【2025年12月版】オフィス内装工事の考え方が変わった?移転費用を最適化するためのポイント

オフィスでの働き方が大きく変化した昨今、これまで当たり前とされてきた内装工事の進め方やコストの見直しが必要になってきています。特にリモートワークの広がりによるコミュニケーションを意識した職場づくりを代表例として、オフィスリニューアルに必要とされる要素は以前より多様になっています。「どこに投資し、どこを削るべきか」を見極めることが、移転・改装プロジェクト成功の鍵といえるでしょう。

本記事では、内装工事とコスト最適化の新常識を整理し、オフィス移転プロジェクトのポイントを解説します。

オフィスの内装工事費用が想定外?今誰もが感じている現実

どの企業も感じている「想定外の見積もり」

近年、オフィスの内装工事に関わる多くの移転担当者が、「数年前より明らかに費用が高い」「見積もりが予算を大きく超えてしまう」と戸惑いを感じています。

以前の相場感のまま計画を立てると、どうしても予算のズレが生まれやすい状況になっています。この「想定外の見積もり」は特別なケースではなく、移転やリニューアルなど多くの内装工事に共通する課題です。内装工事費用の高騰は、なぜ起きているのでしょうか。

費用高騰の原因は単なる値上げではなく構造的な変化

オフィスにおける内装工事費用の高騰は、単なる値上げではなく、いくつかの要因が重なって起きている流れといえます。世界的な建築資材の高騰や人手不足、物流コストの上昇などの外的要因が背景にあります。

特に、コロナ禍以降はリモートワーク対応の設備や感染対策素材の需要が増え、内装要件そのものが高度化・複雑化しました。また、短納期でオフィスを仕上げたい企業ニーズが増えるにつれ、追加の人件費やスケジュール調整に伴うコストも発生しています。

今起きている変化は、ただ「費用が高くなった」という話ではなく「前提そのものが変わった」という状況です。この視点を持つことで、今後の判断基準がより明確になるでしょう。

内装工事費用を“安く抑える”より“どう付き合うか”

内装工事費用は、無理に削ろうとすると建築資材の品質低下や仕上がり時のトラブル、追加工事といったリスクを招きかねません。まずはこの構造的な変化を冷静に受け止め、「どうすれば限られた予算で最大の効果を得られるか」と、現実を踏まえた計画づくりへと発想を切り替えることが大切です。

レイアウトの工夫によって造作工事を減らしたり、スペースの見直しで不要なエリアを縮小したりと、設計段階での最適化が大きな差を生みます。

オフィス内装費用を決める“工事区分”とは

最適なオフィス内装費用を把握するために、まずは「工事区分」を押さえておくことが大切です。ここでは、その基本的な考え方と見積もりの方法をまとめました。

「A・B・C工事」の違いと、見積もり精査の注意点

オフィスの内装工事は、施工の範囲や費用負担の違いによって「A工事」「B工事」「C工事」の3つに区分されています。

A工事はビルのオーナー側が主体となって行う工事です。主に建物の共用部や基幹設備に関わる部分が対象で、ビルオーナー側が費用を負担します。

B工事はテナント専用部内の防災設備や空調など、ビル全体の設備に関わる工事です。費用はテナントが負担しますが、施工はビルオーナーが指定する業者に限定されます。

C工事はテナントが業者を自由に選定して発注できる領域での工事です。レイアウト変更や家具設置、内装仕上げなど、オフィスデザインに直結する部分が含まれます。

これらの区分を理解した上で、特にコスト最適化の鍵となるのがB工事の計画的な管理です。

例えば、設計段階で電源や空調の移設を極力減らすレイアウトを検討することで、B工事の発生そのものを最小限に抑えることができます。まずは自社の契約でどの工事がどの区分に当たるのかを整理し、「自由に工事を発注できる範囲(C工事)」と「管理が必要な範囲(B工事)」を把握することが、コストを賢くコントロールする第一歩です。

見積もり比較で失敗しないためのポイント

複数の内装業者から見積もりを取る「相見積もり」は、コストを比較検討する上で不可欠です。その際、必ず工事区分(A・B・C工事)ごとの内訳が明記されているかを確認しましょう。総額だけを見てしまうと、ある業者ではB工事費が含まれていなかった、というような後からのトラブルにつながりかねません。

また、各項目の単価や数量が「一式」とまとめられていないかも重要なチェックポイントです。詳細な内訳を提示してくれる業者は、透明性が高く信頼できるパートナーと言えるでしょう。金額の大小だけでなく、その根拠をしっかり比較することが、納得のいく業者選定とプロジェクト成功の鍵となります。

オフィスの内装工事費用をコントロールするための“代替案”とは

高止まりするオフィスの内装工事費用に対し、従来の「コスト削減」だけでは限界があります。ここでは、内装費用を最適化するための効果的な選択肢を紹介します。

「出社率」「稼働率」の見直し

リモートワークやハイブリッドワークを導入する企業では、席が空いたスペースや使用頻度の低い会議室など「使われていない固定費」が発生しがちです。まずは出社率やスペースの稼働率をデータとして可視化し、どれだけのスペースが必要かを把握しましょう。

