コロナ禍で急速に広まったテレワーク。業務の効率化や従業員のワークライフバランスの実現など様々な効果が得られますが、コスト面も気になるところ。
本記事では、テレワークがもたらす「コスト削減」に焦点をあて、削減可能な費用や、注意点をテレワークを導入した事例も含めて解説します。出社とテレワークを選択するハイブリッドワークを検討している担当者の方も、ぜひご一読ください。
テレワークでコスト削減の効果はある?データで解説
まず、テレワークの実施で、コスト削減効果はあったのでしょうか。東京商工会議所が2022年に実施した「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査」によると、テレワーク導入済みの企業のうち23.2%がコスト削減効果を実感しているという調査結果が出ています。
「働き方改革の進展」や「業務プロセスの見直し」と比較すると割合は低いのですが、コスト削減が実現できた企業が約2割いるのは事実です。テレワークで減らせる費用を知り、有効な対策を立てることができればコスト削減効果の実感も高まるでしょう。
テレワークで減らせる費用を中身を知り、有効な対策を立てることができれば、よりコスト削減効果も見込めるのではないでしょうか。
次に、テレワークの実施で削減できる費用には、どのようなものがあるのが、代表的な5つの項目について解説します。
テレワーク導入で期待できる【5つのコスト削減】
テレワークの導入により、コスト削減が期待される5つの項目
通勤費用・交通費
書類など紙の印刷代
オフィスの賃料
オフィスの水道光熱費
採用コスト
それぞれの項目を詳しくみていきましょう。
通勤費用・交通費
出社の場合、通勤のために電車やバスなどの交通費や定期代が発生します。車通勤の場合は、自宅から会社までの距離に応じたガソリン代がかかるでしょう。これらの費用を計算し、企業は通勤手当として従業員へ支払います。
出社からテレワークに切り替えができれば、自宅などから業務が可能になるため、通勤にかかる費用を削減できます。
たとえば、従業員数50人の会社で1人にかかる電車の定期代が1万円だとすると、毎月50万円もの通勤費用が必要です。仮に全員がテレワークへ移行するとしたら、毎月50万円のコスト削減が実現します。テレワークの対象者が多いほど、コスト削減効果が大きくなるでしょう。
また、テレワークにより、取引先との打ち合わせや商談もオンラインで完結させることができます。取引先まで移動する際にかかる交通費も削減が見込めます。
書類など紙の印刷代
テレワークを推進するには、ペーパーレス化もあわせて導入するのが一般的です。ペーパーレス化によって、下記の費用を削減できます。
用紙代
複合機の印刷代
複合機の台数見直しによるリース代 など
用紙代や印刷代は、1枚あたりのコストが数円~数十円とごくわずかです。しかし長期的に考えると、紙の使用を継続するとトータルでかかるコストは膨大になりかねません。長期的なコストを考えると、早めにペーパーレス化を導入したほうが、より大きなコスト削減につながります。
ペーパーレス化の環境下では、業務フローの見直しも必要です。紙や印刷にかかるコスト削減のほか、業務効率向上による時間的コストの削減も期待できるでしょう。
オフィスの賃料
テレワークで出社する従業員数が減ることによって、今までのオフィス面積が不要になる可能性があります。空いているデスクや会議室などのスペースを減らし、オフィスの一部を縮小、もしくは適正な面積のオフィスへ移転できれば毎月かかってくるオフィス賃料の削減につながります。
ザイマックス総研が2023年に行った調査によると、東京23区における在籍1人あたりのオフィス面積は3.9坪でした。しかし、出社の場合は、1人あたりのオフィス面積が4.9坪に増加します。
テレワークを実施し、従業員の出社率が低いほうがオフィス面積を削減しやすいと言えます。
上記の面積を例に、従業員が50人でオフィスの坪単価が3万円の場合のオフィス賃料のコスト削減効果を考えてみましょう。
出社 | 在籍 | 削減効果 | |
---|---|---|---|
一人当たりオフィス面積 | 4.9坪 | 3.9坪 | |
必要面積 | 245坪 | 195坪 | -50坪 |
賃料試算 | 735万円/月 | 585万円 |
-150万/月 |
全員が出社する場合は毎月735万円の賃料となりますが、テレワークを導入し、オフィス面積を1人あたり3.9坪に縮小できた場合は585万円となり、毎月150万円のオフィス賃料の削減が期待できます。
オフィス面積の縮小とともに坪単価の安い物件へ移転できれば、さらなるコスト削減も見込めるでしょう。このようにテレワーク導入によるオフィス面積の見直しは、大きなコスト削減が実現しやすいと言えます。
しかし、オフィス面積の見直しにあたっては、コスト削減ばかりに目を向けるのではなく、「自社に最適なオフィス面積」を把握する必要があります。
