医療プラットフォーム「ファストドクター」を運営するファストドクター株式会社。コロナ禍で一気に注目を浴びたことで、往診サービスのイメージを持つ方も多いかもしれませんが、それは1つの機能であり、医療相談・オンライン診療サービス・医療機関支援など様々な医療サービスをプラットフォームに展開し、生活者、医療機関、自治体、企業に活用されている会社です。マンションの1室から始まり、新宿、田町のオフィスを経て、恵比寿ガーデンプレイスタワーに移転した同社。
HATARABAは、以前の移転より同社の物件探しのお手伝いをしてきました。今回選んだのは、居抜き物件です。物件選びの条件や移転プロジェクトについて、プロジェクトマネージャーを務めた馬司様、内装デザインのディレクションを担当した広報の田島様にお聞きしました。(以下敬称略)
背景・課題
- ・社員の増加によりキャパシティオーバーになり、全員の出社が不可能に
- ・同じく人数増により会議室不足が課題に
- ・出社ベースの会社のため、通勤のしやすい山手線沿線が第一希望
- ・ゆとりを持てるよう、入居期間をこれまでの2年ではなく3~4年想定である程度広い物件を限られた予算内で探していた
ポイント
- ・居抜き物件を選ぶことで、恵比寿ガーデンプレイスタワーに予算内で入居
- ・入居費、家賃、内装費、退去費まで、すべてのコストを計算して比較検討
- ・使えるものはすべて使い、必要な部分にのみ手を加えることで、コスト減と自社らしさの表現を両立
人数増により全員が同じオフィスに出社できなくなった状況に
皆様の業務内容、今回の移転で担われた役割についてお聞かせください。
馬司
経営管理部のグループ長として、オフィスの全体管理やファシリティ管理を担当しています。総務ですので、内部統制のための規定やルール作りも私の仕事ですね。今回の移転プロジェクトでは、プロジェクトマネージャーを務めました。HATARABAのお二人に協力していただきながら、物件探しから契約まで、一連の業務に携わっています。移転プロジェクトを進めることになったのは、入社1カ月目のことでした。
田島
広報部の副部長として、会社の情報発信を行い、自社の信頼構築やブランディングにつなげるのが主な役割です。会社のコミュニケーションツールのデザインに携わっていることもあり、移転ではオフィスデザインに関わりました。前回の移転でも内装部分にかかわっています。
移転の経緯についてご説明ください。
田島
前のオフィスが2年契約だったので規定路線ではありますが、それよりシンプルにキャパシティ不足でした。想定以上に事業の拡大スピードが速く、前のオフィスは入居1年も立たずにキャパシティオーバーになったんです。Weworkにサテライトオフィスを構えるなど工夫もしましたが、弊社は人が顔を合わせて仕事をすることを重視していることもあって、オフィスが分かれるのはなるべく避けたかったんですよね。
馬司
弊社はまだまだ駆け出しのスタートアップだということもあり、出社をベースとしているんですよ。オフィスで社員が交流することで新たな発想や課題解決のヒントが生まれてくるため、全員が集まることのできる場を重視したいという思いがあるんです。
田島
「Tsunageru Team(つなげるチーム)」というバリューがあるのも弊社の特徴です。弊社ではいろいろな事業がありますが、1つの事業部だけで完結するものは少なく、どこかしらで関わりがあります。同じ空間で仕事をしていれば、他の事業部の情報が自然と入り、それにより相手の事情がわかり、リスペクトにもつながると思っているんですね。相手へのリスペクトが作られれば、自然とコミュニケーションは円滑になるのではないかと。集まっていたほうが視野が広がり、話のスピードも上がるよねということで、オフィスというリアルの場を大切にしています。
必要な広さ、出社しやすい場所が条件。最良な選択は「居抜き物件」でした
物件を探す際、優先したかった条件は何ですか?
