賃貸オフィスを借りる際に避けては通れないのが、入居審査です。滞りなく手続きを進め、提出書類にも不備がなく、十分に予算がある場合でも、審査を通過しなければ希望の物件に入居することができません。さらなる会社の成長を期待して実施した新オフィス入居が残念な結果に終わらないように、ポイントを押さえて行動することが大切です。
そこでこの記事では、賃貸オフィスの審査基準や審査を通過するためのコツ、準備しておくべき点などについて解説していきます。オフィス移転を検討中の方や、希望のオフィスへの入居を滞りなく進めたい方に、この記事がお役に立てば幸いです。
賃貸オフィスの審査基準は「信用性」
賃貸オフィスを借りる際に避けては通れないのが、入居審査です。
気に入った賃貸オフィスを見つけたら、入居申込書に必要事項を記入し、謄本や決算書など必要書類を添付して入居申し込みをします。
そして貸主側で入居審査が行われ、貸主の承諾を得れば賃貸契約を結ぶことになります。もし入居審査に落ちてしまったら、たとえ費用を用意したとしても入居できません。では、入居審査でチェックされるのはどのようなことでしょうか?
カギを握るのは、その会社の「信用性」です。
貸主によって審査基準は異なりますが、複数の項目を審査し、総合的に判断を下します。
業種や法人としての支払い能力、代表者の信頼性、連帯保証人の支払い能力、過去の支払い実績、帝国データバンクや民間調査会社などの信用情報、事業としての将来性など、審査項目は多岐にわたります。そのため、「この情報が揃っていれば、必ず審査が通る」と一言で言い表せないのが審査基準です。
例えば業種業態では、単にジャンルを確認するだけではありません。その業種業態から、事務所の使い方やクレームがつきやすいのかどうか、人の出入りが多いかなども判断されます。建物自体の評判にも関わってくることなので、信頼のおける会社であることが求められます。また、将来的に事業成長が見込めるか、破綻する危険性はないかなど、将来性という点でも判断されます。
支払い能力はもちろんのこと、長く付き合い続けるパートナーとして信用できるのかどうか、しっかり見極められているのです。
審査に必要な申し込み書類
審査に必要な申し込み書類は、貸主であるオーナーの考えによりケースバイケースですが、ここでは審査の際の判断基準として重要な事業計画書と決算書を中心に解説していきます。
①事業計画書
新規設立の場合や起業して間もない設立年数の浅い会社の場合、事業としての実績がないため、どうしても審査は厳しくなりがちです。
賃貸オフィスを借りる場合、借りようとしているオフィスで事業を行い、収入を得ることが目的となります。そして、事業で得た収入から毎月の賃料を支払うことになるわけですから、事業そのものが審査対象となります。
しかし事業としての実績がないと、貸主は乏しい材料から入居の可否を判断しなければなりません。
そのため、法人が安定した収益を上げることができるのか、きちんと賃料を支払うことができるのかを判断するために、事業計画書の提出が必要となってきます。
物件オーナーが知りたいことは?
創業間もない企業などの場合、物件オーナーが知りたいことは、割とざっくりとした情報であるケースが多いのです。
どのような人物がどのようなビジネスをするのか
物件の条件に沿っているか
不都合なことがないか
細部まで作り込んだ詳細な事業計画書は必要ありませんが、貸主からの質問に対してきちんと回答できる事業計画書を作成しておき、代表者の経歴書と一緒に提出するといいでしょう。
事業計画書を作成されない方も多いですが、初めて賃貸オフィスを借りる場合は、審査通過のためにも事前に事業計画書を作成しておくことがポイントです。
②決算書
法人としての支払い能力を判断する材料として重要になってくるのは「決算報告書」です。
貸借対照表・損益計算書・販売及び一般管理費の計算内訳の提出を求められることが多いです。特に貸借対照表(バランスシート)は、資本・資産・負債がひと目で分かるので、法人の財政状況を判断する材料として重要になってきます。
法人の規模や社歴の長さにもよりますが、決算書は直近3期分を求められることもあります。収益性が不安定だとテナントとしての信頼性が低いとみなされることもあるので、決算書は審査通過の重要な判断材料となります。
上記「事業計画書」と「決算報告書」以外にも、一般的に入居審査で求められる書類には以下のようなものがあります。