現状のオフィス課題を可視化し、最適な面積を知るには「HATARABAサーベイ」がおすすめです。
HATARABAサーベイでは、オフィスの課題や改善点を可視化し、理想のワークスタイル構築に向けて支援します。オフィス面積が適正か、数年先までシミュレーションすることも可能です。
オフィスの水道光熱費
オフィスを縮小、もしくは縮小移転することで面積が少なくなる分、これまでかかっていた電気代や水道代の削減も見込めます。
フロアの面積縮小によって必要な照明が少なくなり、電気代の削減につながります。テレワークで出社する従業員が少なくなれば、トイレや給湯室を使う頻度が減って水道代の節約になるでしょう。
また、固定電話やFAXなどの台数を見直しすることによって、通信費削減も期待できます。
採用コスト
テレワークの実施は採用コストの削減にも効果的です。たとえば、従業員のなかには出産・育児・介護・家族の転勤などの理由によって、退職を選択せざるを得ない状況の人がいるかもしれません。
テレワークができる会社なら、インターネット環境さえ整っていれば引き続き業務ができるため、ライフステージの変化によって従業員が退職するリスクを抑えやすくなります。退職する人が減れば、人員補充のための採用コストも削減できるでしょう。
また、求職者が柔軟な働き方を希望する場合があり、自社を志望する人材が増える効果も期待できます。地方在住だったとしても、選考のためにわざわざ来社してもらう必要がなく、オンラインで面接も可能になることから効率的な採用活動が期待できます。
コスト削減以外も!テレワーク導入のメリット
テレワークの導入で、コスト削減以外にもメリットがあります。ここでは「通勤時間の短縮」「モチベーションアップ」「非常時でも業務継続が可能」の3つを解説します。
通勤時間の短縮
テレワークの導入によって通勤時間が大幅に短縮できます。通勤・帰宅時に混雑した電車へ乗らずに済むため、ストレスも軽減されるでしょう。
ニッセイ基礎研究所が2020年に実施した調査によると、幸福度と通勤時間の関係は下記のようになっています。
通勤時間が長くなればなるほど、幸福度が下がる結果となっています。テレワーク実施による通勤時間の短縮が、従業員の幸福度を高めるきっかけになると言えます。
モチベーションアップ
通勤時間が減る分、従業員はワークライフバランスを取りやすくなります。ワークライフバランスを整えると心身のリフレッシュやストレス解消につながり、業務にも前向きに取り組めます。
モチベーションの高い従業員が増えることで、業務のパフォーマンスや生産性、エンゲージメント向上などに効果的です。
プライベートを楽しむ、リスキリングに取り組む、家庭との両立を図るなど、従業員が充実した時間を過ごせるようにテレワーク環境を構築していくことが大切です。
非常時でも業務継続が可能
コロナ禍のときのように外出自粛要請が出る、台風・地震などの災害が起きるということも考えられます。こうした非常時でも、テレワーク環境が整っていれば業務の継続が可能です。
たとえば、大型台風が直撃するときには従業員を出社させず、テレワークに切り替えるという意思決定もできるでしょう。従業員の安全を優先させつつ、業務が滞るリスクも回避できます。
とはいえ、いつ非常事態が起こるかは予測できません。何かが起こってから動こうとしても、体制構築がうまくいかないでしょう。来たる日に備えて、テレワーク環境を構築しておくことでメリットが得られます。
テレワークでコスト削減する際の注意点
テレワークの導入でコスト削減のほか、さまざまなメリットを受けられます。しかし、コスト削減を目的にする場合には注意が必要です。留意しておきたい注意点を2つ紹介します。
テレワーク環境を整えるための初期コストはかかる
テレワークの実施によって、通勤費用やオフィスの賃料などをはじめとするコスト削減が実現しやすいです。
しかし、念頭に置いておきたいのがテレワーク導入の初期コスト。初期段階にかかるコストを見積もり、計画に入れておくことを忘れてはなりません。
テレワーク導入初期に発生しやすいコスト
従業員が使うパソコンや周辺機器
自宅のインターネット環境構築
業務報告に使うチャットシステム、オンライン会議システムなどITツールの導入
情報流出を防ぐためのセキュリティ強化
このほかにも、テレワークを効率的に進めるための業務内容の見直しや、体制構築にかかる工数なども初期コストになるでしょう。
費用面・時間面で初期段階のコストはかかりますが、これから運用していくなかで削減できるもののほうが大きいです。「テレワークの導入に費用がかかるから」と見送るのではなく、長期的な視点でコスト削減できるメリットに目を向けていきましょう。
消耗品代やインターネット代を従業員に負担させない
出社していないとはいえ、テレワーク中は業務をしています。業務に必要な備品や通信費などを従業員に負担させないように注意しましょう。
また、テレワークによって自宅の電気代や水道代が出社時と比べて高額になる可能性もあります。従業員の経済的負担が増え、生活に影響を及ぼさないよう配慮が必要です。
