オフィスの移転をする際、実際に物件を見学する「内見」は重要です。目で直接、オフィス内部や周辺の状況を確認しておかないと、「希望のレイアウトが実現できなかった」「移転前のオフィスのほうが使い勝手が良かった」などの後悔につながる恐れもあります。
そこで本記事では、オフィスの内見が重要になる理由や内見時に確認しておきたいポイントをチェックリスト形式で解説します。【室内】【共有部】【外観・周辺環境】に分けてお伝えするので、内見に行く前の情報収集としてぜひお役立てください。
また、オフィス選びの失敗を防ぐ「内見チェック表」もご用意しています。無料でダウンロードできますので、内見のポイントをすぐに知りたい方は、こちらもあわせてご活用ください!
オフィス移転時の内見が重要になる理由
オフィス移転時の内見が重要になる理由は、インターネットや資料からの情報確認には限界があるからです。オフィス内の写真が掲載されていても、ほんの一部でしかありません。写っていない箇所にマイナスポイントがある可能性もあります。
また、現地に行ってみることで、ビルの管理状況や周辺環境の詳細が確認できる点も重要なポイントです。
実際に内見してからわかることも多くあるため、しっかり時間を確保した行動が大切です。「リソースがないから内見はしない」「大まかに確認して終わり」といったことがあると、オフィス移転の失敗につながります。
自社に合うオフィスを選んで移転を成功させるには、内見で見るべきポイントを把握しておくことが大切です。見逃しがちな部分もあるので、チェックリストを活用して事前に確認しておきましょう。
オフィス移転時の内見チェックリストをパートごとに解説
オフィス移転時に内見を行うにあたり、重点的にチェックすべきポイントは「室内(専有部分)」「共有部分」「外観・周辺環境」の3つに分けられます。それぞれについて、特に重要なポイントを解説します。
【室内編】内見チェックリスト
オフィスの室内を内見するときには、空間の設計状況を中心に確認します。
室内の広さ・面積
室内の設計状況
空調・照明の位置
電気容量
インターネット環境・電波状況
日当たり
外部からの騒音
移転後のオフィスレイアウトをあらかじめイメージしておき、内見時に実現できそうか確認するようにしましょう。
室内の広さ・面積
既存の従業員や新規採用者の人数も含めて、十分な広さがあるか確認します。オフィスをゾーン分けして執務スペースを用意する場合は、デスク・オフィス家具・業務に必要な機器などを配置する場所が確保できるかチェックしましょう。
オフィス物件の中には室内の面積に含まれているものの、実際には使用できない空間がある場合もあります。図面と照らし合わせながらの確認が大切です。
室内の設計状況
天井の高さや柱・梁の位置などを確認します。
天井の高さは、2.5mがひとつの目安です。これより低い場合は、オフィスに圧迫感が出てしまいます。
柱や梁の位置によっては希望のオフィスレイアウトが実現できないケースもあるため、確認は必須です。
また、防音は維持できるか、パソコンや電話の配線を床に隠せる「フリーアクセスフロア」に対応するかといった点も見ておきましょう。
空調・照明の位置
空調や照明が設置されている位置は、レイアウトにも影響します。
埋め込み式の空調が天井にあることで間仕切りを立てられない、個室の会議室をつくったら照明が足りなくなったなどのケースもあります。物件によっては、簡単に空調や照明を増設できない場合もあるため、確認しておくと安心です。
また、空調は各物件で機器ごとの個別調整ができるのか確認しておくと、快適なオフィス空間につながります。空調の温度設定がビルでの一括管理になっていると、季節によっては暑い・寒いといった不満が従業員から出る可能性があります。
電気容量
オフィスビルでは、各階で使用できる電気容量が決まっている場合が多くあります。あらかじめ、自社のオフィスで必要となる電気容量を把握し、条件を満たす物件なのかチェックしましょう。
インターネット環境・電波状況
見落としがちになるのがインターネット環境や電波の状況確認です。
高速通信ができる光回線の設置有無を確認し、最大通信速度がどの程度出るのか把握しておくことをおすすめします。インターネットの契約内容にもよりますが、十分な速度で通信できないと業務に支障が出ることもあるからです。
また、携帯電話の各キャリアの電波状況も確認しておきましょう。ビルの高さや場所によって、電波が入りづらい場合があります。業務用の携帯電話で連絡を取り合うときや、IT系企業がアプリ開発などをするときに影響が出るかもしれません。
日当たり
