「スマートオフィスとはどのようなオフィスを指すのか」
「スマートオフィス化することのメリット・デメリットは何か」
「スマートオフィス化した企業の事例を知りたい」など、最近耳にすることの増えた「スマートオフィス」の概要からスマートオフィス化するメリット・デメリット、導入時のポイントについて解説します。
スマートオフィスとは
「スマートオフィス」とは、IoTやAIといったIT技術を活用することで快適な労働環境を提供できるようにしたオフィスです。
従来のオフィスのように従業員のマンパワーに頼るのではなく、最先端技術を活用することでオフィス内で発生する作業負担を軽減する仕組みにしたものが、スマートオフィスです。
IoTとは
「IoT」とは、インターネットを経由して情報をやりとりできる技術です。Internet of Thingsの頭文字を取ってIoTと表記されます。
-勤怠管理システム
-照明・空調管理システム
-ウェビナーツール
-請求書自動発行システム など
スマートオフィスの市場規模は
市場調査・コンサルティング会社のKnowledge Sourcing Intelligenceの調査によれば、2021年の米国における市場規模は343億4,100万米ドルでしたが、2028年には804億800万米ドルに増加し、年平均成長率(CAGR)12.92%で成長する見込みです。米国での調査結果ではありますが、日本国内でも同様に成長していくことが想定されるといえるでしょう。
スマートオフィス化するメリット
スマートオフィス化するメリットは以下の6つが考えられます。
-アナログ作業を削減することで業務効率を高めることができる
-無駄な作業を削減することで生産性を高めることができる
-光熱費などのコストを削減できる
-さまざまな働き方を提案できる
-職場内でコミュニケーションが活発になる
-優秀な人材を確保しやすくなる
アナログを削減することで業務効率を高めることができる
スマートオフィス化のメリットは、導入したIT技術によりアナログ作業を減らすことができ、業務効率を高めることができることです。
たとえば、従業員が出勤時刻や退社時刻をタイムカードに打刻する仕組みの場合、1ヶ月の就業時間・残業時間を計算するためには、Excelなどの表計算ソフトへ手作業で入力する必要があります。
一方、勤怠管理システムを導入し、打刻機と連動させておけば、日々の就業時間・残業時間が自動的に計算・集計されるため、管理部門の負担を大きく軽減することが可能です。
無駄な作業を削減することで生産性を高めることができる
無駄な作業を削減することで生産性を高めることができる点も、スマートオフィス化のメリットと言えるでしょう。
例えば、会議室の空き状況を確認し、一杯であれば他の社員と調整するといったような生産性の低い作業にかかる時間を極力減らすことで、より生産性の高い商談の機会を増やせるなど、本来の目的以外のところの労力を削減することで生産性を高めることができます。
予約システムを導入しておけば従業員全員がパソコンから予約状況を確認でき、外出先からでもスマホで予約することも可能です。
光熱費などのコストを削減できる
スマートオフィス化には、照明や空調などの光熱費を削減する効果もあります。
使っていない部屋の照明や空調を付けたままにしておくと、無駄な光熱費が発生するため、センサーやAIなどで使用されていない部屋を発見し、自動的に照明や空調が切れる仕組みにしておけば、毎月の光熱費を抑えることができます。
さまざまな働き方を提案できる
スマートオフィス化を進めることで、従業員に対してさまざまな働き方を提案できるようになります。
近年ではテレワークを導入する企業が増加していますが、会社のパソコンを使って作業する場合のように、担当する業務によってはテレワークが導入しにくいケースもあります。
自宅と会社の間に安全なネットワークを構築することで、情報漏えいや機密情報の紛失を心配することなく、自宅でテレワークを行うことが可能です。
出産や育児、介護などで就業が制限されるため休職・退職を決断していた従業員に対しても、個別の事情に合わせた働き方を提案でき、働き続けてもらうことができます。
職場内でコミュニケーションが活発になる
スマートオフィス化に伴い、フリーアドレスを導入すれば、職場内のコミュニケーションの活性化も期待できます。
フリーアドレスのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
デッドスペースを有効活用できる 部署を超えた交流ができる 新たな発想や企画が生まれやすい |
自席がなくなることで不安を感じる 誰がどこにいるか把握しにくい |
