Sansanのオフィスを舞台に学ぶ、AI時代を生き抜く経営戦略としてのオフィスデザイン―― ITメガベンチャー向け「FMsalon」レポート

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HATARABAでは、企業の成長をファシリティの側面からサポートすべく、担当者同士がリアルな課題や知見を共有し合える招待制のコミュニティイベント「FMsalon」を定期開催しています。
今回は、Sansan株式会社のオフィスで開催した、2026年6月30日の「FMsalon」の模様をレポートします。

AI時代だからこそ、出社文化を維持することに価値がある

イベントには、ITメガベンチャー19社のファシリティ担当者が集結。会場となったSansan株式会社のファシリティマネージャー・加賀谷さんのプレゼンテーションで幕を開けました。

社名を冠した営業AXサービス「Sansan」を祖業とし、働き方を変えるAXサービスを提供する同社。

取引書類の正確なデータ化と管理を実現するデータベースサービス「Contract One」、信憑書類のやり取りをオンライン化して経理作業を効率化する「Bill One」、社内に点在する取引先データを最新かつ正確な状態に補正・統合するデータクオリティマネジメントサービス「Sansan Data Intelligence」など、多様なプラットフォームを展開しています。

従業員数はこの4年間で約1,000名増加し、現在約2,000名。事業の急拡大に伴い、組織も大きくアップデートしています。従業員のワークスタイルも、出社勤務からリモートワーク、さらには出社とリモートワークを併用することで偶発的な出会いの創出をめざすハイブリッドワークへと変化しました。

加賀谷さんは「週3日以上の出社」を基本とし、オフィス・セントリックな働き方について紹介。あわせて、プロダクトや日常業務に積極的にAIを活用する事業方針に触れ、「AIが台頭する時代だからこそ、つながりを大切にするカルチャーに回帰し、人間にしかできない領域を極めたい」という思いが移転決断の背景にあったと語りました。

Sansan株式会社のオフィス見学ツアー

続いて、いくつかのグループに分かれ、実際のオフィス環境を体感するオフィス見学ツアーを行いました。

オフィスのデザインテーマは「Nature」。ゲートから一歩足を踏み入れると、現代的でスタイリッシュなビルの雰囲気から一転、緑豊かな空間が広がります。

出社・退社時に「Park」を横切る動線設計

フロア全体の構成は、28階が交流・来訪者対応、29階以降がオフィスエリア。「Nature」というコンセプトのもと、フラッパーゲートを通ってすぐの メインエリア「Park」には100本以上の生木が置かれ、幅12mの巨大LEDビジョンが季節ごとの自然映像を映し出しています。

こだわりは、もともと単なる通過点の予定だった「Park」に役割を持たせるため、ビル側と相談の上で壁に穴を開けて新たな動線を確保し、出社・退社する社員がこの「Park」を通る設計にした点です。

最短ルートで執務室に向かわせるのではなく、意図的に共有スペースを経由させることで、偶発的な出会いや挨拶が生まれる仕組みをハードウェアから設計していることがわかり、参加者からは感嘆の声が上がりました。

見せることで一体感を生む「ライブオフィス」

エントランス横には、人事・採用部門が実際に働く様子をガラス越しに見学できる「ライブオフィス」が配置されています。面接に訪れた求職者が働くイメージを持ちやすくする仕掛けで、狙い通り入社の動機づけに奏功しているとのこと。

ガラス面には特殊な偏光フィルムが施工されており、室内のモニター画面だけが見えなくなる工夫が施されています。情報漏洩を防ぎ、高いセキュリティを担保しています。 

自然なつながりを生む、日常のすぐ脇にある非日常空間

「Park」内には、定時後に3本まで無料のお酒やソフトドリンクを楽しみながら会話できる「オフィスヨリアイ」のカウンターや、オフィスコンビニ、コーヒーマシンのスペースも。コーヒーを淹れる待ち時間など、業務から少し離れてリラックスできる時間が、部署を超えたタテ・ヨコ・ナナメの繋がりを生んでいます。

課題をテクノロジーでハックする。ファシリティ部門のAI活用術

ツアー後の質疑応答では、参加企業から具体的な運用ルールや課題についての質問が飛び交いました。特に注目を集めたのは、Sansanが独自に内製開発したIT・AIツールです。

会議室の状態を色分け表示してシステム上から直接予約できるほか、特定の社員を検索してその場所を特定したり、座標をコピーしてURLで共有できるツールの説明時には、熱心にメモを取る参加者の姿がありました。会議室の空予約の状況を分析する取り組みへの関心も高く、会議室の運用に課題を抱える企業が多いことが伺われます。

工事費はコロナ禍の2〜3倍。高騰するオフィスマーケットへの対抗策

休憩を挟み、最新のオフィスマーケット動向に関するセッションが行われました。
まずは、HATARABAの丹野が登壇し、市場状況を解説。

東京都内主要5区(基準階300坪以上)の平均賃料が共益費込みで36,256円/坪に達し、コロナ前の最高値を大きく超えて過去最高水準を記録したこと、空室率も約1%台と極めてタイトな市況が続いていることなどを紹介し、物件の供給不足と工事費の高騰が賃料上昇の二大要因であると解説しました。

セッション後は、「再契約の準備・上申の仕方」についての座談会を実施。先に紹介された市場の状況を踏まえた積極的な意見交換が行われていました。

クイズを通じて考える、オフィス設計の理想と現実

続いて、同じくHATARABAの樫平が登壇。オフィス設計とコミュニケーション量にまつわるクイズセッションを展開し、担当者が現場で直面する「理論と現実の違い」の正解を紐解きました。参加者は、その場で回答を入力・送信します。

第1問は、「コミュニケーション量に最も影響する要素」。正解は「物理的距離」であり、同じフロアと異なるフロアでは顔を合わせる頻度が3倍以上異なり、同じフロアと違うビルでは約80倍の差があるというデータを紹介しました。

第2問は、「立ち止まって会話が発生しやすい通路幅」です。正解は、1組が立ち止まって会話していても横をスムーズに通り抜けられる「160cm」。偶発的なコミュニケーションが最も発生しやすいと説明しました。

第3問の「フリーアドレスが機能しなくなる最大の要因」は、多くの企業の共通課題として紹介されました。答えは「仲のいいメンバーで固まる」。心理的安全性を求めて同じチームの近くに毎日座る「見えない固定席化・コミュニティの固定化」に樫平が触れると、あちこちから共感の声が上がりました。

第4問の「フリーアドレスを最も機能させる運用」の正解は「業務別ゾーニング」。執務室・集中ブース・個室ブース・立ち席・リフレッシュスペースなどゾーンごとに業務内容を分けるレイアウト設計が有効であると説明しました。

第5問は「偶発的なコミュニケーションを最大化する設計」で、異なる目的の動線を交差させることで偶発的なコミュニケーションが生まれることを解説。「複合機・会議室・カフェを近接配置」を正解としました。

参加者は大いに盛り上がり、「コミュニケーションを自然発生させる施策の成功と失敗」をテーマにした2度目の座談会では、自社の実例を赤裸々に語る参加者も。ハイブリッドワークが浸透した現代のオフィスに期待される「コミュニケーションの創出」への関心の高さが伺えました。

知見を共有し、共に企業の成長を。FMサロンが紡ぐ担当者同士の絆

イベントの締めくくりには、参加した19社のファシリティ担当者同士による名刺交換と交流会が行われました。

HATARABAでは、今後もオフィス移転の仲介に留まらず、こうした担当者間のリアルなネットワーキングと知見共有の機会を創出することで、企業の次なる成長をファシリティの側面からサポートしてまいります。

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