日当たりも重要な確認ポイントです。日光を浴びることで、幸せホルモンのセロトニンが分泌しやすくなると言われており、集中力の向上や脳の活性化、精神の安定などの効果が期待できます。そのため、従業員の生産性を考慮した、日当たりの良いオフィス選びが重要です。
しかし、日当たりが良すぎて室内が暑くなると、移転後の電気代にも影響を与えます。ブラインドが設置されていて日当たりの調整が可能か、開閉のできる窓が取り付けられているかといったところも確認しましょう。
外部からの騒音
外部からの騒音は、現地でしか確認できません。
オフィスビルのほとんどは鉄筋コンクリートや鉄骨で建てられているので、上下階の音は気にならないことが多いです。しかし、車や人通りの多い立地だと、外からの騒音が聞こえる場合があります。
人によってうるさいと感じる基準は異なりますが、オフィスの場合は50~60dBが目安です。詳しく計測しておきたいときは、騒音測定器を準備して持っていくと良いでしょう。
【共有部編】内見チェックリスト
オフィスの室内だけではなく、共有部の管理状況も重要です。特に以下の項目について重点的に確認しましょう。
エントランス
エレベーター
トイレ
給湯室
喫煙所
他のテナントが入居しているフロア
セキュリティシステムや警備の有無
ゴミ置き場の場所
エントランス
従業員だけでなく、顧客の出入り口ともなるエントランスは、会社の「顔」にもなる大切な部分です。会社のイメージを損ねないエントランスになっているか、清掃は行き届いているか確認しましょう。
意外と見落としがちなのが、エントランスの時間制限です。物件によっては「何時までにオフィスを出なければならない」という時間制限があります。業務の兼ね合いで夜間に仕事をする場合は不便になるため、確認は必須です。
エレベーター
鏡やガラス、壁に汚れがないか、清潔感があるか確認します。オフィスへの荷物の搬入・搬出がある場合は、十分な広さがあるか確認しておきましょう。
エレベーターは、朝の出勤時や昼休憩時に混み合う可能性があります。稼働台数が少ないと待ち時間が長く、ストレスになることもありますので、混雑状況もヒアリングしておくと安心です。
トイレ
清掃が行き届いており、臭いが気にならないか確認しましょう。また、洋式で温水洗浄便座になっているなど、設備も確認すると従業員から出る不満の声を防げます。
オフィスのトイレは、100坪ごとに1ブースあれば適切です。オフィスの広さに対して数が多すぎる・少なすぎることのないよう数を確認します。
女性の従業員が多い場合は、手洗い場や鏡の数も重視しましょう。トイレ内に化粧直しができるパウダースペースのあるところもあります。
内見時に男性だけで行ってしまうと女性トイレの確認ができないため、女性の社員も連れて行き、中まで確認してもらうことをおすすめします。
給湯室
給湯室の清潔感や設備を確認します。自社だけではなく、他社と共有で使う場合もあるので、しっかり確認しておきましょう。
喫煙所
愛煙家にとって重要視されるのが喫煙所の有無です。各階に設置、屋外まで行かなければならない、全面禁煙などオフィスによって状況は異なります。
場合によっては来訪した顧客が帰り際に立ち寄ることもあるため、清潔感も確認すると良いでしょう。
他のテナントが入居しているフロア
内見する物件は原状回復されていて、きれいな状態(スケルトン)になっています。実際に使われている他のフロアを見ることで、清掃や管理状況もわかり、自社のレイアウトの参考にすることもできます。
セキュリティシステムや警備の有無
ビル全体にセキュリティシステムが導入されているのか、エントランスに警備員が配置されているのかなどを確認します。安心できる環境で業務をするために、確認しておきましょう。
ゴミ置き場
オフィスから出たゴミを回収業者が来るまでの間、置いておく場所を確認します。オフィスビル内にあるのか、一度外に出る必要があるのかチェックしておきましょう。
また、ゴミの回収はオフィスビル側で業者が指定されている場合と、自社で探さなければならないケースがあります。ゴミ置き場の場所のほか、回収方法についても確認が必要です。
【外観・周辺環境編】内見チェックリスト
オフィスビルの外観や周辺環境もチェックすべきポイントです。特に周辺環境は実際に行ってみないとわからない部分が多いので、しっかり現地確認することが大切です。
ビルの外観
ビルに入居しているテナント
ビルの立地・周辺環境
駐車場の有無
ビルの外観
ビルの外観は、自社のイメージを左右します。「従業員や顧客などが抱く自社のイメージに対して、大きなギャップがないか」という視点でチェックしてみましょう。
ビルに入居しているテナント
同じオフィスビルに入居しているテナントを、郵便ポストやビルの案内板などで確認します。どのような企業が何のビジネスをしているのか確認し、自社に不都合はないか検討が必要です。
