「おしゃれなオフィス」や「生産性の高いオフィス」に共通するものは、最新の設備や広い空間だけではありません。オフィス内装デザインの「配色」も鍵を握るポイントです。
色の組み合わせによって集中力やコミュニケーションの活性化、そして企業の印象までが変わります。本記事では、目的に応じたオフィスのカラーコーディネートを解説します。
オフィスデザインにおける配色の基本ルール
オフィスデザインは、美しさと心理効果の両立が重要です。空間全体の配色を整えることは、従業員の生産性や組織の一体感を左右する重要な要素となります。ここでは、まず配色の基本ルールを解説します。
配色の黄金比「70:25:5」の法則
では、職種やオフィススペースごとに最適な配色とは、どのようなものでしょうか。
おしゃれで居心地の良いオフィスデザインをつくるには、配色のバランスが重要です。配色の基本として、「70:25:5」の黄金比があります。ベースカラーを70%、メインカラーを25%、アクセントカラー5%の構成割合です。
ベースカラー(70%)は床や壁、天井など空間の広い面積に使う色です。面積が広い部分に使うため、家具と合わせやすい色がおすすめです。白やベージュで清潔感や温かみを演出しましょう。
メインカラー(25%)は空間の印象を決める色です。デスクやキャビネットなど空間の中で目に入りやすい大きな家具やエレメントに使います。
アクセントカラー(5%)は壁面装飾や小物に使う色です。他のエレメントを引き立てる色になります。ブランドカラーを取り入れるのもよいでしょう。
これらの配色バランスでまとめると、空間がすっきりとした印象になります。
床・壁・天井の色の選び方
床・壁・天井は簡単に変えられる部分ではないため、入居や改装の際には家具や照明とのバランスも含めてよく検討しましょう。
天井に明るい色を採用すると開放感が生まれます。反対に床を少し暗めにすることで落ち着きと安定感を両立できます。また、グレイッシュトーンの床材は汚れが目立たず、スタイリッシュでおしゃれな印象を保ちやすいのが特徴です。
配色で失敗しないための注意点
彩度の高い色を複数使った空間は活気のある印象になりますが、空間全体にまとまりを出すのは技術が必要です。そのため、誰でも取り入れやすく整った印象にするには、オフィスで使用する色を3〜4色以内に抑えるのがポイントです。
オフィスの内装は、従業員のモチベーションや生産性にも直結します。従業員が長時間過ごす空間であることを意識し、心理的な快適さを優先しましょう。
【生産性向上編】集中とリラックスを切り替える配色
働く環境には「色」を戦略的に入れることが大切です。ここでは、集中とリラックスを切り替える配色について解説します。色により従業員の心理リズムを整え、生産性の高いオフィスを実現できるでしょう。
「集中を促す」ブルー×グレー
集中力を必要とする業務エリアでは、寒色系の配色が効果的です。特にブルーは「冷静さ」「信頼感」をもたらし、思考を整理しやすくする色として知られています。執務室や会議室に取り入れることで視覚的ノイズが減り、集中できる空間を演出できるでしょう。
壁や床など広い面積に採用する場合、ブルーグレーやスモーキートーンなど落ち着いた色味を選ぶことで長時間の業務でも疲れにくく洗練された空間に仕上がります。
「リラックスを生む」グリーン×ベージュ
休憩スペースやカフェコーナーなどには、自然を感じさせる色合いがおすすめです。
グリーンは心拍数を安定させ、安心感とリラックス効果をもたらします。ベージュや木目調の素材は温かみを与え、ストレス軽減や休息感を高めるのに効果的です。
また、緑や木質の色味は目を休める効果があります。短時間でもリフレッシュできる環境に最適な色といえるでしょう。
リフレッシュスペースについては、以下の記事でも解説しています。
【活性化編】コミュニケーションが生まれる配色
