海外のオフィス空間は単なる仕事場ではなく、従業員の創造性を引き出し、快適に働ける場所へと大きく変化しています。今回は、そんな進化したオフィス空間の最新トレンドを、7つの事例と共にご紹介します。
今オフィスデザインが注目されている3つの理由
これまで「仕事をする場所」「働く場所」としてのみの役割を担っていたオフィス空間ですが、世界各国の企業において、デザインにこだわる動きが活発になっています。これほど企業がオフィスデザインにこだわるようになった背景には、主に3つの要素があると考えられます。
1.コロナによる働き方の変化
2020〜2023年春頃までの約3年にわたるパンデミックは、人々の働き方に多大な影響を及ぼしました。外出自粛ムードの中、国内でも都心部の多くの企業がリモートワークを導入したことをきっかけに、在宅勤務と出社を掛け合わせたハイブリッドワークをする人や、オフィスから遠く離れた地方や海外からフルリモートで働く人など、働き方の選択肢が一気に広がりました。
そして、オフィスへの出社が再開できる状況になり、改めてオフィスに求められる役割や機能が再定義されたことで、空間全体を再構築する必要性が高まりました。この働き方の変化による「オフィスの再定義」が、オフィスデザインへの注目度を押し上げている大きな要因の一つとなっているのです。
2.優秀な人材の獲得競争
現代のグローバル企業にとって、優秀な人材を獲得し、定着させることは競争力の鍵となっています。特に労働市場が国際的に流動化する中で、社員が「働きやすい」「魅力的だ」と感じる環境を提供することが、他社との差別化要因になっています。そのため、オフィスデザインは単なる職場の美観を超え、企業ブランドを世界中に体現する重要な戦略として捉えられています。
海外の企業では、オフィスデザインが企業の価値観やビジョンを象徴する手段として機能しています。たとえば、Google(アメリカ・シリコンバレー)の自由な空気感や、Spotify(スウェーデン・ストックホルム)の音楽文化を大切にする姿勢、Unilever(シンガポール)の持続可能性への取り組みは、それぞれのオフィス空間に反映され、候補者が企業の文化や目指す方向性を直感的に理解する一助となっています。
3.企業の競争力強化
魅力的な職場環境は、人材の獲得競争のみならず、マーケットでの競争力も高める効果も期待されています。
オフィスで働く人々が、オフィスに愛着を持ち、仕事にやりがいを感じられるような環境は、従業員エンゲージメントを高め離職率低下に貢献します。従業員たちがいきいきと、かつ効率的に高いパフォーマンスを発揮できることで、クリエイティブなアイデアが生まれやすくなり、組織の一体感も高まります。社内の雰囲気の活性化は、取引先や顧客に対しても良いイメージを与え、これらの様々な効果が連鎖していくことにより、業績向上という結果につながっていくのです。
2024年最新!海外のオフィストレンド7選
オフィスへ出社することによって生まれるポジティブな効果を重視し、出社を促す動きが世界各国で活発化しています。リモートワークに慣れ親しんだ従業員や、貴重な顧客や取引先を惹きつけるための施策は、様々な形でオフィスデザインに反映されており、そのトレンドも少しずつアップデートされています。ここからは、海外で人気が高まっている7つのオフィストレンドを紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
1.ブランディングの表現
企業のブランディングにおいてオフィスデザインは長年定番とされてきましたが、近年では、自社の個性をより強く発信する場としての役割が注目されています。
例えば、コーポレートカラーを活用したオフィスデザインは、企業のブランドイメージを強化し、認知度を高める効果があります。
また、欧米企業ではアートをオフィスに取り入れることが一般的で、これにより創造性を刺激し、新たなアイデアを生み出す環境づくりを目指しています。こうした取り組みは、ブランド価値の向上と従業員のモチベーション向上を両立する手法として注目されています。
2.香る空間
香りは記憶と深く結びつく要素として知られ、近年、企業のブランディング戦略において重要性が増しています。オフィス空間にアロマを取り入れることで、リラックス効果や集中力の向上、リフレッシュ効果など、さまざまなメリットが期待できます。
