最近では、「完全出社」や「出社が基本」という働き方に戻る企業が増えています。リモートワークの普及に伴い、一時的に在宅勤務を導入した企業も多かったものの、現在では「出社回帰」し再びオフィスで働くことを重視する動きが広がっています。
本記事では、出社回帰の背景に加え、出社促進における課題や懸念点を解決するオフィスづくりのポイントについて解説していきます。
出社回帰が加速する背景
リモートワークの普及から一転、オフィスワークを主体とした働き方へとシフトチェンジする企業が増加傾向にある背景には、3つの要因があげられます。
1.ビジネス環境
世界規模で蔓延した新型コロナウイルス感染症は、企業のビジネス環境に変化をもたらしました。
外出自粛要請により普及したリモートワークを通じて、多くの企業が自社の業務管理体制やコミュニケーションにおける課題を再認識し、ウィズコロナ・ポストコロナを見据えた企業力・組織力強化の必要性を感じるようになったのです。
課題解決のための取り組みが求められる中、2023年5月に新型コロナウイルス感染症の位置付けが従来の2類相当から5類へ引き下げられたことは、出社回帰の大きなきっかけとなりました。
感染症対策が緩和されたタイミングでオフィスへの出社を再開することで、ポストコロナ社会における新しい企業・組織文化の再構築を図ろうという動きが活発化したのです。
2.企業の生産性
コロナ禍においては全従業員がフルリモートで働くケースが少なくありませんでしたが、その中で問題視されたことが業務効率や生産性の低下です。
リモートワークにおいては、業務の進捗管理も様々な確認・承認作業もすべてオンラインで行われるため、従業員間の連携がうまくいかず、業務の進行や情報共有がスムーズにいかないといった課題が生じました。
オフィス空間に集合して従業員同士が直に接する方が、意見交換が活発化したり、スピーディーな意思決定が可能になったりといったメリットが多いと感じる企業が増えたことで、出社回帰を促す流れとなったのです。
3.従業員のウェルビーイング
WHO(世界保健機関)は、ウェルビーイングとは「身体的・精神的・社会的にすべて満たされた状態にあること」と定義しています。
コロナ禍を経て、従業員たちが心身ともに満たされた健康な状態で仕事に取り組むことの重要性を多くの企業が再認識したことで、改めて今、従業員のウェルビーイング実現への取り組みに注目が集まっています。
このような流れを受け、職場の安全衛生管理はもちろん、メンタルヘルスや多様なライフスタイル・ライフステージに配慮した働きやすいオフィス環境の整備に注目が集まっており、出社回帰へとつながっているのです。
出典;公益社団法人日本WHO協会のWebサイト(https://japan-who.or.jp/about/who-what/charter/)
出社回帰で考慮すべき3つの課題
様々な効果が期待されている出社回帰ですが、考慮すべき課題があります。ここでは、出社回帰をスムーズに促進していくうえで押さえておくべき3つの課題について解説していきます。
1.コスト
オフィスワークを主体とした働き方には、様々なコストが生じます。
オフィスの賃料や光熱費などの維持管理費の発生に加え、従業員の交通費などの人件費や諸経費が、リモートワーク主体の働き方と比較すると大幅に増えることが考えられます。
2.ワークライフバランス
オフィスワークでは、リモートワークに比べて会社(仕事)に拘束される時間が長くなるため、プライベートとの両立が難しいという課題が生じます。
在宅勤務を含め柔軟性の高い働き方が可能となるリモートワークは、育児や看護・介護などのプライベートと仕事との両立を図りやすいというメリットも。
そのためオフィスワーク主体の働き方に切り替えることで、従業員のワークライフバランスが崩れる可能性があるのです。
3.通勤ストレス
出社回帰に伴う交通機関による移動は、従業員のストレスを増大させる要因となります。
国土交通省が実施した調査では、混雑した鉄道やバスの利用時には、平常時よりもストレス耐性や免疫力が低下し、認知機能にもネガティブな影響を受けている可能性があることが報告されています。
毎日の通勤によるストレスの蓄積は、仕事への意欲・パフォーマンスの低下に加え、精神的・肉体的健康に対してもネガティブな影響を及ぼす恐れがあります。
出典:「国土交通政策研究第55号 交通の健康学的影響に関する研究I」P.x〜ix(国土交通省)
出社回帰で求められる「働く場所」のあり方
出社回帰の動きからは、オフィスに対する意識や求める役割を大きくアップデートし、働く場所としての新たなあり方を構築するという潮流を読み取ることができます。
ここからは、これまでにあげた出社回帰のメリット・デメリットを考慮しつつ、従業員たちが「やっぱりオフィスで働きたい」「出社が楽しみだ」と感じるようなオフィス空間に求められるポイントについて解説していきます。
ハイブリッドワークに対応
ザイマックス総研の研究調査「大都市圏オフィス需要調査2024春」によると、「出社多めのハイブリッドモデル」へ移行、オフィスは拡張トレンド入りし、現在も多くの企業では出社とテレワークを使い分けるハイブリッドワークを継続しているようです。
出社回帰を円滑に進めるためには、働く場所をオフィス一択に限定するのではなく、仕事の内容や従業員の事情に応じて柔軟に働く場所を選ぶことができる環境を整えることが重要です。
社内設備などのハード面と就業ルールや社内規則をはじめとするソフト面の両側から環境を整備することで、従業員の満足度向上が期待できます。
参考:ザイマックス総研「大都市圏オフィス需要調査2024春」
快適なデジタル環境
業務効率を高め、組織内のコミュニケーションの活性化を図るうえで、テクノロジーを活用した社内のデジタル環境整備は欠かせません。
ポイントは、リモートやフレックスタイムで働く従業員のことを想定して、どんな場所でどんな時間に仕事をしても効率的に高品質な仕事が可能となる環境づくりです。
社内外から安全にシステムにアクセスできるネットワーク環境の構築をはじめ、クラウド上で仕事のやり取りが完結するような進行管理ツールやチャットツールの導入などがあげられます。
もちろん、デジタルツールを導入するに伴い、デジタル化に対応した業務フローや社内ルールへの変更も忘れないようにしましょう。
従業員エンゲージメントを高めるデザイン
従業員に出社回帰を促すためには、出社したくなるような魅力的な空間設計が大切です。
昨今のトレンドとしては、多様で柔軟な働き方を会社が推奨していることが実感できるような、従業員のパフォーマンス向上や組織力強化にフォーカスしたデザインを採用する点があげられます。
仕事内容やチームのメンバーによって働く場所を自由に変えることができるABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)型デザインを基本として、多目的スペースやオンライン会議用の個別ブースを設置するなど、目的別に社内のエリアをゾーニングしていくオフィスデザインが主流となっています。
加えて、従業員のウェルビーイングに配慮したリフレッシュスペースやトレーニングルーム、瞑想ルームを設ける企業も増加傾向にあります。
「働きたくなる」空間づくりで出社回帰を促進して、働き方をアップデートしよう!
出社回帰が進む中で、企業は柔軟性や従業員の満足度を考慮した新たな働き方を模索する必要があります。
テクノロジーの活用やハイブリッドワークの推進により、従業員が快適に働ける環境を提供することは、企業全体の生産性や価値向上へもつながっていきます。
自社に適した働きやすい環境を整備するうえでは、豊富な実績とノウハウを持ったオフィス移転のプロによるサポートを受けることで、よりスピーディーかつ的確にオフィスのアップデートを実現することができます。
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