オフィス移転には、旧オフィスの退去から引越し作業、新オフィスの契約、内装構築まで、さまざまな場面で多岐にわたるコストが発生します。
その中で「この請求書はどの勘定科目で仕訳すればよいのだろう」と会計処理に悩む担当者の方も多いのではないでしょうか?
高額な資金が動くオフィス移転だからこそ、経理・総務担当者の責任は重大です。
そこで今回は、オフィス移転時に発生する費用の会計処理を「旧オフィスの退去」「引越し・移転作業」「新オフィスの構築」という三つの段階に分けてわかりやすく解説します。
さらに実務で判断に迷いやすい、以下の複雑なケースについても詳しく網羅しています。
・敷金の返還・償却
・内装費用の減価償却
・フリーレント期間の仕訳
正しい会計処理のポイントをマスターして、移転プロジェクトをスムーズに進めましょう。
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【段階別】オフィス移転に伴う費用の勘定科目と会計処理方法
オフィス移転では旧オフィスの退去から新オフィスの構築まで多岐にわたる費用が発生します。ここでは移転プロセスを三つの段階に分け、それぞれの会計処理と代表的な勘定科目をわかりやすく解説します。
旧オフィスの退去にかかる会計処理
旧オフィスを退去する際、最も大きな支出となるのが原状回復費用です。
借りた当時の状態に戻すための工事費用は、原則として修繕費の勘定科目で一括して経費計上します。ただし、原状回復の義務を超えて、工事規模が大きく資産価値を高めると判断される場合は、資本的支出としての計上を検討することもあります。
また、移転に伴い不要になった什器や備品を廃棄する費用は、一般的に雑費や支払手数料として処理します。もし帳簿上未償却の残存価値がある固定資産を廃棄する場合は、固定資産除却損として計上し、適切に帳簿から減額する処理を行いましょう。
引越し・移転作業にかかる会計処理
荷物の搬出入や移転作業に関わる費用は、引越し業者への支払がメインとなります。これらの運搬費用は「荷造り運賃」または「雑費」として計上するのが一般的です。
実務上はどちらの勘定科目を使用しても問題ありませんが、毎期継続して同じ勘定の使用 が経理の原則となります。
また、取引先や顧客へオフィス移転を知らせるための挨拶状の作成費や切手代は「通信費 」、Webサイトの修正費用は「広告宣伝費」として処理します。
ただし、特定の得意先のみに粗品を送る場合は「交際費」に該当する可能性もあるため、費用の目的や送付先に応じて適切に仕分けを行いましょう。
新オフィスの契約・構築にかかる会計処理
退去時に返還される敷金や保証金は「差入保証金(資産)」として計上します。一方、返還されない礼金は、金額が20万円未満なら地代家賃として一括経費にできますが、20万円以上の場合は「長期前払費用」として、原則5年間(契約期間が5年未満の場合は契約期間)で償却します。なお、不動産会社への仲介手数料は、支払手数料として全額経費計上が可能です。
また、新しいオフィスの内装工事費やパーテーションの設置費用などは、金額や耐用年数に応じて、建物や建物附属設備、器具備品として固定資産に計上し、減価償却を行っていくのが基本的なルールとなります。
敷金の会計処理
オフィス移転の際に、もっとも重要な項目の一つが敷金をどう処理するのかということです。
新オフィスの契約で敷金を支払うとき、旧オフィスの解約によって敷金を返却されたとき、そして移転とは直接関係ありませんが、契約期間の中途あるいは更新での一部返還を受けた際の処理についてご紹介します。
敷金等を支払った時の処理
敷金等のうち、契約終了時に返還されるものとして契約した金額は、経費ではなく、あくまでも賃貸人への預け金という扱いになります。
そのため、差入保証金として資産に計上しなくてはなりません。
「差入保証金」とは、敷金や営業保証金として基本的には契約が終了したときに変換される予定のお金のことです。
ちなみに、一般的な住居の場合、敷金は家賃の1〜2ヶ月程度が相場ですが、オフィス物件の場合、敷金は6ヶ月〜1年分程度が相場です。
(例えば、家賃25万円の物件を借りた場合、150〜300万円が敷金として請求されると考えて良いでしょう。)
■変換されない敷金がある?
