みたい施策についての調査結果

働く場所への価値観が推移していることがわかってきたところで、次に、ザイマックス不動産総合研究所が行った、「働き方に関して今後取り組みたい施策(2022年秋)」をみてみましょう。

出典:ザイマックス不動産総合研究所「働き方に関して今後取り組みたい施策(2022年秋)」より(https://soken.xymax.co.jp/hatarakikataoffice/data/column197.html)

企業へのアンケートで、働き方に関する施策について実態と意向はこのような結果となり、「資料・書籍等のペーパーレス化」「従業員のスキルアップ・研鑽・リカレント教育の支援」「フレキシブルなオフィスレイアウトの導入」「従業員満足度(ES)調査の実施」等で未導入かつ今後の意向ありの割合が10%以上あり、導入率の伸びが予想されます。

オフィス内のレイアウト導入率とニーズに関する調査結果

今度は、先ほど見てきたアンケートのうちから、フレキシブルなオフィスレイアウトの導入について掘り下げて考察していきたいと思います。オフィスワーカー向けにザイマックス不動産総合研究所が行った、「オフィス内のレイアウトの導入率とニーズ(2022)」をみてみましょう。

出典:ザイマックス不動産総合研究所「オフィス内のレイアウトの導入率とニーズ(2022)」より(https://soken.xymax.co.jp/hatarakikataoffice/data/column188.html)

オフィスワーカーへのアンケートで、在籍するオフィス内のレイアウトについて、現状あるものとコロナ禍収束後にあってほしいと思うものを聞きました。

現状よりもニーズが大きく伸びたのは「リフレッシュスペース」(+14.3pt)、「食堂・カフェスペース」(+9.4pt)、「リモート会議用ブース・個室」(+6.1pt)、「集中するためのスペース」(+13.7pt)、「電話専用ブース・個室」(+6.7pt)でした。これらのレイアウトは今後導入が進むかもしれません。

以上の調査結果から、今後のオフィスの在り方を検討していくにあたって、従業員の意見に耳を傾け、オフィスの課題を一つひとつ改善していくことが重要であると考えられます。

企業が抱える課題をオフィス環境の見直しで解決する方法

オフィス勤務に対する従業員側の課題は、「働く場所=オフィス」を見直すことで解決できるケースが考えられます。働く場所を選択することができるようなオフィス環境とは一体どのような方法があげられるでしょうか。それでは、オフィス環境の改善につながる解決策を見ていきましょう。

オフィス環境を改善するための方法として以下のようなことがあげられます。

オフィス環境を改善するための方法

  • フリーアドレスを導入する

  • レイアウトを見直す

  • スマートオフィスを導入する

  • リフレッシュルームを設置する

  • ABWを導入する

  • DX化する

  • クラウドPBXを導入する

フリーアドレスを導入する

オフィスにフリーアドレスを導入することで、スペース不足やフロアの分散、従業員同士のコミュニケーション不足といった課題を解決できます。

フリーアドレスとは、従業員固有のデスクを設置せずに、どこでも好きな場所で働くことができるワークスタイルです。

フリーアドレスを導入する際には、インターネット環境や電話回線、セキュリティ対策など、システム面の整備を行う必要があります。

フリーアドレスのメリット・デメリット

メリット デメリット
デッドスペースを有効活用できる
コミュニケーションが取りやすくなる
モチベーションが向上する
居場所がなくなったと感じる
所属する部署内で一体感が生まれにくくなる
労務管理がしづらくなる

営業で社外に出る従業員が多い場合やノートPCで業務が進められる会社では有効な方法ですが、個人情報・機密情報を扱う会社や総務や人事、事務などの経理部門には向いていません。

レイアウトを見直す

オフィスのレイアウトを見直すことで、スペース不足やフロアの分散といった課題を解決できます。

通路の幅が狭かったり通路にものが置いてあったりするなどオフィス内の動線が確保できていないと、従業員がスムーズに移動できなくなり業務効率が低下します。

従業員が快適に仕事を進めるためには、椅子を引くスペースや部屋の用途に合わせて最適な通路幅にすることが重要です。

来客が多い場合は、入り口から応接室までの動線を意識し、できる限り従業員が働くスペースを通過しないように設計しましょう。

スマートオフィスを導入する

スマートオフィスを導入することで、多様化する働き方に関する課題に対応しやすくなります。

スマートオフィスとは、最先端のIT技術を活用することで快適な労働環境を実現したオフィスです。

自宅と会社の間に安全なネットワークを構築することで従業員が自宅でも仕事を行うことができ、勤怠管理システムを導入すれば社外で働くことが多い営業部門の労務管理が行いやすくなります。

