SDGs(持続可能な開発目標)が2030年までの国際目標として国際連合で採択されたことで、日本の企業でも環境に配慮した取り組みに関心が高まっています。
しかし、SDGsの17の目標は幅広いため「自社はどこから着手できるだろうか」「大がかりな取り組みが必要なのか」と悩まれることも多いのではないでしょうか?
本記事では、企業のオフィスでSDGsを実践するメリットや具体的なアイデアについて紹介します。SDGsの目標達成に向けて、自社でも取り組みを始めたいと考えている方は、ぜひご一読ください。
SDGs、企業はどれくらい導入している?
帝国データバンクが実施した「SDGsに関する企業の意識調査(2022年)」によると、SDGsの「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」と回答した企業は23.6%。「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」は28.6%でした。
半数以上がSDGsに前向きな姿勢を見せており、約2割の企業では積極的に取り組まれています。
しかし「言葉は知っていて意味もしくは重要性を理解できるが、取り組んでいない」と回答した企業は35.9%にものぼります。取り組む内容がわからなかったり、設備投資などにコストを割けず、実践できていない企業があるのも事実です。
日本の企業におけるSDGsへの取り組みは、今後ますます重要視され、広がりを見せていくと言えるでしょう。
オフィスでSDGsに取り組む3つのメリット
オフィスでSDGsに取り組むとどのようなメリットが得られるのでしょうか。3つの視点で解説します
【メリット1】コスト削減が見込める
節電やペーパーレス化など、これまでかかっていたリソースを削減することでSDGsの取り組みにつながり、さらにコストの縮小も期待できます。
たとえば、オフィスで節電を実践すると、発電に必要な二酸化炭素の排出量を削減できるため、温暖化や気候変動の対策につながる上、電気代を抑えられます。ペーパーレス化を実現できれば、原材料となる木を守り、森林破壊を食い止めることも可能な上、用紙代・印刷コストなども削減できます。
環境に配慮した取り組みができると同時に、コスト削減が見込める点は企業にとって大きなメリットになるでしょう。
【メリット2】企業価値を高められる
オフィスでのSDGsの取り組みを発信することで、企業価値の向上につながります。企業として社会的責任を果たしていると認知され、企業ブランドのイメージ向上が期待できます。
株式会社電通が実施した、第5回「SDGsに関する生活者調査」によると、「積極的にSDGsに取り組む企業のイメージ」として以下の回答が上位になりました。
ーイメージが良くなる:40.0%
ー好感が持てる/応援したくなる:35.2%
ー信頼がおける:26.6%
企業そのもののイメージ向上だけではなく、提供する商品やサービスについても好印象を抱き、利用意向が高まるとわかっています。
【メリット3】採用活動での差別化につながる
SDGsへの取り組みは、採用活動において他社と差別化を図ることにもつながります。なぜなら、求職者の中にはSDGsの取り組みや社会貢献活動に注目して企業を探す人もいるからです。
ジェンダーへの配慮や働きがい、環境に対する取り組みなどのアピールが有効にできれば採用希望者が増加し優秀な人材確保が期待できます。
オフィスに関連する8つのSDGs目標
SDGsには17の目標が設定されています。そのうち、オフィスに関連性の高いSDGsの目標は以下の8つです。
ー目標5:ジェンダー平等を実現しよう
ー目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
ー目標8:働きがいも 経済成長も
ー目標11:住み続けられるまちづくりを
ー目標12:つくる責任 つかう責任
ー目標13:気候変動に具体的な対策を
ー目標14:海の豊かさを守ろう
ー目標15:陸の豊かさも守ろう
イメージしやすいのは電気などのエネルギーに関することですが、ジェンダー平等や働きがい、住み続けられるまちづくりなどの目標もオフィスで対策が可能です。
ジェンダーへの取り組み事例としてトイレを男女だけではなく「every one 」として個室を設置するような取り組み事例があります。
オフィスでSDGsに取り組む3つのポイント
オフィスでSDGsを推進する際に知っておきたいポイントは次の3点です。
【ポイント1】小さなことから始める
SDGsへの取り組みは小さなこと、すぐに始められることから着手することをおすすめします。
「自社も何とかしてSDGsの目標に貢献しなくては」「企業の果たすべき役割は大きいから、大々的に取り組みを実行しなくては」と企業として社会的責任を果たしていくためには、大きな取り組みをしなければならないと考えがちです。
