シェア拡大のため本社のあるエリア以外へのオフィス新設・移転を検討しているが、どこが良いのか、補助金などはあるだろうか。そんなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
地方進出でオフィスを新設する場合、各地方自治体が中小企業の投資や新規立地の促進を図るために行っている、企業立地促進のための補助金を利用することができる場合があります。
この記事では、地方都市へオフィスを開設するメリットと、【大阪・愛知・福岡・宮城・広島・北海道】で自治体から公表されている補助金・助成金をご紹介します。(2025年10月時点)
地方へオフィスを開設するメリット
地方都市へのオフィス開設や本社移転によるメリットは、単なる固定費の削減に留まりません。ここでは、経営層や総務部門が知っておくべき、地方都市進出の3つのメリットについて解説します。
1.コストを抑えられる
メリットの1つめは、首都圏でオフィスを開設するよりもコストを抑えられることです。地方都市は首都圏より賃料が安く平均賃金も低いため、人件費を含めたオフィス開設コストを削減できます。
2.優秀な人材を確保できる
優秀な人材を確保できることも、地方都市へオフィスを開設するメリットです。元々地方都市に住んでいる方はもちろん、近年では働き方改革の影響もあり、能力が高く、かつ地方都市へ移住してリモートワークで働きたいという方も増加しています。新規採用・中途採用ともに、地方都市での採用にはメリットがあるといえるでしょう。
3.補助金・助成金が利用できる
地方都市へオフィスを開設すると、企業立地促進のための補助金や助成金が利用できる場合があります。
企業立地促進補助金・助成金とは、オフィスや建物・工場などを新設・増設・移転する事業者に対して、各地方自治体から交付される補助金・助成金です。
地方都市への企業立地促進・産業振興・競争力強化などを目的としており、対象事業者や要件、受け取れる金額、交付期間は、各地方自治体ごとに異なります。
【大阪・愛知・福岡・宮城・広島・北海道】で地方進出時に検討できうる補助金・助成金をまとめてみました。
※情報は2025年10月作成時点のものです。変更がある場合もありますので、最新の情報については各自治体のホームページ等でご確認ください。
【大阪府】への進出で利用できる補助金・助成金
大阪府は、西日本における交通・経済の中心地として、国内外の企業誘致に積極的です。府全域を対象とした大型投資案件から、堺市や高槻市など主要都市圏における、特定の立地や産業を対象とした支援まで、多様な補助金・奨励金制度が用意されています。
企業立地促進補助金(府内投資促進補助金)
府内対象地域でものづくりを行う中小企業の事業拡大を支援する制度です。産業集積促進地域における工場や研究開発施設の新築・増改築等が主な対象となっており、先端産業の研究開発施設への投資を後押しします。補助上限額は3,000万円で、対象経費の5%が補助されます。また、府内に既存拠点がある企業は補助率が10%に優遇されます。
>詳細:大阪府企業立地促進補助金 (府内投資促進補助金)
企業立地促進補助金(外資系企業等進出促進補助金)
大阪府が、国際競争力強化のために外資系企業の誘致を目的として設けた制度です。府内に本社機能を有する事業所を新設・移転する際の投資に対するサポートを目的とした本制度では、要件に応じて、家屋の取得であれば最大1億円、賃借の場合で最大6,000万円が補助されます。
>詳細:大阪府企業立地促進補助金 (外資系企業等進出促進補助金)
大阪市本社機能立地促進助成金
大阪市内に本社機能を有する事業所等を新設する事業者に対し、建物賃借にかかわる経費の一部を補助する制度です。
※募集期間は、令和7年10月8日(水曜日)から11月7日(金曜日)まで。
「日本国内における会社の設立登記の日(会社法第2条第2号に規定する外国会社の場合、日本国内における営業所設置登記の日をいいます。)から交付申請を行った日の前日までの期間が5年を超えていること」など、条件をすべて満たす企業が対象となります。