特に、人の出入りが多いオフィスや、従業員のモチベーション向上を目的とした企業で、香りを活用する取り組みが増加しています。香りは空間に癒しをもたらし、安らぎの場としての価値を高めるだけでなく、従業員の気持ちの安定やストレス解消にも寄与します。
さらに、香りを使った空間デザインは企業のイメージアップにもつながり、顧客満足度の向上にも貢献します。空間に香りを取り入れることで、ブランドイメージを刷新し、企業としての存在感を高めるといった多くの効果が得られるのです。
3.スマートオフィス
2024年は世界規模でスマートオフィスの普及が進み、中でもオフィスビルの建物管理・設備管理にAIを活用したシステムの開発が加速しています。
その一例として、イスラエル発のWINT社の「水」の制御システムがあげられます。マイクロソフトやGoogleなどのオフィスから、ニューヨークのエンパイアステートビルまで、アメリカで幅広い導入実績を重ねている同社のシステムは、建物内の水の流れをAIによりモニタリングし分析することで水漏れなどのトラブルの未然防止と無駄遣いの抑制を実現します。企業のコストを抑制しながらも、資源保護にも貢献することから、高く評価されています。
4.ウッドデザイン
木材が持つ温かみや自然な質感は、従業員の心理的な安定をもたらし、生産性を向上させるとして、木材を活用したオフィスデザインが注目されています。
また木造建築は、地震に強く、温熱環境にも優れているため、従業員のウェルネスに配慮した安全で快適なオフィス空間の実現にも大きく貢献します。さらに、木材は再生可能な資源であり、環境にも優しいという点からサステナブルなオフィスの実現にも欠かせない材料といえるでしょう。
5.ウェルネスオフィス
オフィス内の光や音に配慮し、集中ブースとリフレッシュルームを設けるなど、従業員のウェルネスに配慮したオフィスデザインは、2024年以降さらに進化することが予想されます。
より高度で機能性の高いウェルネスオフィスの広がりを象徴する動きの一つに、「WELL評価・認証制度」を取得する企業の増加があげられます。室内環境デザインが働く人々の生産性に及ぼす影響に着目し、対象の建物内で働く人にとって快適で健康なオフィスを評価する制度である「WELL評価・認証制度」は、空気・水・栄養・光・フィットネス・快適性・心の7つの軸で評価されます。
6.バイオモーフィックデザイン
自然界の形状やパターンを模倣したデザインを指すバイオモーフィックデザインは、従業員の創造性を刺激し、生産性を向上させる効果が期待されるとして、オフィスデザインに取り入れる企業が増えています。
近年人気の高いオフィストレンドとなっている「バイオフィリックデザイン」は、植物・自然光・水・香りなどの自然環境の要素を取り入れることで自然とのつながりを演出する技法であるのに対し、「バイオモーフィックデザイン」は、生物の形態に基づいたデザインを意味し、自然界に存在する形状、パターン、構造などをデザインに取り入れることで、より視覚的に自然の特徴を表現しています。
7.通勤ストレスの軽減
通勤により生じる、従業員へのストレスと自動車などから排出されるCO2は、多くの企業にとってオフィス出社促進を阻む大きな悩みとなってきました。このような課題の解決に向け、従業員により快適でストレスフリーな通勤を実現するための環境整備に取り組む企業が各国で増えています。
代表的な施策として、オフィス内やビルでの駐輪場やEV車の充電スポット設置があげられます。加えてシャワールームなども完備することで、従業員の健康増進に貢献する自転車や徒歩による通勤を促しながら、通勤ストレスと環境負荷の両方の軽減を図ることが可能となるでしょう。
まとめ
オフィスデザインのトレンドを意識することは、単なる流行りを追うだけでなく、企業にとって大きなメリットをもたらします。最新のオフィスデザインには、従業員のモチベーションや生産性、企業イメージの向上など、企業が抱える様々な課題の解決や経営戦略の実行につながる要素が数多く反映されています。
オフィスデザインのトレンドをしっかりと把握し、自社の企業文化や目標に合ったデザインを取り入れることで、より魅力的な職場づくりを実現することができます。
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