近年、企業がオフィスを選ぶ際、立地や賃料に加えて「環境性能」が不可欠な要素として重要性を増しています。持続可能な社会への貢献が求められる風潮の中で、新たなオフィスの在り方として注目を集めているのが「グリーンビルディング」です。
本記事では、グリーンビルディングが選ばれる背景や期待されるメリット、オフィス選びのポイントなどを解説していきますのでぜひ参考にしてください。
グリーンビルディングが注目されている背景

グリーンビルディングが多くの企業から注目されている背景には、現代社会ならではの大きな変化が関係しています。
「環境配慮型オフィス」への関心の高まり
2015年に国連総会にて採択されたSDGsは、企業活動が地球と社会に与える影響を強く意識させる大きなきっかけとなりました。以降企業は、気候変動に代表される地球環境や人権に関する課題に対して、ポジティブなインパクトを生むことを意識するようになります。
さらに、環境・社会・ガバナンスへの取り組みを重視するESG投資の拡大により、スムーズな資金調達や企業の社会的信用の向上を実現させるためには、地球環境への取り組みが不可欠な要素となったことも、グリーンビルディングへの関心の高まりにつながっています。
オフィス戦略としての重要性の高まり
オフィスという場所が従来の「働く場所」から、企業理念を体現しイノベーションを生み出す「経営戦略における重要拠点」へと変化したことも、グリーンビルディングの普及を大きく後押ししています。
企業がグリーンビルディングを採用することは、先進性や社会的責任を果たす姿勢を示すことになります。これは、企業全体のブランド力を高め、結果的に優秀な人材が「ここで働きたい」と感じる要因の一つになり得ます。
さらに、BCP(事業継続計画)の点においても、自家発電設備や水の循環システムを取り入れているグリーンビルディングは、企業のレジリエンス強化に大きく貢献します。
グリーンビルディングとは?

「グリーンビルディング」という名前から、何となく「エコな建築物」というイメージを持たれる方も多いかと思います。ここでは、グリーンビルディングと呼ばれる建築物の特徴や種類について解説していきます。
一般的な建築物との違い
グリーンビルディングとは、建築物の立地から設計・建設・運営・維持管理・改修・解体に至るまで、建築物のライフサイクル全体を通して環境への負荷を最小限に抑え、働く人の健康や快適性・生産性に配慮した建築物を指します。単に省エネな建築物というだけでなく、より広い視点で環境と人への配慮がなされている建築物がグリーンビルディングなのです。
グリーンビルディングに見られる代表的な特徴としては、以下のようなものがあげられます。
再生可能エネルギーや高効率設備
節水型機器や雨水・中水利用システム
リサイクル建材や地産地消建材
自然換気やAIによる空気清浄機能付き自動空調システム
このように、事業活動を通じて利用されるエネルギーや水資源・森林資源の節約と排水や廃棄物の削減に加え、そこで働く人の健康と生産性向上をバランスよく実現する仕組みを有しているという点が、一般的な建築物と大きく異なるグリーンビルディングの特徴なのです。
グリーンビルディングの種類と認証制
グリーンビルディングには、先述の特徴を評価する認証制度があります。一般的に「グリーンビルディング」という呼び名は、世界共通の基準に沿ったものではなく、いくつかある認証制度のいずれかを取得した建築物に対し用いられます。ここでは、代表的な5つの認証制度を紹介します。
LEED
評価対象:建築物の環境性能と持続可能性
特徴:コストと資源の削減、健康促進、クリーンで再生可能なエネルギーの使用推進に重点を置いている
CASBEE
評価対象:建築物の環境性能と環境負荷
特徴:環境負荷低減への配慮、室内の快適性、生物多様性、景観への配慮等の環境品質も含めた建物の環境性能を総合的に評価するシステム
WELL認証(WELL Building Standard)
評価対象:建築物が人の健康と ウェルビーイングに与える影響
特徴:10のコンセプト(空気、水、食物、光、運動、温熱快適性、音、材料、こころ、コミュニティ)で構成され、身体的だけでなく精神的、社会的な健康まで含めて考慮される
BELS
評価対象:建築物省エネルギー性能表示
特徴:建物の省エネ性能が分かりやすく表示される
DBJ Green Building
評価対象:環境・社会へ配慮がなされた不動産物件
特徴:環境・社会への配慮を積極的に行っている不動産物件を支援することを目的としている
このような認証は、優れた環境性能と健康配慮を備えている建築物である証となるため、信頼できるオフィス選びの指標として活用することをおすすめします。
オフィスにグリーンビルディングを選ぶメリット
グリーンビルディングは環境に配慮するだけでなく、企業経営に対しても様々なメリットをもたらします。心身ともに健康に働ける快適なオフィス環境は、従業員の定着率向上に繋がります。そして、組織全体の生産性向上に貢献し、ひいては事業成績の好転にも寄与します。企業価値が高まることで、顧客、取引先、投資家からの信頼獲得にも繋がり、さらなる成長戦略への追い風となっていくことでしょう。
また、エネルギーコストの削減やBCP対策強化といった効果が加わることで、経営リスクを抑制しながら大きく成長軌道を描いていくことが可能となります。このように、グリーンビルディングを選択することは、企業にとって大きな投資効果が期待できる判断となるのです。
グリーンビルディングの選び方・チェックポイント

グリーンビルディングを選定する際は、はじめに目的と優先順位を明確にすることが重要です。これにより、自社のニーズに最も合う物件を効率的に絞り込めます。そのうえで、建物の性能をもとに比較・検討する際には、以下の点が重要な判断基準となります。
1.認証の種類とレベル
グリーンビルディング認証は、第三者機関が建物の環境性能や健康性能を客観的に評価した認証。環境認証や省エネ認証、健康認証などを取得している物件であれば、その基準に基づいてオフィスデザインを行うことで、自社のコンセプトをより明確に表現できるようになります。
2.エネルギー効率
エネルギー効率は、グリーンビルディングの核となる要素の一つであり、長期的なランニングコストに直結。具体的なデータに基づいて確認することで、コスト削減効果を予測しやすくなります。
3.室内環境
従業員が日々過ごすオフィス環境は健康、快適性、生産性に直接影響を与える要因の一つ。CO2濃度やPM2.5を測るモニターシステムなど、快適な温度・空気・照明・音響対策は、従業員満足度向上に繋がります。
4.ビルの管理体制
最新設備やシステムを導入しているグリーンビルディングは、ビルの管理体制がオフィスの快適性・利便性に直結。管理会社のメンテナンス体制はもちろん、グリーンビルディングの運用実績も重要。テナントへの情報開示など、透明性の高い信頼できる管理体制をしっかりとチェックしましょう。
企業の持続可能性を高めるグリーンビルディングオフィスで、未来へ向けた新たな価値創造を加速させよう

グリーンビルディングは単なる環境配慮にとどまらず、企業の持続可能な成長と競争力強化に不可欠な戦略的ツールとして、その重要性がますます高まっています。企業のESG評価を高め、レジリエンスを強化するグリーンビルディングは、変化の激しい現代における生存戦略としても有効な選択肢として、これからも需要が高まるでしょう。