>詳細:令和7年度大阪市本社機能立地促進助成金の対象となる事業者を募集します
堺市都心地域産業拠点強化補助金
堺市都心地域を中心とした指定地域に新たに事業所等を開設するために必要な経費の一部を補助する制度です。対象の業種かつ要件を満たせば、予算の範囲内で立地後3年間(36カ月)の賃料の30%が補助(500万円限度)されます。
>詳細:都心地域産業拠点強化補助金 堺市
堺市賃貸オフィスビル設置促進補助金
堺市に賃貸オフィスビルを設置するために必要な経費の一部を補助する制度です。
「堺市の都市拠点(都心地域・中百舌鳥地域・泉ヶ丘地域)において賃貸オフィスビルを新築、又は建替えを行う者であること」など、すべての要件に該当する方が対象となります。
高槻市企業立地促進制度(奨励金)
高槻市内の工業地域・準工業地域に、情報通信業や研究開発機関など特定の業種の事業所を新設・増設する企業に対し、奨励金を交付する制度です。
土地購入(初期投資奨励金、年度上限1億円)や研究設備(研究設備等投資奨励金、年度上限5,000万円)など、投資内容に応じた複数のメニューを設けている点が特徴です。
【愛知県】への進出で利用できる補助金・助成金
日本の製造業の中心地でありながら、近年IT系企業の誘致にも力を入れている愛知県は、県レベルの大型補助金に加え、名古屋市などの主要都市が独自に手厚い支援策を設けているのが特徴です。特に、東京圏からの本社機能移転に対する支援が充実しています。
21世紀高度先端産業立地補助金
製造業・ソフトウェア業にかかわる工場・研究所を新設又は増設する、愛知県内の企業の「設備投資に必要な経費」の一部を補助する制度です。投資規模や雇用要件を満たせば、補助率8~10%以内(上限100億円)の補助を受けられます。
>詳細:県の優遇制度 愛知県
新あいち創造産業立地補助金(A・B・Cタイプ)
Aタイプ・Bタイプは、愛知県内で製造業・ソフトウェア業にかかわる工場・研究所を「新設又は増設するために必要な経費」の一部を補助する制度です。
Cタイプは、愛知県内に拠点のないソフト系IT企業がオフィスを新設する場合や、県内に拠点を持つソフト系IT企業の事業拡大・STATION Aiから転出する場合に利用可能な、オフィス賃借料等に対する補助金となっています。
>詳細:県の優遇制度 愛知県
名古屋市本社機能等立地促進補助金
東京23区などから名古屋市内に本社機能を移転・新設する企業を対象に対して支援する制度です。
交通の利便性や都市機能の充実度が高いことから本社移転先としても人気の高い名古屋市ですが、建物賃借料(36か月分)をはじめとする補助対象に対して本制度(補助率10~50%まで、限度額10億円)を利用することで、オフィス賃料や設備投資などにかかる初期負担を大幅に軽減することができます。
名古屋市企業進出促進補助金
企業の進出を促進するため、名古屋市内において初めて事業所を開設する市外企業に対して、開設に要する経費の一部を助成する制度です。
ICT、外資系、スタートアップ、グロース企業が対象となっており、各要件を満たせば新たに開設する事業所の賃借料(最大12か月分、敷金、保証金等及び消費税等を除く)に対して50%以内(限度額1,000万円)の補助を受けることができます。
>詳細:名古屋市 企業進出促進補助金
名古屋産業立地強化促進補助金
名古屋市内でオフィスや工場、研究施設の新増設する企業に対して、その経費の一部を助成する制度です。名古屋市内に50年以上本社を有する企業、製造業又は情報通信業に分類される事業を主に営む企業、など該当する要件によって補助率等が変わります。
>詳細:名古屋市 産業立地強化促進補助金
名古屋市 都市型産業研究施設開設補助金
名古屋ビジネスインキュベータ等に入居する場合の補助・減額制度です。創業後5年以内に対象施設に入居した企業を対象として、賃借料の減額または補助が受けられます。
