株式会社HATARABAでは、総務担当の方に向けた会員制サロンFMconnectを運営しています。
本記事は、2025年8月22日(金)に古河電気工業株式会社(以下、古河電工)の本社で行われたオフィスツアーの様子についてのレポートです。
FMconnectご参加企業
今回は以下の企業様をはじめとする、9社の総務担当者にご参加いただきました。
・アルフレッサホールディングス株式会社
・オイシックス・ラ・大地株式会社
・大塚製薬株式会社
・JCOM株式会社(ジェイコム)
・損害保険ジャパン株式会社
・東京海上日動火災保険株式会社
・トリドールホールディングス株式会社
・日本たばこ産業株式会社 など (五十音順)
古河電工のオフィスについて
冒頭、総務部長の國枝様よりご挨拶をいただきました。
古河電工の本社は、2021年7月に丸の内仲通りビルから現在の常盤橋タワーへ移転。コロナ禍での移転のため、状況に応じた仕様変更も加わり、「迷いに迷った4年間で、いまだに模索中です」と振り返ります。
総務部の役割について、「会社の成長にどう貢献できるか。そのために社員が生産性を高められる環境を整えることがテーマです」と語られました。國枝様は他社総務との情報交換も積極的に行っており、常盤橋タワー入居企業の総務同士で定期的に集まり、ざっくばらんな交流を続けているそうです。
続いては、総務課長の山田様よりオフィスについてご説明いただきました。
旧本社時代は固定席中心の「ザ・オフィス」スタイル。社員数が増えるにつれ通路が埋まり、効率的な環境かどうか疑問が生じ、自発的に移転の議論が始まったといいます。
「新しい環境に移すなら、コンセプトを明確にしなければ同じことを繰り返してしまう」そうして立ち上げられた移転プロジェクトには約20名が参加。セッションを重ね、出てきたアイデアを絵にまとめ、最終的に掲げられたのが 『MIX OWN COLORS』。
「一人ひとりの個性を色に見立て、それを混ぜ合わせるオフィス」というコンセプトが、プロジェクトを迷わず進める指針になったといいます。
『MIX OWN COLORS』というコンセプトをもとに、次に設定したのが「コラボレーション」「働きがい」「ハイブリッド」という3本の柱です。これらを実現できるオフィスづくりを進めたと山田様は語ります。
「移転を円滑に進めるには、書類削減やICTの導入、運用ルールづくりが欠かせません。その推進役としてプロジェクトチームを編成し、総務部と人材・組織開発部が総括を担いました」
オフィスは業務に合わせて選べるよう、集中ゾーン/コミュニケーションゾーン/リフレッシュゾーンを設置。社員が「ここに来れば会話もできるし、集中もできるし、リフレッシュもできる」と自然に感じられる空間づくりを意識したそうです。
「オフィスは工事が完了して終わりではなく、その後いかに柔軟に変えていけるかが重要です」と強調しました。
移転後も、実際の使われ方に応じて改善を重ねています。例えば、以下の対策を実施しました。
| 課題 | 対策 |
|---|---|
| 個室で声が反響する | 吸音材を追加 |
| 1on1ブースで隣の声が気になる | ブースとブースの間にテレカンブースを配置 |
| ガラス張りの会議室の中まで見えすぎる | 目線の高さに半透明のフィルムを貼付 |
| ガラス張りのイベントスペースでクローズドイベント開催時、外から見え過ぎる | ガラス壁面にカーテンを設置 |
| 内階段での安全のため、左側通行を徹底したい | 階段のカーペットに白線と矢印を織り込むことで通行方向の指示を明確にした |
「改善のためには課題を正しく把握することが大切です」とお話しいただきました。
また、ルールやマニュアルだけでは浸透しにくいことから、ピクトグラムを活用し直感的に理解できる工夫も取り入れています。こうした取り組みにより、毎年行う社員向けアンケートではオフィスに対する満足度88〜90%を維持しているとのことです。
オフィスツアー、スタート!
