2023年3月で50周年を迎える広告代理店の株式会社オリコミサービス。大正11年に日本初の新聞折込広告を事業化し、その後この事業を継承する新聞折込広告の第一人者。現在は新聞折込だけでなく、アナログ×デジタルを融合させたクロスマーケティング・販売促進なども行う総合広告代理店です。
100周年を迎えるという新聞折込広告事業。一世紀という長い歴史の中で変わらない伝統や想いを守りつつ、変化していく時代に対応した新たな挑戦や働き方の改革。それらをどのようにオフィスに、そして人に吹き込んでいったのか、オフィス移転プロジェクトの中心人物、佐藤様、小松様、坂井様にお話をお聞きしました。(以下敬称略)
背景・課題
- ・賃貸借契約の契約満了。期日までに退去が必要?
- ・リモートワークとの併用、出社率が約半分になったオフィス。
- ・折込広告という紙を扱う会社ならではの課題をどう考える?
ポイント
- ・詳しくヒアリングし、通常の賃貸借契約と判明。
- ・フリーアドレスを導入し、オフィスを半分に。
- ・「作業・保管・交流」オフィスの機能を再定義。
オフィス移転の背景と賃貸借契約について
今回のご移転の背景、理由について教えてください。
佐藤
賃貸借契約の満了で、いついつまでに出ていかないといけないというところから移転の話が出てきました。
期限の縛りがある『定期建物賃貸借契約』というもので、中途解約も更新もできないと聞いていたので、そこに合わせて移転のプロジェクトをスタートさせました。
退去の期限があったので当初はその期日に追われる形で早く決めないと!と急いでいた部分がありました。
移転の経験はこれまでも何度かあるので、まずは物件を押えないといけないということで動いていましたね。オフィスの退去の時期を考えると、早く動けそうな居抜き物件で良さそうなところがあり、話を進めていました。
後はやはりコロナの影響で出社率が半分ほどになったので、同じ広さは必要ないだろうと。コロナの影響が長期化することを考えると賃料のコスト削減も当然検討しなくてはいけない事項でした。
この契約、実は『定期建物賃貸借契約』ではなかったんですよね?
HB椎名
そうなのです。当初、物件の紹介をしていく中で、いくつか辻褄が合わない、疑問に思う部分があり、改めてお話を伺い直したところ、お聞きしていたような制約のないものだということが判明したんです。
焦らず、自社にあう物件をしっかり探しましょう、とアドバイスしました。
オフィスは長期的な視点で考える重要な事柄です。物件をご紹介する中で、我々はオーナーとの長く続くであろう関係性なども考慮しています。オリコミサービス様との相性、と言いますか、単に希望の条件に合う物件を紹介すればいいというものでもないのです。
小松
おっしゃる通りです。当初は期限に追われて動いていて、、、。椎名さんからのアドバイスでゆっくり探せたからこそ出会えた我々にぴったりのビルだと感じています。ビルの名前は「紙パルプ会館」。新聞折込広告を扱っている当社だけにビルの名前まで「やはり紙か?」(笑)と思いました。
自社ビルなのかと思いました。御社にぴったりですね!
