オフィス照明のLDE化は各社で進んでいます。ランニングコストの軽減に加え、省エネにもつながるからです。今やオフィスはもちろん、家庭用の照明もLED化が加速していますが、コストや注意点を把握し、計画性を持つことが大切です。ここでは、オフィスのLED化によるメリットを最大限に生かすために把握すべきことを挙げました。
オフィスの節電対策
現代の企業に求められていることの一つに、環境基準に適合した事業運営という点があります。その取り組みで最も身近なのが省エネ対策です。冷暖房の室温管理の推奨は浸透してきました。同時に工業技術の進化によって登場したのがLED照明で、大きな節電効果をもたらすことで注目されています。
オフィス照明のLED(発光ダイオード)化は業種を問わず、光熱費のランニングコストの軽減になります。
資源エネルギー庁によると、平均的なオフィスビルでは、電力消費の内訳が、空調が48%、照明が24%、パソコンやコピー機などのOA機器が16%と推計されています。
出典・参照:源エネルギー庁:『節電アクション』
空調がほぼ半分を占めているため、照明から目が逸れがちですが、オフィスビルの電力消費のうち、およそ4分の1が照明で利用されると推計されているため、決して目を逸してよい問題ではありません。
特に昼夜を問わず稼働する事業所では、多大な経費の圧縮になります。
オフィスを全面LED化するメリットと注意点
オフィスLED化のメリット
オフィスのLED化は、なんとなく節電に効果があると分かりました。実はLED化に切り替えることによって、「複合的」な節電のメリットもあります。その一方で注意点などもあるので併せて説明します。
電気代の削減
LED照明の最大のメリットは一般的な蛍光灯に比べ、エネルギーの変換効率が高いため、消費電力を抑えることができます。これが直接的な電気代の削減です。
大規模なスーパーや百貨店では、天井にある蛍光灯の照明を間引きして点灯しているケースもあります。2011年3月11日の東日本大震災で深刻な電力不足が起こり、「計画停電」で電力消費を抑制しました。現在ではそんな流れを違う意味で踏襲し、経費の削減効果のため、暗い店舗やオフィスなども多くあります。
薄暗い店内や社内にイライラすることもあります。そんなことも、LED化が進めば、フル点灯しても間引いた蛍光灯よりも、電気代が節約になるケースも出てきます。
もう一つは間接的な電気代の削減という副産物です。照明の電力負荷がLED化で下がり、冷暖房の電力消費が効率化されて負荷が下がるからです。
加えて、LED照明の発熱の低さも見逃せません。蛍光灯などに比べて、発熱温度がかなり低く、夏場の冷房の効きめが良くなります。特にオフィスなど、多くの照明が必要な建物は、その効果も決して小さくありません。
電球の寿命が長く、交換の手間が少ない
オフィスなどの照明のLED化は、長期的な面からもメリットがあります。一般的な蛍光灯に比べて寿命が長いからです。家庭用でも定期的な蛍光灯の交換によって出費がかさみます。オフィスのような広さや規模だと、コストの差もかなり違ってきます。
オフィスや事業所では照明器具の数や点灯時間が、家庭用の照明と比べものにならないほど膨大です。照明の交換サイクルが長くなれば、それだけ多大な経費の節約にもなります。
【照明器具のLED・白熱ランプ・蛍光ランプの寿命比較】
LED(光束維持率70%):約40,000時間
白熱ランプ:1,000~2,000時間
蛍光ランプ:6,000~12,000時間
LED照明の交換の目安は、1日10時間点灯で年間3,000時間の点灯とした場合、約10年です。白熱ランプは毎年の交換が必要で、蛍光灯ランプでも最大で4年半ほどで交換になります。LEDの優位性がいかに高いかが分かります。
環境に優しい
地球を取り巻く環境は近年、厳しくなってきました。四大新興国の目覚ましい工業発展もあります。「BRICS」(ブリクス)と呼ばれるブラジル、ロシア、インド、中国の成長に伴い、地球温暖化の要因になるCO2の排出量が問題になっています。
照明のLED化はCO2削減にも効果的です。目安として40形蛍光灯の場合だと、LED化の照明にすることで60%以上のCO2排出量の削減ができます。高い削減率になることが分かります。
紫外線が含まれない
オフィスなどに使用される蛍光灯であれば基本的に紫外線を含むのですが、LEDには紫外線が含まれていないというメリットもあります。
ただし、人体に影響を与えるほどではないと言われているため、社員の体調を心配して導入を検討する必要はありません。