東海市中小企業高度先端産業立地補助金
先述の「21世紀高度先端産業立地補助金」に対応した補助制度で、東海市内において高度先端技術分野(環境・新エネルギー・情報通信等)の工場の新設または増設を行う中小企業を対象に支援しています。補助額は土地・家屋等の固定資産取得費用の10%(上限10億円)となっています。
安城市企業投資促進事業補助金
先述の「21世紀高度先端産業立地補助金」や「新あいち創造産業立地補助金(Aタイプ)」と共同で行っている支援策です。「21世紀高度先端産業立地補助金」との共同支援では、航空宇宙、環境・新エネルギー、健康長寿など高度先端産業分野の工場を安城市内に新増設する中小企業が対象となっています。
「新あいち創造産業立地補助金(Aタイプ)」との共同支援では、愛知県内に20年以上、かつ概ね安城市内に10年以上立地する次世代成長分野等の事業者が、安城市内において工場等の新増設・機械設備投資を行うために必要な経費への補助がなされます。
>詳細:安城市 企業投資促進事業補助金
【福岡県】への進出で利用できる補助金・助成金
アジアの玄関口としての地理的優位性と、スタートアップ支援が活発なビジネス環境という強みを持つ福岡県は、オフィスの新設・移転場所としても高い人気を誇ります。大型投資を伴う本社機能移転から、賃料補助や雇用助成を組み合わせた制度まで、大小幅広い規模を網羅した手厚い支援を用意しており、特にITや成長分野の企業誘致に積極的です。
福岡県企業立地促進交付金(補助金)
福岡県内で事業所を新設・増設または移転する企業を対象とした、県全域の大型支援制度です。航空宇宙関連や半導体関連など特例産業に対しては、最大50億円(設備投資額1,000億円以上の場合)の交付枠が設定されています。また、調査・企画部門や情報処理部門などの本社機能を有する特定業務施設への交付金は、全業種が対象となっています。
福岡市立地交付金制度
福岡市内に本社機能や成長分野の事業所を設ける企業を対象とした、市独自の支援制度です。要件や補助額は対象分野によって異なります。
例えば、IT・コンテンツ・医療・環境等の研究開発分野に対してはオフィスの賃借・所有どちらの形態にも対応しています。特に賃借型では年間賃借額の1/4が補助され、大規模オフィスでは補助上限額は1億円となります。また、正社員の新規雇用に対して1人あたり100万円の雇用促進助成も併用可能で、大規模オフィスや本社機能向け助成を大幅に拡充している点が特徴です。
>詳細:福岡市 企業立地の助成制度・税優遇 | 福岡市立地交付金制度
北九州市企業立地優遇制度
北九州市外の企業が本社機能やソフトウェア、情報処理サービスといった特定業種の事業所を市内に移転または新設する際に、設備投資や賃借料、新規雇用に対する補助を提供する制度です。本社機能等移転促進補助金の「オフィス賃借型」では、オフィス賃借料および共益費の1/2が最長5年間補助され、5年間の雇用計画が100人以上の場合は、最大で2億5千万円までが補助されます。
>詳細:北九州市企業立地優遇制度
他の地域の補助金・助成金
企業立地の優遇制度 大牟田市(令和8年度末まで)
【宮城県】への進出で利用できる補助金・助成金
東北地方の中心都市・仙台市を擁する宮城県は、交通アクセスや学術研究機能が充実しています。企業誘致施策においても、そのような地域特性を活かし、製造業の工場やR&D施設に加え、IT関連企業のオフィスや本社機能の誘致を積極的に推進している点が特徴です。
みやぎ企業立地奨励金
製造業を対象とした本制度は、工場や研究所の新設・増設に加え、製造業にかかる本社(事務所・研究所・研修所)の新設・増設も支援対象としています。本社機能新設等の場合、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定を受けた場合に投下固定資産額の5%(上限1億円)が交付されます。
>詳細:宮城県 みやぎ企業立地奨励金制度