スマートオフィスの効果と課題

効果 課題
業務効率化
生産性の向上
コスト削減
セキュリティ対策
通信環境の整備
使いこなせない従業員へのフォロー

スマートオフィスを導入する際には、従業員のITリテラシーを向上させ、段階的に導入するようにしましょう。

リフレッシュスペースを設置する

オフィスにリフレッシュスペースを設置することで、従業員の満足度に関する課題に対応できます。

心身の疲れをリフレッシュするだけでなく、従業員が同じ場所へ集まることでコミュニケーションが活発になり、新しいアイディアが生まれる機会にもなります。

リフレッシュスペースを取引先や就活生にも使用してもらうことで相手に好印象を与えることができ、企業のブランディングとしても有効です。

ABWを導入する

ABWを導入することで、スペース不足や多様化する働き方への対応といった課題に対応しやすくなります。

ABWとは、従業員の業務内容に応じて働く時間や場所を自由に決めることができるワークスタイルです。

Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の頭文字を取って、ABWと呼ばれています。

前述したフリーアドレスと似ていますが、自宅やカフェ、公園、サテライトオフィスなど、オフィス以外の場所でも自由に働く場所を決められる点が異なります。

ただし、導入する際には、労務管理やセキュリティ問題への対策が必要です。

DX化する

オフィスをDX化することで、人材不足や労働環境の改善、多様化する働き方への対応といった課題に対応しやすくなります。

DX化とは、経費精算や書類の管理、入退室管理、勤怠管理といった、業務の一部をDXツールが担うようにすることです。

オフィスで抱える課題を解決し、業務効率化や社員の生産性向上、オフィスの環境改善を図ることができます。

クラウドPBXを導入する

クラウドPBXを導入することで、スペース不足やフロアの分散といった課題を解決できます。

クラウドPBXとは、従来の固定電話のようにアナログ回線を利用するのではなく、インターネット回線を利用した電話システムです。

従業員のスマホを会社の電話として使用できるため、会社へかかってきた電話にどこからでも対応できるようになります。

従業員専用のデスクに固定電話を設置する必要がなくなるため、前述したフリーアドレスを導入する際に固定電話からクラウドPBXへ変更するケースが多いです。

フリーアドレスの導入を検討しているなら、手始めとしてクラウドPBXを導入してみるのもよいでしょう。

オフィスの課題を解決する際に注意すべきこと

オフィスの課題を解決する方法はさまざまですが、やり方によっては十分な効果が出なかったり逆効果になってしまったりする恐れもあります。

オフィスの課題を解決する方法を検討する際には、以下の3点に注意しましょう。

  • 働きづらいと感じる従業員もいる

  • 費用対効果を意識する

  • 課題を見落としている可能性もある

働きづらいと感じる従業員もいる

フリーアドレスやABWの導入、スマートオフィス化などは効果が高い解決方法ではありますが、従業員によっては居場所がなくなった・変化についていけないと感じてしまうことも考えられます。

オフィスを移転する場合であれば、通勤時間が長くなる従業員もいるかもしれません。

一方的に課題を解決しようとするのではなく、従業員に意見を聞く、アンケートを取ってみるなど、十分なヒアリングを実施するようにしましょう。

費用対効果を意識する

課題を解決するためには、どの方法であっても一定のコストが必要です。

抱える課題と解決方法がマッチしていなければ、十分な効果が得られず費用ばかりがかかってしまうかもしれません。

費用対効果を意識しながら解決方法を選定しましょう。

課題を見落としている可能性もある

さまざまな方法を実施して課題を解決したつもりでも、課題を見落としたままになっている可能性もあります。

課題の解決方法を導入して終わりにするのではなく、導入した結果十分に効果が出ているのか、まだ解決できていない課題はないかを検証するようにしましょう。

オフィスの課題を解決した事例

弊社がオフィスの最適化をサポートさせていただき、課題を解決できた事例をご紹介します。

コミュニケーションの課題を解決

株式会社オギツが抱えていた課題は、ショールーム・デザイン製造部門・執務スペースと3フロアに分かれていたことで、コミュニケーションを取るために階段の昇り降りが発生することでした。

オフィスの移転で3フロアに分かれていたオフィスを1フロアに集約することができ、コミュニケーションの課題を解決しています。

分散によるコミュニケーションコストが発生していたオフィスを1フロアに集約。社員がブランドを体感できる3つの会議室を備えた移転を実現

従業員数が増えて全員が出社できないという課題を解決

株式会社Voicyが抱えていた課題は、従業員数が増えたことでオフィスへ全員が出社できない状態になっていたことです。

オフィスの移転でスペースを確保でき、インターネット回線の整備もできたことで、課題を解決しています。

また、居抜きでの入退去でオフィスを移転したため、予算的にも時間的にもコストを抑えることができました。

働くメンバーもパーソナリティも来たくなるオフィスを目指して。「居抜きオフィス」を選択したVoicyのオフィスへの想いとは?

面談中の雑音に対する関する課題を解決

ポジウィル株式会社が抱えていた課題は、人口密度が高いことで面談中の相手から雑音を指摘されていたことです。

オフィスの移転で占有フロアが広くなり、雑音に配慮した面談ブースを設置できたことで課題を解決しています。

また、以前のオフィスよりスペースが広がったことで、ヨガマットやバランスボール、トランポリン、卓球台などを設置でき、トレーニングスペースも確保できるようになりました。

リモートでの関係構築の難しさを痛感。ポジウィルがコロナ禍を経て問い直された、オフィスを持つ意味

まずは企業が抱える課題を明らかにしよう

今回ご紹介したのは、調査結果をもとにした一般的な課題とその解決方法です。企業ごとの特性や文化、社風に合わせて、自社の課題を明らかにし、実際に働く従業員も満足できるような課題解決を行ってください。

当社では、課題を抱える企業に対し、オフィスはもちろん、オフィス以外の選択肢も含め「はたらく場所の最適化」を実現させるためのサービスを提供しています。

HATARABAサーベイ

「HATARABAサーベイ」は、オフィスの利用状況を様々な切り口で可視化し、合理的な課題解決をサポートするサービスです。

オフィスの利用状況を独自技術を用いて計測。部署・役職・職種などの切り口から定量的に分析し、オフィスを最適化するための意思決定をサポートします。

はたらく場所の最適化「HATARABAサーベイ」

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