“はたらく場所の最適化” を目指す株式会社HATARABAは2024年で設立20周年を迎えました。本企画では、周年を迎える企業の代表をお迎えし、これまでの歩みや、これから目指していく未来について対談形式でお話を伺っています。
第3回目は、SNS/インフルエンサー・ファン/コミュニティなど“人”を基軸としたマーケティングのリーディングカンパニーとして、創業から10年間に渡り個人の可能性を広げ、新しい市場を創出してきたリデル株式会社のCEO福田晃一さんにお話を伺いました。常に時代を先取りした価値を提供し続けてきた、その原動力はどこにあるのか。弊社代表 森村が、リデル社の成長要因に迫りました。
日本で“インフルエンサー”という存在を浸透させたい
――まずは、両社の沿革からご紹介ください。
福田
リデルは私にとって2度目の起業です。最初は2000年、20歳の頃で当時は「IT革命」という言葉が流行し、大学生も起業しようとベンチャーサークルが盛り上がっていました。そういった時代の波に乗ったのですが、事業内容や具体的に売りたい製品が決まっていたわけではありませんでした。
そんな中で目にとまったのが、周囲にいた読者モデルをしていた友人たちでした。気にしてみると大学生の界隈では男性も女性もファッション雑誌にでている人がたくさんいて、イベントなどに一緒に行くとファンも集まってくる。小規模ですがこれは「媒体」だと思ったのです。
彼らを活かせば、人が広告メディアとなるマーケティング×芸能プロダクションが作れるのではないかと思ったのです。
当初、業界の先輩方からは「読者モデルって読者なの?モデルなの?中途半端だね」とよく言われましたが、まさに、その価値観を根底から変えたいと思い、「変革は辺境からなる」という理念を持って、読者モデルや個性豊かな文化人などをマネジメントするユニークなプロダクションとしてスタートさせました。また、読者モデルのファン層である女子高生や女子大生向けにマーケティング事業も同時展開し、プロダクションとマーケティングを融合した会社へ進化しました。
しかし、業界の旧習やそれに関する事業に限界を感じ、さらなる成長にはテクノロジーが必要だと考えました。そこで2017年に会社を売却し、デジタルエージェンシーとして設立したリデルを個人で買い取り、現在の会社「リデル」をスタートさせました。
森村
私は2社ほどサラリーマン経験があります。1社目は住宅機材系の専門商社で、2社目は現在のHATARABAと同じようなオフィス仲介事業を展開する会社に入社。そこでオフィス仲介の事業構造に惚れ込みました。ただそこは離職率の高い会社で、オフィス仲介はお客様がリピートすることにより売上も大きくなっていくっていう側面もあるので、当然、社員がすぐ辞めてしまうとお客様が定着しません。よってこのビジネスモデルで、人がちゃんと定着するようになれば、良い会社、良い事業になるのではないかと、27歳の時に起業しました。現在はオフィス仲介を軸に、オフィスの内装、不動産テック関連の三本柱で事業を展開しています。
――リデル社は10周年 HATARABAは20周年を迎えましたが、これまでの中でターニングポイントとなった出来事を教えてください。
福田
以前は既存の業界慣習を変えようと、新しいビジネスモデルに挑戦してきましたが、その市場はあまりにも広大で、波を起こそうとしても、個々の努力で小石を集めるだけでは追いつきません。さらに、少人数で小石を投げ続けるような状況では、いずれ限界が訪れ、疲弊してしまいます。この経験を通じて、労働集約型の仕組みでは持続可能な成果を出すのが難しいと確信しました。
しかし私たちが進めてきた人を中心としたプロダクション業務とタレントのファンに対するマーケティングという事業で獲得した経験と知見を無駄にはできません。
福田
そんな時にアメリカで”インフルエンサー”というキーワードが流行りだしました。日本では当時まだ浸透していない段階ではありましたが、これまで私が進めてきたビジネスと近く、今までやってきたことに再現性を持たせる、いわゆるプラットフォーム化することで知識集約型にシフトし拡大できると判断しました。そこが大きな転換点になりましたね。
――そういった意味では、HATARABAもアナログだった不動産業にテクノロジーを持ち込んだ印象がありますが。
森村
そうですね、現在新たに「HATARABAオフィス」というAIレコメンド付きのオフィス検索サイトを作っています。これまで、20年かけて蓄積してきたオフィスに関するデータやノウハウを取り入れて作られています。オフィスをもっと手軽に検索したい方にも、エージェントと同様のクオリティで提案できるサイトになっています。
一方で、人の重要性も高まっています。”最高のオフィス移転体験”をお客様に提供するためには、担当コンサルタントのホスピタリティや人間性が重要です。そのため、優れた人材を採用し教育を徹底して営業力を高め、チームごとに戦略を考えられる組織作りを進めています。
業務をフロー化し、いち早く“ジョブ型”を導入
――この10年は、テクノロジーの力や働き方に対する価値観が大きく変わった激動の時代ともいえます。その中で、もっとも困難を感じた経験を教えていただけますか。
福田
やはりコロナ禍が最も厳しい時期でした。当時、人事戦略として東京ミッドタウンにオフィス拡大移転を行いましたが、不要不急の外出を控えてリモートワークに移行。家賃コストとコミュニケーションコストが増大する中で、巣ごもりで体験情報を発信できなくなり、インフルエンサーマーケティングが停滞。売り上げが伸び悩みました。外出が制限され、食事や遊びなどの体験の機会がなくなるとSNS自体も不活性で衰退の雰囲気が漂っていました。
――どのように乗り切ったのでしょうか?