宮城県情報通信関連企業立地促進奨励金
ソフトウェアなどの設計や開発機能を有する情報通信関連企業が、県内に開発拠点または本社等を開設する際の投下固定資産・賃借料・雇用に対して奨励金を交付する制度です。本社機能の開設に対しては、投下固定資産額または賃借料の10%(上限1,000万円)が交付されます。
>詳細:宮城県 情報通信関連企業立地促進奨励金
仙台市企業立地促進助成金
仙台市に新設・増設・市内移転する企業に対し、新規投資に係る固定資産税等相当額を3年間~5年間に渡り納税後に交付する助成制度です。賃借にも対応しています。助成金額、交付年数、交付限度額等は業種等によって異なります。
例えば、「本社機能及びバックオフィス等立地促進助成金」では、投下固定資産相当額1,000万円以上をはじめとする交付要件のもと新設・増設・市内移転に関する新規投資に対し、固定資産税等相当額の100%(限度額なし)が3年間交付されます。
>詳細:企業立地促進助成金 仙台市
他の地域の補助金・助成金
【広島県】への進出で利用できる補助金・助成金
広島県は、首都圏からの本社機能移転やサテライト拠点の開設を強力に推進しています。単なるオフィス賃料の補助に留まらず、人材の転入に焦点を当てた独自の助成メニューを展開しており、企業の事業拡大と従業員のU・Iターンを総合的に支援しています。
広島市企業立地促進補助制度(賃借型)
広島市内における賃借オフィス設置への補助を提供する制度です。本社機能の移転・拡充案件の場合、事業所の賃料年額の1/2(年度上限1,000万円)の補助金を3年にわたり受けることができます。さらに本制度は、広島県の助成制度との併用が可能であり、県と市からの支援を組み合わせることで、コストを大幅に軽減できる点が大きな特徴です。
>詳細:広島市 企業立地促進補助制度
他の地域の補助金・助成金
【北海道】への進出で利用できる補助金・助成金
北海道は、広大な土地と豊かな自然環境に加え、札幌市を中心としたIT産業の集積地としての側面を持ちます。道内では、企業の本社機能移転や大規模な新規拠点設立を支援するため、賃料補助や設備投資補助を組み合わせた独自の大型補助金制度を整備しています。
北海道企業立地促進補助金
道外企業が道内に本社機能を有する事業所を移転する際や、IT・新エネルギー・医薬品などの成長分野の事業所を新設・増設する際に利用できる補助金制度です。多彩な補助メニューの中でも、特に本社機能の移転を対象とした制度では、設備投資の新設には投資額の10%(限度額1億円)、貸借では1年間の賃料の1/2を3年間(限度額1,000万円/年)補助されます。
>詳細:北海道 企業立地助成制度
札幌市本社・本社機能移転促進補助金
札幌市が、道外からの本社または本社機能の移転を促進するための補助制度です。この制度は、移転形態(本社移転/本社機能移転)やビルの種類に応じて補助率が設定されており、特に「ゼロカーボン推進ビル」に入居した場合、本社移転で年間賃料の10/10、上限1億円を2年間にわたり補助するメニューが用意されています。先述の「北海道企業立地促進補助金」と併用することも可能です。
地方進出で利用できるオフィス新設・移転の補助金・助成金まとめ
今回は、地方都市へオフィスを開設するメリットと【大阪・愛知・福岡・宮城・広島・北海道】で利用できる企業立地促進補助金・助成金をご紹介しました。
補助金・助成金を利用できれば、地方進出にかかるコストを抑えることができます。進出を予定している地域で利用できる補助金・助成金はないか、確認してみましょう。
弊社では、既存のオフィスの課題の洗い出しからオフィス移転の要件定義、移転先候補の物件とのマッチング、オフィスのデザイン・レイアウト設計のサポート、各種工事における信頼のおける業者の紹介までトータルでプロジェクト全般をサポートさせていただくことも可能です。
お問い合わせ、ご提案は無料なので、ぜひ「迷っている」段階からお気軽にご相談ください。