また、オフィスビルによっては1階にコンビニや飲食店、美容室などが入っている場合があります。入っている店舗により、ビルのイメージも変わります。
今後、入居してくるテナントもあるため、直近の計画や入居条件なども確認しておくとより安心できます。
ビルの立地・周辺環境
立地条件、アクセスは、ビジネスを行ううえで重要なポイントです。たとえば、歓楽街の裏路地にあるような何となく行きづらいと感じるオフィスだと、従業員や顧客に不安を与えます。採用活動にも影響するかもしれません。
立地条件を確認するには、駅からのアクセス、道順のわかりやすさ、人通りの量などをチェックします。実際に徒歩で駅から歩いてみるのもおすすめです。
その際には、近隣の施設もあわせて確認しましょう。
―コンビニ
―郵便局・郵便ポスト
―利用している銀行
―災害時の避難場所
―公園
―飲食店 など
オフィスの移転後、利用する施設や店舗などを確認しておくことで不便さの払拭につながります。
駐車場の有無
社有車の利用や従業員が車で通勤する場合、オフィスビルに併設された駐車場の有無が重要です。ある場合は、空き状況と何台借りられるのか確認します。
併設の駐車場がない場合は、近隣の月極駐車場をオフィス物件と並行して探すなどの対策が必要です。
場合によっては、近隣にあるコインパーキングの場所も確認しておくと良いでしょう。
オフィス移転に向けた内見時の持ち物
上記で紹介したチェックリストをすべて覚えておくのは大変です。頭では把握しているつもりでも抜け漏れが発生する場合があるので、重点的にチェックしたい箇所をメモに書いて持っていくことをおすすめします。
また、内見へ行くときには、以下の持ち物を持っていくと便利です。
1.メモ用紙
2.筆記用具
3.メジャー
4.カメラ(スマートフォン)
5.方位磁石
6.懐中電灯
7.スリッパ
8.間取り図(不動産業者が用意)
特に、気になることを記録しておくメモ用紙と筆記用具、入り口や窓の幅を測るメジャーは必須アイテムです。
カメラを用意してオフィスの室内や共有部分、外観を撮影し、社内で検討する際に役立てます。動画撮影もおすすめです。画質が悪くなければ、スマートフォンのカメラで十分です。方位磁石・懐中電灯もスマートフォンに搭載されていれば代用できます。
スリッパは、改装工事中の物件など床が汚れている場合に必要となるので、100円ショップなどで使い捨てのものを購入しておくと便利です。
オフィス移転時の内見に関するQ&A
オフィス移転時の内見でよくある疑問について回答します。ここでは3つの疑問を見ていきましょう。
オフィスの内見と内覧の違いは?
不動産業界において、内見と内覧は次のように使い分けられています。
―内見:気になる部屋やオフィスを見学すること
―内覧:新築物件の完成を確認すること。また、販売予定の物件を見学するイベント名などでも使われる
不動産業者によって、内見と内覧の境目がなく、同一の意味として使われていることもあります。オフィスを借りる企業側は、特に使い分ける必要はありません。内部の見学をしたいときは「内見をしたい」と依頼しましょう。
事務所探しの場合、内見ポイントは?
事務所探しでも、内見ポイントはこれまでお伝えした内容と同様です。室内、共有部、外観や周辺環境をよく確認して、事務所の運営に合う物件を探してみてください。
ただ小規模な事務所の場合、オフィスの室内にトイレがあり、男女共用という物件もあります。女性社員が多い場合は使いづらいと感じる可能性もあるため、あわせて確認しておくのがおすすめです。
内見以外にオフィス選びのポイントはある?
移転先のオフィス選びは、内見をしたら成功するとは言い切れません。なぜなら、自社に合うオフィスの要件定義や条件交渉など、ほかにも重視したいポイントがあるからです。
オフィス物件の具体的な探し方・選び方は、下記の記事にて解説しています。あわせてご一読ください。
まとめ
賃貸オフィスの内見においてはただ「見学」するのではなく、「自社が思い描くオフィスのレイアウトは実現できるか」「従業員のパフォーマンスや満足度向上が期待できる物件か」「自社のイメージに合うか」といった視点での検討が重要です。
実際に内見しないとわからない部分も多くあります。候補の物件が見つかったら内見をして、気になるポイントを解消しましょう。
当社では、オフィスの移転をトータルサポートする「オフィス移転コンサルティング」を提供しています。移転先の要件定義や物件選定・内見、契約のフォロー、内装構築に至るまでスピーディーに対応可能です。
「オフィスの移転を検討しているけれど、どこから着手すべきか」と感じている方は、ぜひご相談ください。