紫外線が影響を及ぼすのは、展示物や、ポスターなどの社内掲示物です。展示物や社内掲示物は、紫外線の影響で色褪せしてしまうため、社内の照明をLEDにすることで、展示物や社内掲示物の早期劣化を防ぐことができます。
また、意外と知られていないのですが、LEDが紫外線を含まないことで、光に虫が集まってくることもなくなります。
そのため、照明周りに虫の死骸が溜まって汚くなるなどといったこともなくなるでしょう。
低層オフィスなどでは、虫の侵入を防ぐのはどうしても難しいですが、蛍光灯使用時と比較すると虫に気を取られることは少なくなると言えます。
環境省と経済産業省などが2012年に「あかり未来計画」のキャンペーンを実施し、地球温暖化対策で事業(オフィス)と家庭用の照明のLED化を推奨しています。オフィスや家庭の照明のLED化は、政府でも重要な施策に位置付けられています。
オフィスをLED化する際の注意点
オフィス照明のLED化によるメリットは数多くあります。その一方でLED化の導入に向けて、注意点や理解しておくべきこともあります。メリットだけに捉われず、気をつけるべきポイントをしっかり押さえることが大切です。
初期導入コスト
LED照明は電気代の節約になるとともに、寿命が長いのもメリットです。その半面、一般的な蛍光灯ランプに比べて割高になります。家電量販店などで比較すると分かりますが、蛍光灯ランプよりもLEDの方が数倍レベルで高額な価格になっています。
LED照明の切り替えは、家族経営が中心の零細企業なら、負担もかなり限定的です。ただし、フロアが数階にわたるようなオフィス、ビルや建物1棟全てが一つの会社なら、多額の費用がかかります。
経営体力のある企業なら一気に全てのフロアをLED化できます。しかし、設備投資などに費用をあまりかけられない企業もあります。そこで、LED化へ向けて段階的なアプローチも必要です。例えば1年目に1階、2年目に2階……と計画的に行えば、交換時期に一度に多額の費用もかかりません。
もう一点、理解しておくことは、LED化をするために工事が必要になるケースもあることです。状況に応じてLED照明の最大の節電パフォーマンスを引き出すため、安定器のバイパス工事も必要になる場合があります。
直管形と呼ばれるLED照明には主に4種類あります。そのまま従来の蛍光灯のように差し込んで利用するだけで利用できる場合もあります。工事の有無などを電気工事士などの専門家に相談することをおすすめします。
光の照射範囲が狭い
オフィスのLED化に伴い、その特徴を理解しておく必要があります。LED照明は非常に優れた特性を持っていますが、光の照射範囲が一般的な蛍光灯に比べて狭くなります。
【LED・一般電球の照射範囲(角度)】
LED:120~160度
電球型蛍光灯:約260度
一般的な電球:約300度
LED電球は一般的な電球に比べて、照射範囲が約半分になります。このような特性を考えてLED化の導入を検討することが大切です。精密作業をする会社や事業所では、スポット的に一般的な電球を配置するのも方策です。
最近のLED照明は、照射範囲が従来の製品より広くなっているタイプも出ています。年々、技術的な開発が進んでいます。照射範囲が気になるなら、広めのタイプを選択するといいでしょう。
LEDと蛍光灯、実際に導入した際の電気代の違いは?
LED照明と蛍光灯では、実際の電気代などの数値がどのくらい違ってくるのか考察します。状況によって異なるケースもあるので、目安として参考例を挙げました。
一般的な40Wの蛍光灯を1時間点灯すると、約1円になります。1KWh=27円換算で正確には1.08円になります。ある会社では100本の蛍光灯があるとした場合、業務時間10時間で1日あたりで1,000円、1カ月22日間の就業では1カ月で22,000円の電気代(蛍光灯代)です。
この100本の蛍光灯をLED化すれば、60%以上の消費電力が削減されます。1カ月6,800円で年間81.600円となり、電気代を圧縮できます。さらに電球の寿命が約10年で蛍光灯よりも3倍以上あります。
状況によって異なりますが、高額なLED照明も2~3年で元がとれるケースが多いのです。
まとめ
各企業ではオフィス照明のLED化を導入しているケースが年々、増えてきました。環境省、経産省などではエコやエネルギー事業の効率化のため、オフィスや家庭での照明のLED化を積極的に推進しています。LED照明は高額のため、導入の障壁が低いといえませんが、メリットの方がはるかに上回っています。オフィスの移転などをご検討の際は、ぜひLED化もご検討してみてはいかがでしょうか。