しかし仮にいきなり大きな設備投資をした場合、失敗した時の経済的損失が膨大になりかねません。また、現場の声を考慮せずに取り組みを行うことで社員の不満を招く可能性もあります。
リスク・コストの低い小さな取り組みであっても、一つひとつが積み重なることでSDGsへの貢献につながります。
【ポイント2】自社で取り組む意義を明確にし、社員からの理解を得る
オフィスに関連するSDGsの目標にはさまざまなものがあり、企業によって達成したい項目は異なります。そのため、自社では何に重点を置いてSDGsに取り組むのかを明確にしましょう。
あれこれ取り組もうとすると実践した成果が見えづらくなるため、優先順位をつけて取り組むことが重要です。
また社員の中には、SDGsへの理解が浅い人がいる可能性もあります。SDGsの基礎知識や自社で取り組まなければならない理由がわかっていないと、スムーズな推進は叶いません。
そのため、自社で実施する取り組みに関心を持ってもらえるように、目標を明確にしたうえで社員にわかりやすく説明することも重要です。
取り組みが軌道に乗ってきたら、社員からSDGsにつながるアイデアを募り、成果の情報共有などをするとより積極的な参加を促せるかもしれません。
【ポイント3】オフィスのSDGs化をサポートする補助金を活用する
SDGsを推進するオフィスや事業所が活用できる補助金があります。補助金で資金面の支援を受けられれば、叶えられないと思っていたSDGs化が実現に近づきます。
それでは、オフィスのSDGs化をサポートする補助金の一例を見ていきましょう。なお、令和4年度の情報を元にしているため、最新の公募要領を確認するようにしてください。
環境省の「脱炭素化事業」の一環。太陽光発電設備・蓄電池の導入支援により、再生可能エネルギーの最大化や防災時の回復力強化を図ります。
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進に取り組む中小企業を支援する助成金です。
厚生労働省の産業保健活動総合支援事業の一環。メンタルヘルス対策促進員の支援を受けて、心の健康づくりを計画・対策を実施した場合に、費用の助成が受けられます。
中小企業や小規模事業者に対し、生産性向上のための会計ソフト・受発注ソフトなどのITツールを導入する経費の一部を支援しています。
上記のほかにも、各自治体でオフィス・事業所のエネルギー効率化や環境保全を促進するための補助金を用意しているところもあります。環境に配慮した取り組みをしているオフィスを「エコオフィス」などとして認定・表彰する制度も実施されているため、該当するものがないか確認してみてください。
また、事業再構築補助金の「グリーン 成長枠 」や、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の「グリーン枠」など、環境に配慮した事業・設備導入を支援する補助金もあります。名称にSDGsと書かれていない場合でも対象になるケースがあるので、確認してみましょう。
当社ではオフィスの固定費削減やオフィスの環境整備に利用できる補助金申請のご支援などオフィスに関するあらゆるご相談を承っております。
SDGsに関する取り組みのご相談も可能なので、ぜひお気軽にお問い合わせください(ご相談は無料です)。
オフィスでSDGsを実践する取り組み例
「オフィスでできるSDGsの取り組みを具体的に知りたい」という方向けに8つの取り組み例を紹介します。ぜひ、自社でできるところから始めていきましょう。
節電などの省エネ対策や再生可能エネルギーを使用する
省エネ対策は、オフィスでも取り組みやすいSDGsです。オフィスで節電できれば、電気代の削減にもつなげられます。
▼具体的な取り組み例
ー使っていない部屋の電気は消す
ーエアコンの温度設定を見直す
ーエアコンや換気扇をメンテナンスして運転エネルギーを削減する
ーLEDや自動消灯できる照明に切り替える
ー複合機を省エネタイプにする
ー電気の使用量を見える化できるスマートメーターを導入する
ー太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用する
実際に、100%再生可能エネルギーを導入したオフィス事例もあります。環境へ配慮したオフィスづくりに取り組みたい方は、併せてご一読ください。
【事例】「サステナビリティ」が根付くアニエスベーのオフィス
1975年のブランド設立当初よりアニエスベーに根付く「サステナビリティ」をオフィス空間に体現している事例です。