小松
お客様からも「新聞折込広告のパイオニアだけにビル名が相応しいですね!」とよく言われます。それぐらい親和性のあるビルということですよね。
ビルの名前を聞いたときに「とことん紙に縁がある」と思いましたね。こちらを紹介いただく前に決まりかけていた物件もあったのですが、色々と調整が上手くいかずどうしようか途方に暮れていました。出ていかないといけない期限はあるし、、、と。ですから椎名さんに契約を確認してもらえて本当に助かりました。最終的に元のオフィスと同じ「銀座」に構えることができたのも、良かったと思います。
佐藤
難しい交渉をこなした上で、最良の選択に導いてくれた事に感謝しています。
HB椎名
そういっていただけて有難いです。幅広く物件を探していましたが、特に銀座は注力して常にアンテナを張っていました。だからこそこちらの物件も公になる前にご紹介ができたのです。
全体の要所でサポート
弊社との出会い、弊社を選んだ理由を教えてください。
小松
当社の役員からの紹介です。異業種交流会で御社の顧問の方を紹介いただいて。お話しを聞いてみたら良さそうだったのでお会いしました。
従来は決まった業者がいて、物件はそちらにお願いしていたんです。ただ、長年当社を担当してくれていたファシリティの方がいなくなってしまって、別の業者さんも検討しないとね、という話になっていたのです。椎名さんの対応はタイムリーでスピード感があります。お世辞ではなく100点満点。悪いところ、足りなかったところはありません。
かゆいところに手が届く、素晴らしい対応でした。質問に+α先読みして答えを用意してくれているんです。対応も細かくて丁寧。こちらに寄り添って動いてくれました。先ほどの契約書の盲点や、設備の細かい部分やこちらが分かっていない細かい部分、不足している認識について適切なアドバイスを必要なタイミングでもらっていました。
佐藤
これまではスキームごとに業者が分かれていました。不動産は不動産会社、レイアウト構築、設備に関してはまた別の業者、といった具合で、1回の移転に多数の業者と当社がそれぞれ絡める感じでした。
今回は椎名さんに、全体を一緒にやってもらったという印象です。物件の紹介だけでなく、交渉事や、設備や内装などについてもアドバイスをもらったり、他の業者さんとの調整をしてくれたり。今までは不動産会社さんは物件を紹介してくれるだけだと思っていたので本当に助かりましたよ。
小松
前のビルの原状回復のコスト圧縮のことや、色々なところで間に入って仲介してくれて心強かったです。
HB椎名
そのような感想をいただき、大変光栄です。
物件の紹介だけではなく、その前後も含めてご移転のサポートをすることが弊社の目指すところです。
オフィスの広さは半分。新しいオフィスへの道のり
移転後のオフィスのイメージもある程度見えていたのでしょうか?
小松
プロジェクトチームを作って時間をかけて検討しました。
在宅勤務が幾分定着し、これからも長期化するであろうコロナ感染、オフィスの賃貸借契約の更新のタイミング。そういった背景から移転が決定した後、複数の部署から6~7名のプロジェクトチームを発足しました。従業員を中心としたこの移転プロジェクトは「働き方をどう変えるか」というところを十分に検討しました。
出社率のデータをとり、平均値、最小値、最大値を見て、オフィスの座席を決めました。
出社率は約半分と減り、広い会議室が不要になった分、個室は必要になりましたね。
約200坪から約100坪と新しいオフィスの広さは半分ほどなのでがらりと変わりました。
佐藤
新しい働き方を考えるうえで、我々の業務になぞらえて「作業・保管・交流」という3つの機能で新しいオフィスについて考えました。
新しいオフィスに求められるものは何だろう?と。作業は自宅やサテライトオフィスなど、オフィス以外でもできる。オフィスは保管と、従業員の交流の場なのだと。内装会社さんもかなり斬新なアイディアを出してくれました。椎名さんからの紹介です。交通整理をして要所要所に入って、我々の立場に立ってアドバイスしてもらいました。
コロナ禍でのリモートワーク。割と順調に進んだとお聞きしています。
小松
実は東京オリンピックを見越して事前にPCやスマホ、リモートで仕事ができる準備は進めていました。オフィスが銀座という土地柄もありますし、隣が選手村という立地だったので、オリンピック開催時の行動制限、交通制限を見据えて2019年にはそういったインフラが整いつつありました。
最初の緊急事態宣言で在宅勤務を導入しました。事前にインフラが整っていたおかげでコロナをきっかけとして新たな働き方に一気にシフトしました。
テスト期間としてある程度想定していた時期が、いきなり本番となりましたが従業員全員スムーズに移行できました。
オフィスはどのように変わりましたか?
小松
以前はいわゆる普通のオフィス。一人一人の固定席があって、一人に一台電話があって、袖机があって。今はフリーアドレスです。ここが一番大きな変化ですね。
袖机もない。電話も島に2台、計8台のみ。キャビネットの数も減り、「究極の断捨離」をしました。袖机もキャビネットもなければ紙を置いておけない。だからデータで保存するしかない。
不安や不満もありましたが、なければないで従業員もそれぞれに考えて仕事をしてくれていると思います。今ではフリーアドレスならではの意識が根付いていると思います。片付けをしてきれいにして帰るというルールが徹底されています。
オフィスの改革に苦労された点はありますか?どのように解決していったのですか?