チームワークや創造的なアイデアを生み出すためには、会話が自然と生まれる環境づくりが欠かせません。配色を工夫することで場の空気を明るくし、意見交換が活発になるオフィスを実現できます。
「会話を促す」オレンジ×イエロー
人と人をつなぐ空間には、暖色系の色が有効です。オレンジやイエローは「親しみ」「活気」「社交性」を感じさせ、明るく前向きな印象をつくります。
オレンジやイエローは、会議室や休憩スペースに取り入れると、自然と会話が弾みやすくなるでしょう。彩度の高いオレンジやイエローは、心理的に“話しやすい雰囲気”をつくります。ただし、広い面積に使うと視覚的に負荷がかかるため、5〜10%程度の面積でアクセントとして使うのがポイントです。
「思考を刺激する」ターコイズブルー×ホワイト
ターコイズブルー(青緑)やライトブルーは、冷静さと明るさを兼ね備えた色で発想を柔軟にし、創造的な会話を促す効果があります。
ただ、ターコイズブルー単色では色味が強く、空間全体の調和を保つことが難しくなります。ターコイズブルーは、ホワイトや明るいグレーと組み合わせて使うと色の印象が強くなりすぎず、集中しながらも軽やかに意見交換できる雰囲気を演出できるでしょう。
【ブランディング編】コーポレートカラーを活かす配色
オフィスは、従業員だけでなく来訪者にも印象を与える空間です。コーポレートカラーを戦略的に活用すると、ブランドイメージを体現しながら一体感を演出できます。ここでは、コーポレートカラーの活かし方をまとめました。
「ブランドの価値を伝える」シンボルカラー
オフィスデザインでは、ロゴや名刺だけでなく空間全体にシンボルカラーを取り入れることで、ブランドのイメージを空間全体で表現できます。
受付やエントランスの壁面、サイン、家具などにさりげなくシンボルカラーを使うことで、来訪者に企業のコンセプトを印象づけられるでしょう。従業員にとっても自社ブランドを日常的に感じる場となり、帰属意識や誇りの醸成につながります。
「従業員の共感を生む」トーンバリエーション
同じ企業カラーでも、トーンを調整して使い分けると場所ごとの雰囲気をコントロールできます。
例えば、メインカラーを濃いトーンで受付に、淡いトーンで執務エリアに展開すると、空間全体の統一感を保ちながら企業のイメージも印象づけやすいでしょう。
企業カラーが鮮やかな場合は、グレーやベージュなどの中間色と組み合わせると調和が取れ、落ち着いた印象になります。
【雰囲気改善編】明るくおしゃれな印象をつくる配色
「オフィスが暗く見える」「古く感じる」といった悩みも、配色の見直しで改善できます。ここでは、明るくおしゃれな印象のつくり方をまとめました。
「明るさと清潔感を演出する」ホワイト×ペールトーン
オフィスの印象を明るくするには、ホワイトや淡い色が有効です。ホワイトは光を反射し、空間を広く見せる効果があります。ホワイトだけだと殺風景に感じる場合は、ペールグリーンやペールブルーを差し色に加えるとやわらかい印象になるでしょう。
また、壁や天井に明るい色を採用した場合、家具の色を少しトーンダウンすると、空間全体のバランスが整います。
「居心地を整える」素材感×照明色のコーディネート
空間の雰囲気は、色の他に素材や光にも注目が必要です。木目やファブリックなどの自然素材を取り入れると、空間に温もりとやわらかさが加わり、冷たい印象を抑えます。
照明は昼白色からやや暖色寄りに設定すると、白壁や淡色の家具がやわらかく映え、温かみのある空間に仕上がるでしょう。色・素材・光を整えることで、デザイン性だけでなく心理的な快適さも高まります。
まとめ
オフィスデザインにおける「配色」は、単なる装飾ではなく、働き方を変えるための戦略です。色は人の心理に影響を与え、集中力や創造性、そしてコミュニケーションの質を左右します。
配色を通じて働く人と組織の未来をデザインすることが、これからのオフィスづくりの本質といえるでしょう。