契約書に「敷金償却」あるいは「敷引き」などと記載されている、敷金等のうち契約終了時に返還されない金額(償却部分)は、税法上の繰延資産となります。つまり、費用として計上できるものです。
- これは、敷金の金額によって以下のように処理が異なります。
- 敷金が20万円以下…支払い時に「長期前払費用」として計上
- 敷金が20万円より多い…支払い時の一度で計上できず、一定期間で平均したもの(償却の考え方)長期前払費用として計上していく。残りは差入保証金に計上する
契約期間の中途または更新で一部返還を受けた時の処理
移転とは直接関係ありませんが、契約期間の中途又は更新に際し、賃料の値下げや経済状況の変化によって、預けている敷金等が一般的な金額と比べて高額になってしまうことがあります。
このような場合、敷金はそもそも「差入保証金」の一部として資産計上されているので、返還を受けても収益や費用には当たりません。
契約の終了により返還を受けた時の処理
契約の終了によって、差入保証金として預けていた敷金等の返還を受けた場合、返還を受けた金額に相当する敷金等を減額します。
つまり、資産計上されていた敷金等と実際に返還を受けた金額が同額であれば、収益も費用も発生しません。
しかし、原状回復を行った場合にその金額を敷金から差し引かれた場合、差し引かれた分の原状回復費用は「修繕費」として経費に計上する必要があります。
内装費用の償却
内装工事は金額が大きいため、設備投資の「減価償却」として処理を行う必要があります。
減価償却の処理に必要な基本の考え方と、耐用年数の考え方について確認しましょう。
減価償却とは
減価償却とは、「設備投資に使った費用を、その年度ではなく複数年度に分散して会計処理を行う」ということです。ざっくり言えば、かかった金額を数年に分けて費用として処理しましょう、ということになります。
(例えば、内装工事に1,200万円かかり、それを5年間で償却するとすれば、毎年240万円が支出項目に計上されるわけです。)
つまり、2年目以降は実際にお金の出入りがあるわけではありませんが、帳簿上は利益が減少するので、税金を軽減できるというメリットがあります。
しかし、当然ながらよく考えて投資しないと、赤字を抱えてしまうリスクもあるので、減価償却についてはよく検討しなくてはなりません。
耐用年数の確認
分散する複数年度の決め方は、「耐用年数」によって決めることになります。
当然、勝手に決められれば自由に節税できることになってしまうので、法律できっちり決められています。
内装工事の場合、賃借期間を耐用年数とするか、賃借期間によらない場合は、概ね10〜15年が耐用年数と考えられています。
参考:東京都主税局の減価償却資産の耐用年数等に関する省令に掲げる耐用年数表
コストシュミレーションならオフィス移転コンサルティング
内装にかかる固定資産税
設計費、仮設工事、管理費、諸経費、値引きは経費にならないので、全体に按分して割り振ります。
運賃、設置費など、内装購入のための費用や、事業共用のための費用は経費ではなく、固定資産の取得価額に含まれる計算です。
フリーレントオフィスの場合の会計処理
最後に、フリーレントオフィスの場合の会計処理についてご紹介します。
フリーレントとは
不動産を借りる際、数カ月分の賃料を無料にするという契約のことをいいます。
ベースの賃料は変えないままで実質賃料を下げることで新規契約を獲得する貸主側のメリットと、初期費用を抑えたい借主側のメリットが一致すればお得な制度です。
■フリーレント期間は仕訳なしとする処理
フリーレント期間の処理はシンプルで、実際の現預金の動きとそろえ、仕訳なしとするパターンが実務でも多く採用されています。
フリーレント期間も仕訳する処理
中途解約にならず、賃貸借期間が決まっている場合は、按分処理が妥当と考えられる場合もあります。
つまり、賃料の総額をフリーレント期間も含む賃貸借期間で按分し、フリーレント期間においても仕訳を切るという方法です。
【物件リクエスト】フリーレントのついたオフィス物件を問い合わせる
まとめ
オフィス移転に関わる会計処理の方法は、実にたくさんあります。複雑になりがちですが、ポイントをしっかり理解し、減価償却になるものと期間、経費にできるものとできないものなどをおさえておきましょう。わからないことは、税理士に確認してみてくださいね!