フリーアドレスを導入するために必要なIT機器は以下の通りです。
-電話の子機のように持ち歩ける「デジタルコードレスフォン」
-スマートフォンで内線を受けられる「クラウドPBX」
-社内専用の携帯電話
-無線LAN対応のノートPC
優秀な人材を確保しやすくなる
スマートオフィス化することで、優秀な人材を確保しやすくなるという効果も期待できます。
求職者にとって、職場の労働環境は重要なポイントです。自宅から職場までの距離が遠かったとしても、テレワークに対応しているなら検討の対象になるでしょう。また、固定電話やファックス、タイムカードといったアナログ機器ばかりが目立つオフィスだと敬遠されてしまうかもしれません。
逆に、スマートオフィスだからといって求職者が応募を躊躇することは考えにくいでしょう。
スマートオフィス化によって幅広い人材から応募してもらえるような環境を用意することで、優秀な人材を確保する機会を増やすことができます。
スマートオフィス化するデメリット・課題
スマートオフィス化には様々なメリットがある一方で、以下のようなデメリットや課題も抱えています。
-通信環境を整備する必要がある
-初期投資・維持費などのコストがかかる
-情報漏えいや不正アクセスなどのセキュリティ問題
-使いこなせない従業員へのフォロー体制
通信環境を整備する必要がある
スマートオフィス化するためには、事前に通信環境を整備しておく必要があります。
なぜなら、IoTやAIといったIT技術を活用するには高速なインターネット回線が欠かせないからです。
多くの企業ではすでにインターネットが利用できる環境にありますが、スマートオフィス化することで通信量が増加すると回線が不安定になったり、料金が高額になったりするかもしれません。
スマートオフィス化を見据えた通信環境が確保されているか、遅延なく回線が利用できるかを確認しておきましょう。
初期投資・維持費などのコストがかかる
初期投資・維持費などのコストがかかることも、スマートオフィス化するデメリットです。
前述した通信環境の整備だけでなく、新たにIT機器を導入する必要があります。すべての従業員に対してノートパソコンやタブレットを用意すると、まとまった金額の初期投資が必要になるでしょう。IT機器のメンテナンスには維持費も必要です。
スマートオフィス化する前に、どのくらいの予算を確保する必要があるのか、維持費を含めると毎月の出費がどのくらい増加するのか確認しておきましょう。
情報漏えいや不正アクセスなどのセキュリティ問題
スマートオフィス化した後の課題は、情報漏えいや不正アクセスなどのセキュリティ対策を実施する必要があることです。
IoTやAIといったIT技術の多くはインターネットを経由して利用するものなので、セキュリティ対策が不十分だと情報が漏えいしたり、悪意のある第三者から不正アクセスされたりするリスクが高くなります。
情報漏えいや不正アクセスが発生すると取引先や社会からの信頼を失うため、スマートオフィス化と並行してセキュリティ対策も実施することが重要です。
使いこなせない従業員へのフォロー体制
導入したIT技術を使いこなせない従業員に対してフォローが必要なことも、スマートオフィス化した後の課題と言えるでしょう。
スマートオフィス化では最先端の技術が利用されることが多く、使い方が分からなかったり、トラブルが発生した際に対応ができなかったりするケースもあります。
導入した後に従業員へ講習を行う、緊急時用のマニュアルを作成するといった、従業員へのフォロー体制を構築しておきましょう。
スマートオフィスを導入するポイント
スマートオフィスを導入するポイントは以下の6つです。
-現状の課題・問題点を確認する
-コンセプトを明確にする
-従業員のITリテラシーを向上させる
-段階的に時間をかけて導入する
-オフィス移転も視野に入れて検討する
-IT導入補助金を活用する
現状の課題・問題点を確認する
実際にスマートオフィスを導入する前に、現在どのような課題を抱えているのか、業務をおこなううえで問題となっているのは何かを確認しておく必要があります。
スマートオフィス化で導入するIT機器にはさまざまなものがありますが、すべての機器を導入しなければいけないわけではありません。
たとえば、従業員数が多い企業や社外営業・テレワークが多い企業では勤怠管理システムを導入することで大きな効果が期待できる一方、10名以下の企業では優先して導入する必要はありません。
また、オフィススペースに余裕がない場合、フリーアドレスを導入してもかえって働きづらくなってしまうかもしれません。