これらの対策には、購入した備品は経費精算できるようにする、対象者にテレワーク手当を支給するなどの方法が挙げられます。テレワークを継続していくためにも、企業として適切な支援を実施していきましょう。
テレワークでコスト削減できた企業事例3選
「テレワークのコスト削減事例を知りたい」と思う方もいるのではないでしょうか。ここでは3社の事例を紹介するので、取り組みの参考にしてください。
【事例1】株式会社オリコミサービス
株式会社オリコミサービスは、新聞折込広告を中心とした広告会社です。
同社では、賃貸借契約の満了時期にあわせてオフィスの移転プロジェクトがスタートしました。コロナ禍の影響でオフィスへの出社率が半分ほどになっていたため、面積を減らし、賃料のコスト削減を検討し始めました。
複数の部署から7名ほどの従業員を集め、プロジェクトチームを発足。リモートワークとの併用で「働き方をどう変えるのか」を重点的に検討しました。
出社率のデータを取り、オフィスに必要な座席を決めたそうです。広い会議室が不要になった分、個室を増やしています。フリーアドレス制を採用し、固定電話やキャビネットの数も削減できました。
その結果、オフィスの面積を約200坪から約100坪へ抑えることに成功。賃料の削減はもちろん、従業員のデジタルスキル向上やコミュニケーションの質の高まりも実感されています。
【事例2】株式会社PIGNUS
株式会社PIGNUSは、Webマーケティング事業をおこなうスタートアップです。従業員数の増加に伴い、オフィスの手狭さが課題になっていました。広さの確保やオフィスの移転コスト・運用コストを抑えられるように検討を重ねたそうです。
今後の増員計画をベースに余裕のある執務スペースを確保するには、従業員1人あたり2.4坪前後が必要という試算が出たため、300坪程度のオフィスを探すことになりました。従業員が出社しても会議室の数が少なく、取り合いが発生したこともあったので、移転と同時に解消しています。
移転を希望していた場所は外苑前から麹町エリア。しかし、300坪の面積を確保しようとすると賃料が高くなり、さらに古い雑居ビルしか見つかりませんでした。オフィスの選定が難航していたタイミングでHATARABAに相談し、これまで見つけることのできなかった理想の物件に決定できたそうです。
オフィスの移転後は、チームのミッションや仕事内容によって、従業員が出社かテレワークを選択できるようになっています。独創的な内装のオフィスに生まれ変わり、従業員のコミュニケーション活性化に寄与しているそうです。
【事例3】ベルフェイス株式会社
ベルフェイス株式会社は、電話面談システム「bellFace」を提供しています。
コロナ禍の影響で2年半の間、オフィスの座席を20席に減らし、原則出社なしのフルリモート体制で業務をしていました。テレワークのメリットを感じていた一方、従業員同士の偶発的なコミュニケーションや信頼関係を構築する難しさが課題になっていたそうです。
従業員の気持ちや体調の変化に気付けず、離職につながったケースも出てきたことから、コミュニケーションの取れるオフィスが必要だという判断に至りました。
オフィスの規模は、従業員の7割が出社しても座れるスペースを検討。執務スペースに80~100席は確保できるオフィスを探したそうです。
スタートアップは組織の拡大スピードが読めないため、同じ規模のオフィスに長く居続けられません。今回は入居期間に3年の縛りがある物件を選択し、賃料を安く抑えることに成功しました。
オフィス家具にリユース品を使ったところでも、コスト削減に貢献しています。
移転後のオフィスでは偶発的なコミュニケーションが取れるよう、ミーティングや雑談ができるスペースを増やしました。働きやすいオフィス環境にするため、従業員から要望の声が上がることも増えているそうです。
まとめ
テレワークで削減できる費用やコスト削減時の注意点、企業事例などを解説しました。テレワークを導入することで、通勤や業務にかかる交通費、書類の印刷代、オフィスの賃料などを削減できます。
コスト削減できるメリットがある一方、導入に初期費用がかかることや備品などの経費を従業員に負担させないなどの注意点も忘れないようにしましょう。
実際に、テレワークによって賃料の削減に成功、出社とテレワークのハイブリッド型でコスト削減が実現できている企業があります。長期的な視点でのコスト削減を目指し、テレワークを取り入れてみてはいかがでしょうか。
とはいえ、企業によってオフィスの課題は異なり、テレワークを導入すればコスト削減できると言い切れない部分もあります。
自社のオフィス課題を可視化し、コスト削減できる方法を探すには、「HATARABAサーベイ」をご活用ください。現状におけるオフィスの利用状況を計測・分析し、適正面積やデスク数などを可視化できます。
これからテレワークを導入する企業やハイブリッドワークの働き方を検討している企業の方は、ぜひご相談ください。