緑あふれるオフィスのテラスガーデン、自然の素材や廃材、再利用のものなどで作られた内装、自然光を取り込んだ明るい空間、100%再生可能エネルギーを利用したビル。さらには石油由来のボトルを使用しない環境に配慮したウォーターサーバーを設置するなど、SDGsをオフィスに導入するヒントが詰まっています。
プラスチックごみを削減する
オフィスから出るプラスチックごみを削減することで、SDGsの目標達成へつなげます。大きな設備投資なしに実践できる取り組みです。
▼具体的な取り組み例
ーペットボトル・紙コップ・割り箸の利用から、マイボトル・マイカップ・マイ箸など繰り返し使えるものを推奨する
ープラスチック製のストローやスプーンなどを使わないように社員の意識を高める
ー自治体のごみ分別方法に沿ってリサイクルできる仕組みをつくる
業務をペーパーレス化する
書類の印刷に使う紙は木材チップを原材料としているため、ペーパーレス化を推進することで森林保護につながります。まずは無駄な印刷物を減らすところから始めていきましょう。
▼具体的な取り組み例
ーオフィスで使う紙の量を減らす
ー周知事項や会議資料などは、メールやチャットなどのオンラインツールで共有する
ー各種書類を電子化し、クラウド上で確認できる環境を整える
ーオンラインで書類の共有・申請・管理などができるツールを導入する
ペーパーレス化を推進するために新しいシステムを導入する場合、社員に目的やツールの使い方などを説明することが重要です。
防災対策を見直し・強化する
オフィスの防災対策は、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」に当てはまります。
▼具体的な取り組み例
ー地震発生時にオフィスの家具やキャビネットなどが転倒しないように対策する
ーハザードマップで避難場所の確認し、社内周知を徹底する
ー定期的に避難訓練を実施する
ー防災グッズの備蓄と点検をする
ー予備電源を用意する
ー台風や寒波などの影響を最小限に抑えるために、リモートワークができる環境を整えておく
人事評価や制度の改善によって社員のモチベーションが上がり、業務の生産性向上も期待できるでしょう。
オフィスを居抜き退去する
オフィスを退去する際に、原状回復の過程で作りこんだ内装の取り壊しや什器や備品の廃棄などが生じます。移転する際はオフィスをそのままで退去できる「居抜き」を活用することでエコな移転が可能になります。
環境に配慮した備品やオフィス家具を利用する
オフィスで利用する備品や家具なども、SDGsを意識することができます。
▼具体的な取り組み例
ーパッケージにビニールが使われていない商品や、環境に配慮した文具などを選ぶ
ー再生可能な素材やリサイクル材を使用したオフィス家具を選択する
ーオフィス家具のレンタルを活用する
ーメンテナンスや修理を通して長期的に使えるものを選ぶ
働きやすさを重視したオフィス空間にする
業務効率を重視したオフィス空間にすると、社員の生産性向上や働きがいを高められます。オフィスの環境を整えることもSDGsの目標達成に重要です。
▼具体的な取り組み例
ーオフィスのレイアウトを見直す
ー仕事に集中できる執務スペースや柔軟なアイデアを生み出すミーティングスペースなどをつくる
ー自由に休憩し、リフレッシュできるスペースをつくる
ー植物やグリーンウォールの設置でリラックス効果を高める
ー空調や照明を改善する
オフィスに社員の自席を用意しないABWやフリーアドレスなども有効です。フリーアドレスについては、以下の記事をご覧ください。
フリーアドレス導入完全ガイド!検討から失敗しない運用ルール決めまで
SDGsに配慮したオフィスビルを選ぶ
これからオフィスビルへの新規入居や移転を考えているなら、SDGsに配慮したオフィス選びも重要です。環境に配慮した設備のあるビルを選べば、オフィス自体が社会や環境に貢献します。
▼具体的な取り組み例
ー電力の自給自足や環境基準をクリアしたオフィスビルを選ぶ
ーエネルギー効率の高い設備が整った建物を選ぶ
ー自転車や徒歩でも通勤しやすい立地のビルを選ぶ
ーカフェや公園など、近隣にリフレッシュできる場所があるビルを選ぶ
ー窓から自然光が入りやすいオフィスを選ぶ
当社が運営するオフィス物件専用の賃貸検索サイトHATARABAオフィスでは「SDGsに配慮したオフィス」での絞り込みも可能です。
まとめ
オフィスでのSDGsの取り組みを大がかりなものと考えがちですが、小さなところからコストをかけずに始められます。ぜひ、自社で取り組む優先順位を決めて、目標を明確にし取り組める所から取り組んでみてください。
また、働きやすいオフィスの環境づくりや再生可能エネルギーを使えるオフィスビル選びなどもSDGsにつながります。「自社に最適な取組施策を考えたい」「環境に配慮したオフィスビルを探したい」などオフィスの環境整備や新しいオフィス選びに課題をお持ちの方はぜひご相談ください。