ポイントは単に面積を「減らす」ことではなく、利用実態に合わせて機能や配置を「整える」発想です。例えば、フリーアドレス化やレイアウト変更を行うだけでもスペース効率が向上し、ランニングコストを圧縮できます。現状を正確に捉えることが無理のないコスト最適化につながるでしょう。

分室やサテライトで“必要な分だけ使う”柔軟なオフィス運用

本社ごと拡張移転し、機能を1カ所に集約する場合は広い面積と内装投資が必要になることから、近年ではオフィスを拡張せずにプロジェクト単位で分室やサテライトオフィスを設ける企業も増えてきています。必要に応じて分室やサテライトオフィスを活用すると、コストをコントロールしやすくなります。集中作業に小規模なサテライトオフィスを使い、会議は本社のみで対応する、といった運用も有効です。

固定のオフィスに依存しない運用は、これからのコスト最適化における重要な選択肢といえるでしょう。ただし、物理的に離れることでのコミュニケーションのしづらさや移動時間の発生といった課題も同時に発生しうるため、分室やサテライトオフィスの開設場所は慎重に行う必要があります。

居抜き・セットアップオフィスの選択

居抜きオフィスは、前の入居者の内装や設備を引き継ぐことができるため、内装工事にかかる初期費用を大幅に削減できる可能性があります。

また、家具やレイアウトがあらかじめ整えられたセットアップオフィスも有効な選択肢です。こちらも内装工事や家具購入のコストと手間を省き、スピーディーに入居できる点が大きな魅力です。

ただし、セットアップオフィスの場合、内装費などが月々の賃料に含まれており、周辺相場に比べて賃料が割高になる傾向があるため注意が必要です。

これらの選択肢は、初期投資を抑えたい企業や短期間での移転を目指す企業に適しています。「初期コスト」と「月々のランニングコスト」のどちらを重視するかという視点で検討しましょう。希望に合う物件は限られるため、あくまで選択肢の一つとして情報収集することをおすすめします。

 レイアウト改善で内装工事費用を最適化する3つの視点

働きやすいオフィスを実現するには、レイアウトの工夫が欠かせません。ここでは、内装費の最適化につながるレイアウト改善の方法を、3つの視点でご紹介します。

①オフィス内の「用途の整理」が鍵になる

オフィス内に個室を増やすほど、間仕切り工事や空調・照明などの設備工事が多くなります。内装費用を抑えるために重要なのが、まず「誰が・どの時間帯に・どのような目的で使うのか」、オフィスの用途を整理することです。使用頻度の低いスペースは、他のスペースとの統合も視野に入れましょう。

オフィスの用途を丁寧に整理すれば、そこまで多くの個室を必要としないケースも多く、その分設備工事を減らせます。結果として、内装費用を無理なく最適化できるでしょう。広さや部屋数といった「量」ではなく「使い方」を基準とすることが、これからのオフィスづくりに求められる視点です。

②家具・什器の選び方ひとつでコストは変わる

家具や什器は、見た目だけで選ぶと想定外のコストが発生します。長期的なコスト削減につなげるためには、耐久性や可搬性を考慮して選びましょう。特に、デスクやパーテーションを可動式にすると後からレイアウトを変えやすく、運用面でも扱いやすくなります。レイアウト変更を業者へ依頼する必要がなくなり、追加の施工費の抑制にもつながるでしょう。

また、オフィス家具に中古品やリユース品を活用するのも効果的な手段です。高品質なブランド家具でも中古市場であれば安く調達できるケースが多く、初期投資を抑えつつ快適性やデザイン性を維持できます。

③ 動線の整理が、余計な工事とムダ時間を減らす

オフィス内の動線設計が複雑だと、パーテーションの増設や床配線の延長などの工数が多く発生し、結果として工事費がかさみます。

また内装工事費用だけでなく、日々の働きやすさにも大きく影響します。アクセスしにくい動線は、人の動きが複雑になったり移動に時間がかかったりと、生産性の低下にもつながりかねません。

通路やエリア配置をシンプルに整えるだけで、工事範囲を最小限に抑えられ、工期短縮や費用削減につながります。オフィス内の移動がスムーズになると業務効率の向上にも効果的です。

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まとめ

オフィス内装工事に正解はありません。どのようなオフィスを選び、どう使いこなすかが企業の個性と柔軟性を映し出します。分室化やレイアウトの最適化、既存スペースの再活用など、コストを賢く調整する工夫は数多く存在します。

内装工事を単なる支出として捉えるのではなく、生産性を高める「投資」として向き合うことが重要です。そのためには、時代に合わせてオフィスのあり方をアップデートし、移転費用を最適化することが、企業の成長につながる第一歩となるでしょう。

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この記事を書いた人

HATARABAコラム編集部

HATARABAコラム編集部によるコラムです。オフィス移転やオフィスづくりなど、『はたらく場所を、もっとよくする。』ためのお役立ち情報を発信しています。

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