馬司
入居期間が2年だと慌ただしいので、今後の事業成長を落ち着いて向き合えるように、3~4年はいられる想定の規模のワンフロアの物件を希望していました。あとは山手線沿線ですね。これは出社ベースの会社として、できるだけ通いやすいところにしたいという思いと、採用面を考えてのことでした。ちなみに、私は物件選定時には知らなかった話なのですが、以前、弊社のCEOが「次は渋谷に行くぞ」と言っていたそうですね。
田島
そうなんです。渋谷に強いこだわりがあったというよりは、バージョンアップすることを伝えるわかりやすいエリアとして「渋谷」を挙げていたのかなと思います。採用的にもキャッチーですしね。ただ、今回、移転プロジェクトを進めるにあたり、あらためて「渋谷で」という指定はありませんでした。結果的に渋谷区に来られたので、有言実行したといえるでしょうか(笑)。
馬司
渋谷エリア、新宿、赤坂、五反田、大井町と、HATARABAのお二人には条件に合う坪数、予算感の物件をいろいろとご紹介いただきました。
HB須藤
馬司様にはかなり多くの物件を内見いただきました。全部で10棟くらいで、1度行った物件をもう1度見に行ったりもしましたね。そこから役員の方々に内見に行っていただく物件を絞り込み、さらに事前下見もしていただきました。
HB新井
馬司様からお話をお聞きし、人員計画も踏まえたうえで、「これぐらいは必要だろう」という物件をご提案しました。
馬司
内見に行ってみて思ったのは、想定人員に対して広さがよくわからないなということでしたね。空っぽの状態で内見すると、「これぐらいで十分入るのでは?」と感じたので、ぱっと見の感覚と実際に必要な面積とにはギャップがあるのだなと感じました。
HB新井
「これぐらいの面積が必要だ」という感覚は割とざくっとしがちなんですよ。そこを数字としてわかりやすくするのも我々の役目です。今回、御社が物件を探しているタイミングはニーズに合致する面積の物件があまりなかったので、その都合上、おのずとエリアが限定されましたね。
そして入居を決められたのが、恵比寿ガーデンプレイスタワーの居抜きオフィスです。どのような経緯でこちらの物件に決められたのでしょうか。
馬司
新井さんからご提案いただいたことがきっかけでしたね。
HB新井
はい。ガーデンプレイスは始め内見物件リストに入っていなかったのですが、ちょうどいい広さの居抜き物件が出たため、内見予定の日に加えさせていただきました。
馬司
役員内見の候補が出揃ったあと、入居費や家賃、内装費、退去費用すべてを出して総コストを比較しました。候補は4つで、実際に役員内見を行ったのは3つでしたね。居抜きは恵比寿ガーデンプレイスタワーのここだけでした。「恵比寿ガーデンプレイスタワー」と聞くと豪華絢爛で家賃も高いのではというイメージがあるのですが、居抜きということもあり、総コストが1番安かったんですよ。そうした理由から、この物件に決まりました。
居抜き物件に移転してみて感じられるメリットは何ですか?
馬司
すでに内装がある状態なわけですから、内見時に抱いた入居後イメージと実際とに大きな乖離がないことですね。空っぽのオフィスだと広さの感覚がつかみにくいと話しましたが、内装を作ったあとに「イメージより狭くなったよね」「パースで想像していたのと違ったよね」といった違和感を抱くこともあると思うんですよ。その違和感がほぼ生じないのは居抜き物件のメリットだと思います。
実際、業務オペレーションを組むためにレイアウトしましたが、ほぼイメージ通りに始動できました。また、役員陣含めて全員が同じものを見ているため、共通認識を持ってオフィス活用の議論ができたのもよかったです。
HB新井
前のテナントさんのときは、一角にトレーニングルームがあるなど、もっと外資的な印象がありましたね。
田島
そうですね。もともと共用部はレンガ調の壁に、天井にはエジソン電球がたくさんあるというブルックリンスタイルでした。それをシンプルな壁と天井に付け替え、家具も入れ替えてもらいました。シンプルにした分、会議室や共用部には遊び心のある照明を取り入れています。
馬司
入居にあたり、今いるこの会議室を含む3つの会議室には手を加えました。もともとはオープンスペースだったのですが、事業の関係上セキュリティを重視しなければならないため、壁で執務エリアと仕切りました。会議室不足から解放されましたね。
田島
でも、本当にそれぐらいですよね。什器も一部はそのまま使っています。執務スペースは、ハニカム構造で机の周囲が壁で仕切られているレイアウトで、弊社のコンセプトとは合わなかったため変更しました。「壁をつくらない」がコンセプトだったので、ディナーテーブルのような長い机を置き、シンプルかつオープンに見通しの良い執務スペースになっています。
その他、新オフィスでこだわった部分はありますか?
田島
ありがたいことに、弊社は勢いのあるスタートアップだと注目していただけているのですが、実際には派手さはなく清貧根性のある倹約家スタートアップで、手作りでどうにかする文化があります。そのため、オフィスに関してもお金をかけて華やかにしようという想定はなく、ごみ箱1つでも使えるものは使っています。居抜き物件を選んだのも、そうした企業風土があってのことなんですね。
田島
そのため、手を加えた部分は最低限で、セキュリティの担保、必要なだけの会議室といった必要条件を満たしたあと、予算の残りで弊社らしいオフィスを目指しました。そもそも、会社のカラーも「華やか」ではないんですよね。医療の会社であることから、わくわくというよりは静けさ、落ち着き、清潔感といったキーワードが弊社にマッチする言葉で、そのキーワードをブルーと白で表しています。また、テックの会社であるという点も弊社の特徴ですが、そこはモダンな印象を与える家具を選ぶところで表現しました。
次の移転までに「恵比寿オフィスだからこその価値創出」を実現したい
移転後、社内外からの反応はいかがですか?