現状の課題・問題点を確認し、どのようなIT機器を導入すれば解決できるのかを検討しましょう。
コンセプトを明確にする
オフィスのコンセプトを明確にすることも、スマートオフィスを導入するポイントです。
オフィスのコンセプトを明確にすることは、社内外にメッセージを打ち出せるだけでなく、オフィスづくりや拡張の指針となります。
オフィスのコンセプトを決定する要素は以下の通りです。
-会社の理念
-事業内容
-中長期的な経営計画
-従業員の働き方
-社員に目指してほしい方向性
オフィスのコンセプトを決定することで、従業員の労働環境を改善するのか、生産性を向上させるのかといったスマートオフィス化の方向性を明確にし、効率良くスマートオフィス化を進めることができるでしょう。
従業員のITリテラシーを向上させる
従業員のITリテラシーを向上させることも、スマートオフィスを導入する際の大きなポイントです。
従業員のITリテラシーが十分でなければスマートオフィス化でIT機器を導入しても使いこなすことができないですし、セキュリティ対策を実施しても従業員にネットワークやセキュリティ、モラルに関する知識がなければ情報漏えいのリスクがあります。
スマートオフィス化と並行し、従業員のITリテラシーを向上させることも重要です。
段階的に時間をかけて導入する
段階的に時間をかけて導入することも、スマートオフィスを導入するポイントです。
オフィス内のすべてに対してスマートオフィス化を進めてしまうと、一度に高額な費用が発生するだけでなく、業務が急激に変化することで業務効率が低下してしまう恐れもあります。
優先順位を決めて、段階的にスマートオフィス化を進めるようにしましょう。
オフィス移転も視野に入れて検討する
オフィス移転も視野に入れて検討することも、スマートオフィスを導入するポイントです。
現在使用しているオフィスで無理にスマートオフィス化を進めてしまうと、かえって生産性が低下したり、働きづらくなったりするかもしれません。
テレワークを導入するのであれば今より狭いオフィスへ移転して賃料を抑えることができますし、フリーアドレスの席を追加で用意するなら今より広いオフィスへ移転した方が効果的なこともあるでしょう。
IT導入補助金を活用する
IT導入補助金を活用することで、スマートオフィス化にかかる費用を抑えることができます。IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者のITツール導入に際して支給される補助金です。
以下のような費用に対し、補助金が支給されます。
-ソフトウェア購入費
-クラウド利用料
-導入関連費
-ハードウェア購入費
また、テレワークの実施に必要な機器やソフトウエア等の導入経費を助成する「テレワーク促進助成金」や、革新的サービス開発や生産性の向上のための投資に対して補助金が支給される「ものづくり補助金」も活用できるかもしれません。
ただし、補助金・助成金は申請すれば必ず支給されるわけではありません。必要な書類を作成・提出し、審査・承認を受ける必要があります。
補助金・助成金を利用するにあたっての注意点は以下の通りです。
-補助金・助成金の支給は原則後払い
-申請や受給までの手続きが煩雑
-返還を求められる場合がある
-課税対象となる
-消費税分の返還が必要
スマートオフィス化の先にある次世代の働き方
利便性を向上させるためにさまざまなシステムを入れたものの、システムごとに設定や管理が異なり、社員も二重で入力が必要など手間がかかる場面も出てくるかもしれません。
加えて、セキュリティ面や安全面も担保しながらプライバシーにも配慮しなくてはいけない。現代社会ならではの複雑なスマートオフィスの課題も浮き彫りになっています。
スマートオフィス化の先にある、安全で便利かつ使い勝手の良い、最新テクノロジーを取り入れた次世代型オフィスを実際に学べるビットキーのオフィスツアーを定期開催しています。
スマートオフィス化でお悩みなら当社へ
今回は、スマートオフィスの概要からスマートオフィス化するメリット・デメリット、導入するポイントについて解説しました。
スマートオフィス化には業務効率・生産性の向上やコスト削減、労働環境の改善などのメリットがある一方、高額な費用やセキュリティ対策といったデメリット・課題もあります。自社の現状を分析したうえで、最適なスマートオフィス化を進めるようにしましょう。
当社が提供している「HATARABAサーベイ」では、オフィスの利用状況を様々な切り口で可視化し、合理的な課題解決をサポートしています。
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