当日は3つのグループに分かれてツアーを実施。象徴的なエリアをいくつかご紹介します。
16階 エントランス
エントランスの床には、日光事業所で製造された銅線が埋め込まれています。これは、もともと銅の鉱山から始まったという古河電工の歴史を表したもの。
天井の照明は内側から外側に伸びるようなイメージで配置されています。こちらには、「過去から未来へ、明るいイメージにしたい」という思いが込められています。
エントランスにはアロマディフューザーを設置し、ルーツを同じくする古河林業の協力のもとつくられた、杉やヒノキなどのオリジナルブレンドのアロマを香らせています。
協働共創エリア
今回、FMconnectの会場にもなった協働共創エリア。イベントやオープン会議に使われており、部門を超えた話が自然と聞こえてきたり、社内外の交流のきっかけとなったりしています。
こちらは集合場所の目印として設置した時計。場所の名前「パレット」から、筆を模した支柱にしましたが、色味が富士山のようであることから、かえって印象深く覚えられているのだとか。
こちらはドリンクコーナー。コーヒーを作る時間に人と人との交流が生まれるかもしれないと期待して設置したそうですが、「なかなか運用が上手くいかず、試行錯誤中」とのこと。
こちらの本棚には、事業領域に関する書籍だけでなく、ジャンルを問わず様々な本が並んでいます。これは、幅広い情報に触れることでイメージを活性化していただきたいという願いからです。これらの本は、ひとり3冊まで、2週間借りることができます。
こちらの本棚は、「わたしのイチオシ」エリア。会長や社長といった役員陣だけではなく、入社1年目から中堅社員まで、さまざまな社員のおすすめ本が、おすすめした社員のプロフィールと共に並べられています。
執務エリア
こちらが社員の声を受け、後からフィルムシートが貼られたガラス張りの会議室です。オフィスデザインの設計者から「ターコイズ色は発想を豊かにする」と聞き、「ここで柔軟な発想が生まれる会議室に」という思いが込められて、この色が選ばれたそうです。
内階段に至る角には植栽が。これはあえて大回りにさせることで、衝突事故を回避させるという目的があり置かれているものです。
古河電工は工場を有する企業であるため、安全第一の意識が根付いています。そのため本社においても、安全を重視して設置された工夫や、安全面から採用を見送った要素があるといいます。
17階
移転を機に執務フロアの中央に設置したサポートデスク。「何かあればここに相談する」という場所を明確にすることで、社員の不安や疑問を解消することを目的としています。「社員には業務以外のことで悩まずに仕事に邁進してほしい」という総務部の強い思いが、このサポートデスクの設置という形で実現されています。
こちらは、事前説明に出てきた1on1スペースの間にテレカンブースを動かした場所。運用開始後のこうした改善については、「日本人はつい我慢してしまうため、使う過程でいかに意見を吸い上げるかが大事」だといいます。実際に、社員に座り心地を聞き、執務室の椅子を変えたこともあるのだそうです。
こちらは、その場所のルールが一目瞭然のピクトグラムです。各スペースの利用における混乱を避けるため、利用ルールの視覚化をしています。
こちらはビタミンエリア。これまでにいただいた取引先各社の社史が並べられています。営業社員が顧客の事業理解を深めるなどして活用されています。
ビタミンエリアには、くつろぎながら会話ができるスペースも。「ブックカフェのような場所がほしい」という社員の声から生まれたものです。
書店では思いがけない本の情報も自然と入ってきます。その効果を狙い、興味のなかった本にも手を伸ばしてもらえるよう工夫され、さまざまな情報を吸収してもらいたいとの思いから「ビタミンエリア」と名付けられています。
フリーアドレスのため、個人ロッカーを設置。サイネージでは、パーパスやイベント告知、安全に関連する情報などを流しています。コピー機を使用するときなど、目に留まる頻度を高めるため設置したそうです。
こちらは文具など備品置き場。フリーアドレス化に伴い、これまで個人がデスクに置いていた備品を一カ所に集約して共有する運用を開始。そうすることで利用時に人が集まって交流する、あるいは人の流れを生む場所としての機能も持っています。
消耗品置き場には、なくなったときに使うための補充カードも。総務部のアイデアです。
頭の刺激のために置かれているブロック
こちらは集中エリア。窓際の席は予約なしで自由に使え、個室席は予約が必要です。
こちらは一人につき1日30分まで使えるリフレッシュスペース。明るいものに焦点が合うという目の仕組みを活かし、明るい色のカーテン、暗い色のカーテンの二重式とし、外からは中が見えづらく、中からは外が見える仕組みになっています。
18階
内階段は安全第一を考慮し、手すりと幅の細い柵を設置。事故を未然に防ぐための工夫がされています。
18階は他フロアとイメージを一新し野外をイメージしています。『GARDEN』という名前には、アイデアが芽吹き、会話が育つ“場”としての願いが込められています。「会議や打ち合わせが、より自由で創造的なものになるように」そんな思いを形にした空間です。
移転を決めた時点では、フリーアドレスではなく固定席を設置する想定で、GARDENにも机を並べ執務席化する予定でしたが、2020年コロナ禍により出社率が減ることが予想されたため、レイアウトを考え直すことに。
そこで、GARDENには、緑とテントを並べたエリアが設けられ、「自然の中で深呼吸するような感覚が、思考を柔らかくし、対話を豊かにする場」として位置づけられています。
質疑応答
オフィスツアー終了後には、参加者から多くの質問が寄せられました。
座談会
質疑のあとは座談会に移り、「専有面積の考え方」「オフィス内のグリーン」「AI活用」「部門を越えたコミュニケーション」など、多様なテーマで意見交換が行われました。HATARABA側が用意した質問にとどまらず、参加者自身の悩みや実例も共有され、時間いっぱい盛り上がりを見せました。
FMconnectでは、引き続きコンセプトに共感いただける方や、ファシリティ業務に携わる方をお招きしております。