馬司
「ゆったりしたね」と言われますよね。「倉庫ができて段ボールがなくなった」「椅子を引いても当たらない」という言葉も聞きました。
田島
過去は段ボールがお友達状態でしたからね。コロナ禍では酸素濃縮器を避けながら会議をしていたくらい、ものだらけでした。移転後、床が見えるようになったのが大きな変化ですね。
馬司
環境が整ったことで、仕事への集中度が上がった社員もいると思います。あと、振り返ったら社員と話せるのも働きやすさにつながっています。
田島
そうですね。オープンなミーティングスペースで話している内容が断片でもキャッチできたりするなど、オンサイトの価値が見出しやすくなったと思います。オープンスペースはランチの場としても活用されていますね。
今回の移転を振り返ってのご感想、今後の展望をお聞かせください。
田島
私は弊社4つ目のオフィスとなるここを含め、これまでに3つのオフィスを経験しています。どのオフィスでも、そのオフィスなりに会社としてやり遂げたことがあったので、恵比寿でも「ここだからこそ」の価値創出を何かしら実現できると良いですね。人と人の価値創出をサポートするのがオフィスだと思うので、「その力で、これをやり遂げた」という歴史がここで作られればと願います。
馬司
非常に大変でした(笑)。田島さんを含め、たくさんいる関係者一人ひとりが自分事化して関わってくれたからこそ移転プロジェクトを完遂できたと思っています。前職で経験してきた事業部移動やビルを借りて店を作るといったプロジェクトと比べて断然難易度は高かったですが、終えてみた今は楽しかったなと思います。
田島
堅実な社風なので、将来を見据えて定量的に判断し、どこにどう投資するかを見ていく経営戦略に近いところを馬司さんが担ってくれたと思っています。
馬司
「恵比寿だから」といった理由でオフィスを決める会社ではないですからね。数字的な根拠を持って話を進める必要がありました。
HATARABAへのご感想をお聞かせください。
馬司
60ほどあった候補から10数件まで絞り込んでいただき、役員内見の4件を決めるまでの流れが非常にスムーズで、感謝しています。密にコミュニケーションを取っていただけた印象です。
田島
スタートアップあるあるだと思いますが、弊社も変化が激しいんですよね。人数の増加ペースもそうですが、ころころ要望が変わるなか対応していただけて感謝しています。
HB須藤
馬司様との密なコミュニケーションを取れたことが移転を完遂できた大きな要因だったと思っています。頻繁にお電話でやり取りをさせていただいたことで、こちらの認識にずれが生じなかったのだと思います。
田島
何年もお世話になっているので、弊社の文化も理解したうえで先回りの提案や手厚いフォローをいただけたこともありがたかったですね。
馬司
なかなかな無茶ぶりもあったかと思いますが、受け止めて対応してくださったことに感謝しています。新井さんの恵比寿愛も感じられた移転でした。オーナーとも親密にやり取りしてくださっていて、だからこそ物件が出た瞬間に話をいただけたのかなと思っています。
HB新井
恵比寿ガーデンプレイスタワーはこのエリアで非常に好きな物件なので、ご紹介できて私もうれしく思っています。お二人ともフランクにお話ししていただけるお人柄で、今回も非常に楽しかったです。
HB須藤
私は前任者から引き継いで担当させていただいたので、当初はプレッシャーも感じていました。結果、私のなかでこれまでで1番大きな物件への移転のお手伝いができて、個人的に成長できた案件となりました。次の移転でもお役に立てるようがんばりますので、今後もよろしくお願いいたします。
田島
これはHATARABAさんのカルチャーなのかなと感じているのですが、前任者の方もお二人も、皆さんこちらが投げた無茶なボールを必ず受け止めて考えてくれるんですよね。最初から否定をせず、自分事として考えてくださる会社だなと思っていまして、オフィスへの愛があり、会社にとってのオフィスの重要性を理解してくれているからこその寄り添いなのかなと感じています。そうしたオフィス愛を感じられることが、「次も頼みたい」という思いにつながっていくのだと思います。
HB一同
ありがとうございました!
会社概要
- 会社名
- ファストドクター株式会社
- 本店所在地
- 東京都渋谷区恵比寿4丁目20-3恵比寿ガーデンプレイスタワー32階
- 設立
- 2016年8月
- 従業員数
- 220名(正社員 2024年05月現在)
- 移転後坪数
- 約840坪
- 企業URL
- https://fastdoctor.jp/corporate/
- 取材
- 2024年2月
取材・文:卯岡 若菜 撮影:竹井 美砂子