一般的に入居審査で求められる書類
履歴事項全部証明書(通称:会社謄本、法人登記簿謄本)
会社案内や会社のホームページのURL
代表者の運転免許証や健康保険証等など本人確認書類
代表者の経歴書(設立して間もない場合は、これまでの職歴など)
代表者の収入証明書(所得証明書)
※法人名義で契約の場合、代表者が連帯保証人になる可能性が高いため納税証明書
印鑑登録証明書
これらはあくまで一般的に必要となってくる書類です。審査をするために必要な書類は、不動産会社、物件オーナーごとに異なりますので事前に確認しましょう。
特に設立年数の浅い会社の場合、提出できる書類も限られてきます。用意できる書類は、積極的に準備しておきましょう。また物件申込み後、申し込み書類の提出が遅くなると審査が通らない場合もあります。
約束した期日までに提出ができないと心証を悪くすることにもつながりますので、いずれにしても審査書類の準備は余裕を持って行うようにしましょう。当社では入居審査の事前準備についてのアドバイスも行っています。
審査を通過するためのポイント
入居審査の基準は貸主によってさまざまですが、ここでは審査を通過するためのポイントを3つに絞って解説します。
信頼できる仲介業者を選ぶ
新オフィスへの入居は、企業の成長にも関わってくる重要なイベントです。希望の条件に合う物件へ入居するためには、仲介業者選びが大切です。
仲介業者によって取扱い物件の数や種類、オフィス案件への専門性やサポート体制など、それぞれ異なるからです。
仲介業者は慎重に選びましょう。単に希望する物件を紹介してくれるだけでなく、その後の入居審査に関してもアドバイスやサポートをしてくれるのか、物件オーナーとの関係性は構築されているのか、なども業者選びもポイントとなります。
さらに、現場での交渉力や提案力は営業担当者次第です。契約交渉の際に、貸主と借主の間に入って交渉を行うのは、営業担当者だからです。
安心して交渉を任せられる営業担当者を見極めることも、審査通過の大切なポイントです。
貸主による審査の傾向を知る
入居審査の判断基準は、貸主によって異なります。明確に審査基準を設けている場合もあれば、貸主が内覧時に立ち会い借主と直接顔を合わせることで、会った印象や人柄などを重視して判断するというような貸主もいます。
貸主は大きく分けると、2つのパターンに分けられます。個人オーナーと、大手のデベロッパーや管理会社です。
個人オーナーの場合はオーナーの好みが反映されやすく、審査基準もオーナー次第です。設立して間もないベンチャー企業の場合は、どちらかというと個人オーナーのほうが審査を通りやすい傾向にあります。
一方、大手デベロッパーや管理会社の場合は数字を重視し、決算書や帝国データバンクなど民間の調査会社の信用情報をもとに、合理的に審査を行います。
こういった傾向を踏まえて準備をすることで、審査を通過しやすくなります。
審査書類の準備は余裕を持って早めに行う
必要となる審査書類は貸主や不動産会社によって異なりますが、審査書類はなるべく早く用意しておきましょう。申込みをしてから数日以内に申し込み書類提出を求められるケースは多く、書類提出が遅れると、それが理由で入居審査が通らないこともあります。
スムーズに書類が提出されなかったり、書類に不備があったりしたら、貸主に対する印象も悪くなります。特に設立年数の浅い会社の場合は、審査が予想以上に長引く可能性も十分に考えられます。
その結果、新オフィスへの入居スケジュールに遅れが出てしまったら、後味が悪いスタートになってしまいます。
審査書類の準備は余裕を持って行うようにしましょう。審査書類だけではなく、オフィス移転に伴う関係官庁へ必要な届け出も併せて確認を!
まとめ
審査を通過するためのポイントを押さえることで審査は通りやすくなりますが、入居審査がある以上、審査に落ちる可能性も考えなければなりません。
審査に通りやすいからといって、納得行かない物件に甘んじる必要はありませんが、落ちた場合すぐ次の行動に移れるように準備しておくことも大切です。
第2候補、第3候補も視野に入れながら、第1候補の物件に入居できるよう、万全の体制で臨むようにしましょう。
信頼できる仲介業者を利用する、事業内容や利用目的をきちんと説明できるようにする、メール・電話・内覧時など顔を合わせた時の対応に注意を払うといった具合に、最後まで手を抜かず、良い審査結果を勝ち取ることができるように準備を進めてください。