福田
まずはコスト削減に取り組みました。オフィス賃料や人件費などの固定費も見直しました。またこのタイミングでクラウドワーカー活用が本格化し、副業や兼業、フリーランスの方々との業務委託契約を進めました。
コロナが明け、オフィスは縮小しましたが社内のコミュニケーションは活性化。足りないリソースをクラウドワーカーとチームアップすることで、多くのプロジェクトを担えるようになりました。そして副業者として社員が戻ってくるケースも増えました。元社員は業務に精通しているため依頼がスムーズで、社員と副業者、さらにはインフルエンサーとの垣根が徐々になくなり、「全員がチームの一員」という感覚が広がっていきましたね。
森村
コロナを機に筋肉質な組織体制になられたんですね。
弊社もコロナ禍の2020年は厳しいスタートとなりました。巷ではオフィス不要説も流れたりと、当時は本当に大変な状況でした。その状況下にあってもできることはやろうと思い、様々なことに取り組みました。新規事業に挑戦したり、社員教育にも一層力を入れました。今では当たり前になっているウェビナーも、この時初めて挑戦しました。
――コロナ禍の過ごし方によって、その後の立ち上がり方が変わってくるのですね。先ほど福田さんがお話しされた「社員の方々が戻ってくる」というエピソードが印象的です。やはり戻ってきやすい環境があるということでしょうか。
福田
業務をすぐに依頼しやすい環境は整えていますね。例えばプレスリリースを書く仕事があったら、初稿を書く人、アイキャッチの画像を作る人、挿絵のインフォグラフィックを作る人、校閲をする人、それを構成し仕上げる人というようにタスクを細分化し、ワークフロー、マニュアル、ガイドラインごと依頼できる体制が社内にあります。新しい業務を依頼する際は、「この業務をお願いします。手順書一式はこちら」と渡せば、誰でもスムーズに作業を進められる環境です。いわゆるジョブ型雇用の方法です。
森村
なるほど。育休後の復帰もしやすそうですよね。
福田
大手企業の方が色んな意味で復帰しやすいと思いますが、一般的な小規模スタートアップ会社のなかでは復帰しやすいと思います。この考え方は、インフルエンサープラットフォームの運用から生まれました。私たちはインフルエンサーに依頼する際、「新商品が出るから投稿して」といった丸投げではなく、業務を細分化して「投稿何日前になりました」「事前チェックお願いします」「投稿後の対応はこちら」といったワークフローをシステム化しています。これも一つの雇用形態だと考えています。
起業時から日本経済の底上げに貢献したいと思い続けてきた
――今後の展望についてお聞かせください。
福田
これまで私たちは、人を基軸としたマーケティングを行ってきました。現在、SNS、インフルエンサーマーケティング、ファン・コミュニティ、生成AIの事業を展開しており、それらはすべて人の影響力を活用するマーケティングです。この仕組みをエコシステムとしてワンパッケージ化して、企業様にご利用いただきたいと思っています。
具体的には、インフルエンサーマーケティングで新規顧客を獲得し、その顧客をコミュニティに招待。ここでは様々な情報交換や相談が行われ、自然にCSが形成されます。その中で得られた課題や知見をAIが学習し、集合知を活かした強力なAIが課題解決をする世界を目指したいです。
このエコシステムを拡大し、日本企業の飛躍を支援することで、経済の底上げに貢献したいと考えています。20歳で事業を起こした時から抱いてきた志を形にする挑戦です。
森村
私たちは、オフィス市場でのリーディングカンパニーを目指します。まずは、オフィス移転コンサルティング会社としてNo.1になります。そして、内装やVR事業などグループをあげてオフィス市場を盛り上げていきたいですね。
――ありがとうございます。最後に、ステークホルダーの皆さんにメッセージをお願いします。
福田
先ほど“困難”について触れましたが、振り返ると笑い話にできるものの、当時は本当に必死でした。今が良い状態だからこそ、困難が成長の糧になったと感じられるのだと思います。困難があるからこそ成長できる。周年を迎える他の企業も同じように感じているのではないでしょうか。難がなければ“無難”で終わってしまいます。困難を乗り越えることで“有り難さ”を感じ、それが成長になり、チャレンジ精神やイノベーションにつながる。変化に挑み続ける企業として価値を提供し続けたいと考えています。
森村
私たちは、「お客様に最高の移転体験を提供する」というミッションを掲げています。ただのオフィス移転ではなく、そのプロセス自体が企業の成長や新たな挑戦のきっかけとなるような価値を提供したいと考えています。
そのために、私たちは豊富な情報と実践的なサポートをご用意しています。お客様ごとの課題に寄り添い解決に向けて最適な移転プランを提案することで、企業の未来に繋がる移転を実現したいと思っています。リデル様のように飛躍を続ける企業の成長を後押しできるよう全力で取り組んでまいります。