小松
歴史が長い分、温め続けていたものがあったのでそこはやはり苦労しましたね。例えば書類です。全部を捨てるというわけにはいかないし、しっかり考えて仕分けをしなくてはなりません。面積が半分なので、これまでの移転のように単にいらないものだけを捨て、残りは持っていくという従来の引越しとは大きく異なりました。
スペースが約半分です。収納スペースが大幅に減り、本当に重要なものだけしか持っていく事ができません。やるぞ!と号令はできても、実際長年しみついた習慣は急には変えられませんよね。最後は英断するしかない!と腹をくくって進めました。
坂井
従業員のコンセンサスを取るのに一番苦労しました。全く働き方が変わるわけですから。全従業員に、どういったオフィスにしたいのかということを理解してもらわないといけない。
意見を聞いてまとめて、、時間をかけて少しずつ理解してもらう。
小松
こっちを立てればこっちが立たずということがよくあります。
全てかなえてあげられるわけではないですが、意見を出してもらい、ちゃんと話を聞くということを意識しました。
単に効率化だけで同じような仕事ができるのか?という不安が従業員からはありました。
意識を変えてもらうために、啓蒙をはかっていったイメージです。
新しいオフィスに来た当初は机の上に書類を残して「このまま帰っていいか?明日の朝使うから。」という人もいましたが、そこは一貫して「だめ!」と。ひとつずつルールを徹底して従業員のマインドを変えることを意識しました。
佐藤
課題はまだあります。解決したとは言えません。
ただ、少しずつ理解が深まり、新しいやり方・働き方を取り入れ、段階的に進んでいると思っています。時間をかけてこれからも続けていかなくてはいけません。
オフィス移転はゴールではなく始まり。未来へ向けて。
ご移転後のご感想は?
佐藤
紙の量が大きく減少しましたね。
移転前は個人の机、収納スペースが有ることにより必要以上の資料を保管することもできました。しかし、キャビネット、袖机がなくなり「保管すること」自体が不可能となり、一人一人が保管資料の選別を行い必要最低限の資料を保管する意識が高まりました。
また保管方法が必然とデータ中心となり、少なからず従業員のデジタルスキルがアップしたと思います。
座席もアドレスフリーにしたことで、今までなかったコミュニケーションのネットワークが広がりました。隣に座る従業員が日々変わる中で、業務について、あるいはプライベートについて会話することでコミュニケーションの質・量ともに増えていると感じています。
まだまだ従業員にとっては慣れない新しいオフィス環境であり、引き続き改善の余地があると感じています。
現在もなお、定期的にオフィス環境を見直すために移転プロジェクトを推進したメンバーを、オフィス改善委員として継続して組織建て、社内意見の収集及び改善策の立案・運用を行っています。
佐藤
我々のいる業界はどちらかというと安定志向が強い方だと思います。伝統を重んじ、大切にしていく。それが良さでもある反面、新しいことに対して躊躇しがちです。
当社はそんな業界の中においては先進的だと言われています。先んじて様々な試みをしてみたり。
今回のオフィス移転は当社だけでなく、紙を扱うというこの業界からみると大きな挑戦でした。
協力会社の同業の広告代理店の方からオフィスを見せてほしい、こんな新しいことを取り入れたのかなど「さすがオリコミさん」と言われたのも嬉しかったですね。
最後に。インタビューを終えて。
新年に伺ったインタビュー。帰り際に「御浄銭」を頂きました。毎年、鎌倉銭洗弁財天でお清めしたご福銭を新年のご挨拶にお渡しする為に続けているそうです。
今回の思い切ったオフィス移転では、フリーアドレスやペーパーレスなど、合理化による大幅な改革を行う一方、会社として大切に守り続けていく伝統も垣間見られました。相反するような両者を融合しながら、時代に合わせ、変化に前向きに向かっていく姿勢をお伺いできました。
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会社概要
- 会社名
- 株式会社オリコミサービス
- 移転先
- 東京都中央区銀座3-9-11 紙パルプ会館7階
- 移転後坪数
- 115坪
- 従業員人数
- 93名(インタビュー時 )
- 企業URL
- https://www.orikomi.co.jp
- 取材
- 2022年1月
取材・文:専属ライター